不治のシレーヌ

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episode3

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シレーヌは、段々と近づいて来ている
その人物から目を逸らし、飛び越えようとしていた柵の向こうに目を凝らす。


どんなに見つめても視線の先は緑色しかない。


シレーヌは目線をいつの間にやら、大木の根元付近にまで来ていた、誰かへと、戻す。



そして、シレーヌは、目の前の人物がどんな人物なのか探っていたら
根元付近のその誰かもこちらをじっと、見つめていた。


聞きたいことは、沢山ある。


〝ここはどこなのか?〟

〝何でこんな山奥に私はいるのか?〟

〝貴方が、私を連れて来たのか?〟


だけど、この目の前の人物を信用できる要素はほとんどない。


〝tîalp suov li's' ,zednecseD"


「…………………降りてください、か。」


シレーヌは、不慣れな言語で話す目の前の人物にどうするべきか、一瞬、迷ったが、刻々と進んでいく時間を考えてしまえばシレーヌの答えは一つだった。




「誰ですか?」



けれど、何も知らない状態で
いられはしない。


自分の慣れしたしんだ言語で、話してみるけれど、その人物は僅かに表情を曇らせる。


〝suov-setê iuq?"


あなたは誰ですか?

確か、こうだったはずだと
シレーヌは記憶を引っ張りだしながら
問いかける。


〝フォシーユ・ルグロン"


その名前を聞いて、漸く、シレーヌは
大木から降りる事を決めた。


この高さからどう降りようか考えたが、シレーヌを見つめる男の姿に居心地の悪さを感じて、思いっきり足を踏み込み飛び降りた。



そして、驚いた表情を見せる大木の根元にいたアイスグレーの瞳の主と対峙したシレーヌは、その冷ややかな瞳から一瞬で目を逸らした。


「嫌なこと思い出した。」

ガシガシと乱雑に頭の後ろを掻いた後、再び視線を合わせると、何も言いもせず
ただ、じっとこちらを見つめるような視線に違和感を感じた。


「人の顔をじっと見て何です、………」


シレーヌは、目の前の人物を見て言語が通じていないことに面倒さを感じつつも、どうやって伝えればいいのか考えあぐねていると、小さく何かを呟いた。


〝à tnelbmesser"

「え?」

目の前の人が言った言葉を聞き返そうとするが、それは敵わないかもしれない。
さっきのメイドが、恐らくこの目の前の人物の名前を叫びながら、血相を変えてこちらに走ってきていたからだ。






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