3 / 4
episode2
しおりを挟む「そもそも、何でこんな事になってんだっけ。」
昨日の出来事を思い出そうと頭を捻る。
放課後のアルバイトを終えて家に帰る途中で荷物を盛大にぶち撒けたまでは覚えている。
だけど
その後の記憶は思い出せそうもない。
「酔っ払いでもあるまいし、記憶無くなるなんてありないでしょ。でも、まぁ、何にせよさっさっと、この家から出ないとな。」
部屋をキョロキョロと見渡すと
時計は12時を指し示していた。
とっくに授業が始まっている時間である事を認識する。このままじゃ、特待生としての資格がなくなってしまうかもしれないことに、焦りを感じた。
「とゆうか、ここはどこなの?」
この部屋のカーテンを引き、外の景色を見て驚愕する。
「嘘でしょ。こんな場所知らない。」
眼前に広がる外の景色は、
地平線の先まで花や植物が植えられている大きな庭が存在してた。
「私の住んでいた町にこんな庭を持っている人なんていない。」
郊外の町で、ビルが乱立されている
田舎すぎず、都会すぎない町だった。
「今日、もしかして学校に間に合わないんじゃ、」
最悪のシナリオが頭をよぎり
部屋を勢いよく飛び出した。
磨き上げられているフローリング。
高そうな絨毯が敷かれている広すぎる廊下、緻密な技術が駆使されているガラス細工の窓、その廊下には鎧が立ち並んでいた。
外へ繋がる扉を開き、その広大な庭を走り抜ける。
走って、走って_____走り続けた。
そして、たどり着いた先は薄暗い森の手前に細長い鉄柵がある場所だった。
「どうなってるの?もしかして、この先に町があるの?」
この時、わけのわからない状況に置かれた私は冷静な判断ができていなかったのだろう。
辺りを見渡し、鉄柵よりも背の高い大木を見つける。その大木のくぼみに足をかけ、木の幹を掴み何とかよじ登っていく。
木の中腹に差し掛かり、鉄柵を乗り越えられそうな高さまで登ったはいいが、3メートル以上は高さのあることに、シレーヌは足元が竦む。
「ここから飛べば、鉄柵は越えられそうだけど、」
鉄柵から木の幹までの距離は1メートルないくらいであった。
飛び方を間違えれば、
良くて怪我をし、最悪の場合は。
「死ぬかも、ね。」
自分で言葉に出してみたものの
現実味は少ないかと思い直し、シレーヌはすぅっと深呼吸を落とした。
シレーヌにとっては、限りなく低い確率で死ぬかもしれないことよりも、授業に間に合わなくて特待の資格を失うことの方が恐ろしかった。
走り出そうと足を大きく踏み出した瞬間、何か大きな音が響き、足を踏み外してしまう。
落ちるかと思ったが、咄嗟に木の幹に手をついて落ちるのを回避する。
シレーヌは安堵の溜息をつき、何か大きな音のした方向へ視線を滑らせる。
すると、そこには誰かが立っていた。
その人物とは距離もあり、太陽の反射も相まって
その人物がどんな姿をしているのかは分からなかった。
だけど________。
冷ややかな印象を持たせるアイスグレーの色彩を持った、その瞳だけは、はっきりとシレーヌの目に焼きつけられていた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?


愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる