花は何時でも憂鬱で

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chapter9

2番目

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「みーちゃん?どうかしたの。」

「何で?」

「何でって、ずっと笑ってるから。」


白が不安げな顔で俺を覗き込んでくるので、わしゃわしゃと髪を撫で回す。

「ん。大丈夫。さてと、もう遅いし牛乳でも買いにいくか」

「みーちゃん。牛乳飲むっけ?」

「安眠にいいかと思って。後、クラシックでいいのって何かわかるか。」

俺のことは嫌いなのだと思っていた。
そうじゃなくても、好かれてはいない確信はあった。


近づいて手を伸ばせば、払い退けられているどころかこちらに見向きもせずに背を向けて行ってしまうそんな感覚だったから。


でも、それは多分。俺以外も同じなのだと思う。
学園の中で、見かける時はいつも一人だったから。


いや、違うか。一人でいるのか、金髪の_______荒谷新_______と一緒にいることのどちらかだ。それでも、俺には一人に見えてしまっていた。


だから_______あの瞬間は狼狽てしまった。
確かに、和らいだ気がしたから。



旧校舎のパラソルの下で無防備に眠っている時のように
あの雰囲気が取り払われた気がする。



「そういえば、上着のこと忘れてたな」

「上着?失くしたんじゃなかったの?」

「だから、失くしたんじゃなくて、忘れさられたんだよ」

「みーちゃん。失くしたなら失くしたって言ったほうがいいんだよ。冬になったら、寒くて死んじゃうよ?」

「だから、思い出してもらうんだよ」

白の意味がわからないというような表情を受け流して
旧校舎の方へと視線を向ける。それに釣られて白も旧校舎の方へを見る。

「そういえば、今年も咲いてるらしいね。あのお墓の周りに」

「あぁ、みたいだな。あの黒い華な」

「ねぇ、みーちゃん。まだ、待ってるの?」

「何を。」

「資料室で会った子のこと。」

「………待ってるよ」

別に、特別な意味があるわけじゃない。
たったの2回、会っただけなのに。

『………春』

告げられた名前が本当の名前だなんて思っていない。
現に、学園の生徒に春なんて名前の生徒はいなかった。


それでも、不安定に揺れ告げられた春という響きが
何故なのか切なく胸を締めつけ
耳にこびりついて離れなくなってしまった。


だから
どうしても繋がりが欲しくなった。

「そっか。来るといいね。」

「あぁ。」

本当の名前も顔も分からなくて構わない。
あの名前を呼べたなら。



_______春、と。


そう呼べたなら、それだけでいい気がする。
けれど、暫くは来れないはずだ。


今年もあの華が咲くなら。
それでも______________会いたくてしょうがない。


「みーちゃん。その子も_______『大丈夫じゃない』………から?」

「ん?なんて?」

「んーん。何でもない。早く帰ろう。お腹減った!」




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