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chapter9
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【名谷 はるか】
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「気味が悪いで。…………名谷はるか。」
ピロン、ピロンと何度も送られてくるメールの受信が同じ文言が並べているのを見た瑠夏は目を細めた。
「瑠夏。……………………さっきはどうもね。」
「ゆ、…………っと。急に殴りかかってくるのは流石に危ないんとちゃう?」
寮の屋上、扉横の壁に寄りかかっていた瑠夏を視界に入れるや否や、殴りかかってくる雪から飛び退くことによってその拳を交わした瑠夏は胡散げな笑みを雪へと向けた。
「そこまで怒らんでもええやろ。ただ、ちょっと新入生くんで遊んだだけやんか。」
「その遊びが無理やりあの面倒な人間の前に、連れて行くことなわけね。僕、前に言ったはずだけど。瑠夏。その遊びしたら、僕の部屋から叩き出すってさ。」
「今回は、勘弁してくれてもええやろ。白鬼の件を調べろ言うてきた会長と白鬼を別人にすり替える言う雪とでこの方法が最適やったんよ。あの新入生くんを会長の前に連れてって、その時に待ち望んだホンモノが現れる。そうしたなら、どうあってもそっちがホンモノになる。中々、できたシナリオやろ。」
瑠夏の言い分を聞き、ピクリと眉をほんの僅か動かした雪はそれでもその冷え込むような表情を変えようとはしなかった。
「じゃあ、その前のあの会話も必要なお遊びだったわけ?」
「勿論。今、必要じゃなくてもいずれは必要になった会話やと思うけど。他人を遠ざけなくても他人なんかいずれ、雪も金髪ハーフくんも新入生くんには見向きもしなくなるって、教えただけや。他人なんて人なんてそういうモンやってな。」
瑠夏の後ろにあった壁をガンっと蹴り上げた雪は、貼り付けたような笑顔を崩して無表情で瑠夏を見つめた。
「充分だよ。………もう、そういう思いをさせるのは。いい加減、知ってもいいはずなんだよ、優しさは毒なんかじゃないって。」
「そないに、あの新入生くんに気にするわけが何なんか分からへんとは思っとったが。気にするなんてもんじゃないみたいやな。雪を普通じゃなくさせるのは雪の兄関連と〝はるさん〟だけやと思っとったんやけどな」
「瑠夏。余計な詮索をしてこれ以上、僕の可愛い子に傷をつけようとしないで。それ以上踏み込もうとするなら、瑠夏だったとしてもはっ倒すよ。」
「そないに大切なら、雪が大切に思っとることを悟らせへんことやな。優しさを毒だと思ってるのなら尚更やで。」
瑠夏のその言葉に、雪は顔を歪めて独り言のように言った。
「さすが、瑠夏は僕よりあの子のことわかってるみたいだ。」
「雪に、褒められるとは思わんかったわ。さて、冗談はさておき吉報とも悲報とも言えへん情報や。」
唐突に瑠夏によって、手渡された数枚の紙を受け取ると雪は怪訝そうな顔をしてその紙に目を通した。
「…………名谷 はるか。って、誰?」
「その名谷はるかは恐らく今日、明日のうちに転入でも編入でもなるんちゃうか。」
「何が言いたいの。」
「その名谷 はるか が、幽霊騒ぎの犯人で、今日寮のホールに現れた白鬼やで。」
「あの白鬼って、瑠夏が変装させてた替え玉じゃないの?元々、あの子と替え玉を同じ場所に存在させればいいって言ってたのは瑠夏でしょ。」
「それだと若干、リスキーやからな。アレは、用意した替え玉やない。雪に言われてここ暫くの間、新入生くんのことを見張ってた時に現れた噂の幽霊や。会長は新入生くんの顔自体を覚えているわけではないことはこの前の食堂の件で分かっとったし。そないに白鬼になりたいなら、なって貰おう思ってお膳立てただけやからな。」
「その幽霊を選んだ理由は?それにその幽霊の名前を何で知ってるわけ。」
「……………似てたからやけど。雪のお気に入りに」
雪の瑠夏が春の顔を知ってるわけないというような雪の表情の変化を感じ取った、瑠夏はほんの僅かに口角を上げた。
「似てたなんて、根拠でもあるの?」
「漫画研究会の佐伯良が、新歓の写真撮ってたんよ。まぁ、操作ミスか何かでデータも無くなって、その3枚の写真も無くしたらしいんやけど。3枚のうち2枚の居所は知っとる。………一枚は、九重ひらり。空から写真ばらまいとったしな、行方不明のもう一枚は知らん。………そんでもう一枚が」
