不治のシレーヌ

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眩しい光が注がれてるのに気づいて、シレーヌはベッドから飛び起きた。

「まずい………っ!」

早く着替えて授業に行かなければとベッドから出たが足がもつれてすっ転ぶ。


けれど、そんなのはどうでもいいとクローゼットから適当にワイシャツを取り出そうともつれた足を踏み出した時、シレーヌはそこではたと気づいた。

「ここ、どこ?」

自分が住んでいた場所は、1Kの家。
それに、朝日が差し込むような家なんかには住めやしなかったことにようやく思い当たった。


それなのに、目の前に広がる部屋は白と青を基調にした見るからに高級そうな家具が目が回りそうなほど並んでいた。

「これは、どっかの家にでも転がり込んだ………?」

いや、でもとシレーヌは
服が昨日のものとは違うことに気づいて頭を抱えた。

「何?どうゆうこと?」

軽く混乱状態に陥っていたシレーヌをさらに追い詰めるように部屋の扉がコンコンと叩かれ扉越しに顔が覗く。


黒と白の映画がドラマかでしか見ることのないメイド服姿で入ってきた女の人は、にこりと微笑んだ。

「これは、夢?」

夢でなきゃ説明がつかないこの現象に、シレーヌは呟く。もし、夢だとしたならばすぐにでも眠るべきだと思ったシレーヌは手をその女性に向かって突き出して告げる。

「申し訳ないんですが、」

「Tneilc ,tiaf suov-zeva'uq?」

ふと、そこでメイド姿の女性が首を傾げる。そして、その女性が話す言語が違うことでさらに混乱する。

「Tneilc?」


〝お客様?〟


ふと、シレーヌは自分の中でその言語が変換されていることに気づいて顔をあげる。


「分かる。でも………………。そうだ。思い出した。」


シレーヌが通っていた学校では必ず受けなくてはいけない科目として古語解読の授業があった。


その言語とこの女性が話している言語が同じだった。


授業は受けていた。この言語を読み取るのも書くのも簡単なものならば多少は可能だと思う。

けれど。
だからと言って、話せるのかとなると話は別だ。


「あの………。」

そのメイドに声をかけたら、何を思ったのか、そのメイドは数秒固まると部屋の外に出て行ってしまった。

「誰か説明して。」



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