恋花ーコイバナー

東雲いさき

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第2章「矢渕達也は常に異端児」

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「そ、その顔どうしたの?」
翌日の朝。
昨日と同じく迎えに来た萩元が驚きと不安の表情で俺の顔を覗き込んでくる。
……そりゃあ、びっくりするよな。昨日の今日で急に顔にアザなんて作ってきたんだから。
「ちょっと人助けをな」
「人助けだけで普通そんな酷い顔になる?」
「時と場合によってはなる、気がする」
「なにそれ」
正直な話、自分でもよく分かっていなかった。
どうしてあの時、周りのクラスメイトと同じように見て見ぬふりをしなかったのか。
どうしてあの時、赤の他人だったはずの柊を身を呈してまで助けようとしたのか。
「もしかして女の子?」
「は?」
「その助けた人って」
通学路を歩く中、ジトっとした目でオレを見る萩元。
なんか急に不機嫌?
「確かに女の子だけどそれがどうかしたか?」
「ふーん」
なんだよその反応。
もしかして何か勘ぐってるのか?
別に何か下心があって助けたわけじゃないんだが。
ただ、そう。あの時の柊を見ていたら体が勝手に動いてしまったというか何というか。
昔の自分を重ねてしまった部分が……いや、それはそれでいいとして。
この話題を続けても藪蛇になりかねないだろう。
ここは少しでも話題を逸らしてこの空気を変えなければ。
「そういえば昨日の織笠?って子は友達か?随分と仲良さそうに見えたけど」
「……気になるの?織笠ちゃんのこと。可愛いもんね?」
急いで別の話を振るが、失敗だった。
さらに空気が重くなった気がする。
他の女の話はするなってことか?
難しいな……女子ってやつは……。
「萩元みたいな女の子の方がタイプだけどな、オレは。笑顔とか見てるとドキドキするし」
とはいえ、勘違いされたままなのもアレなので、一応フォローしておく。
「……っ!?」
みるみる顔を赤くして口をパクパクとさせる萩元。
あれ?これってもしかして、オレは今とんでもない爆弾発言をしてしまったんじゃないか?
 しかもかなりクサい台詞で。
「し、知らないっ!」
そう言って萩元はズンズン先へと歩いていってしまう。
オレを置いたまま。
「なんなんだ一体」
訳が分からない状況に困惑しつつ、オレも後を追っていくのだった。
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