瑠夏によって、見せられた写真に分かりやすく動揺した雪はその写真を瑠夏の手から奪い取る。
「新入生くんの顔なんか知らんが、その写真に映っとる白鬼と名谷はるかが似とったからや。………あぁ、そうや名前な。名前は、自分で名乗ったんよ。自分が会長の探してる白鬼の名谷 はるかやってな。………ただな」
瑠夏は、ついこの前自分の目の前に現れた名谷の事を思い出しながら呟いた。
「いくら調べようとしてもな、何の情報もないんや。」
「何の情報もって、そりゃあ生徒が知れる情報なんてたかが知れてるだろうし、詳細な個人情報を生徒名簿には載せないはず。」
「そう思って、適当に理由をつけて職員室のパソコンで調べたんやけど何にもなかったんや。そんな生徒の名前なんか出てこんかった」
「嘘をついてたんじゃないの。」
「やけど、わざわざ自分が白鬼だなんて名乗ってくるようなやつが嘘をつく理由なんてあらへんやろ。それに、その紙捲ってみたら分かると思うで。最近手に入れた白い幽霊を撮った写真なんやけど」
雪が瑠夏から受け取った紙をまくり、2枚目の紙に貼り付けられた写真を目にして言葉を失った。名谷 はるかの容姿が春に酷似していたことと、それに、もう一つそれ以上に雪に言葉を失わせた要因があった。
「〝はるさん〟?」
「雪もそう思うんなら、いや、誰が見てもそうか。あの人を知っているのなら、明らかにそうやろ。…………赤いジャージに顔に沢山貼ったイルカの絆創膏そんな格好をする人どうみたって、5年前に死んだ」
「今……………………あの子どこにいるの!?」
「分からん。でも、恐らく部屋にでも戻った頃やと思うけどな。」
血相を変えて出て行った雪を引き止めることもしなかった瑠夏は、雪が落としていった書類を拾い上げて未だに降り続ける雨を暫く見続けてから、雨に掻き消されてしまうような感情の波のない声で呟いた。
「天宮………はる。」
雪と話している間も、震えていた端末を取り出して未読になったままのメールボックスを開いた瑠夏はerror以外の文字を見て目を細めた。
【correct】
「間違いなく、今この瞬間に、数分前まで名簿になかった名谷 はるかが存在したって言うんか。数分前まで存在しなかったはずやのに。」
_________prprprrr
瑠夏は、非通知番号からかけられてきた番号を取ると
左耳に押し当てる。
『………………広報。依頼は完了した。_______名谷はるかは、この学園にいる。』
「数分前まで、おらんかったようやけどな。」
『どこかのパソコンからのアクセス…………あった。停電も………………………………誰かのせいの可能性あり。』
「なるほど。…………了解や。あぁ、そうや、烏くんに雑談程度に聞きたいことがあったんやけど。佐藤蒼に兄弟もしくは双子なんておらへんよな。___________名谷はるかと佐藤蒼がその可能性はどうや?」
瑠夏は、烏と話をしながら右耳につけられている小型の機器の音声が途切れ始めたのを気にしていたら、ピロンピロンと反応したその小型の機器が
【please charge a battery】
と、烏との通話中に無機質な音声を流して右耳から流れてくる情報が途絶え始めた。
『…………依頼以外の受け答えは_____しない。もう切る』
「ちょいと待ちや、そんなら〝はるさん〟と佐藤蒼の関連はあるんか。」
『広報。……………………もう切る。_______あぁ、そうだ。佐藤蒼に関する受け答えも依頼も一切受けない。詮索はするな。』
ブチリと電話を切られて、無機質な通話音が流れるだけになった端末の電源を切る。
「まだ、聞きたいことあったのに残念やな。………………………………雪をあんな風にするのは兄関連と〝はるさん〟だけなはずや。やけど、この学園に兄も〝はるさん〟ももういない。そのはずやのに、雪のあの行動…………どちらかにあのお気に入りは関連しているのか。それとも、どちらにも関連しているんやろか。」
瑠夏は完全に充電切れした小型の機器を耳から外し、雨に濡れた眼鏡のレンズを拭きながら、鼻から抜けるような笑みをこぼした。
「壊れたまま生きている雪のお気に入り。………………どないしようか。_____________どうりで似てるはずやわ。」
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