花は何時でも憂鬱で

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chapter8

破壊3

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『It's a strange freak to change the world』



俺は、宵(よい)の華奢な背中を見ながら
ふと、その言葉が脳裏をよぎる。


「とんでもないのが2人目だ。いや、3人目かな。」



門川先輩の嬉々とした呟きを聞きながら
宵(よい)と宵(よい)の目の前にいるあの双子を見ていたが、ふと視線を外した先に中庭の隅に立っている異質な3人組を見つけた。



______副風紀委員長と会計とそれにあのバケツを被った日に2階席にいた蛇のような人。



あの3人に交友があったとしても別におかしい所はない。それでもその3人_____副風紀委員長、会計、恐らく生徒会関係者の蛇のような人_____は異質だと俺でさえも分かった。


新入生歓迎会の賞品を得られなかった白組で内密に開いた祭りのあの日、とてもじゃないが親しいとは思えなかった副風紀委員長と会計はやはり何か揉めているのかその空気は遠目から見ても冷え切って見えるし、その間にいるあの人はそれを気にした様子もない。


「「なぁに、転入生ちゃん?僕たちに用事?」」


それでも
その3人が一緒にいる原因がこの双子の件だと分かった。





【時を遡ること15分前______】


居心地の悪さを感じながらも宵(よい)と朱門と門川先輩と門川先輩の弁当を持ってきた速水先輩と昼食を取ることになっていた。



門川先輩が穴があきそうなほど宵(よい)を見つめているのを横目に見ていると、あからさまに不機嫌な朱門と目があった。



「あおいくん。それだけでいいの?」

「はい。実はこの後用事があるので」

「え?!………そうだったの?呼び止めちゃってごめんね。大丈夫?」

「はい。なので申し訳ないのですが、食べ終わったらすぐに行きますね」

「そっか、残念だけど仕方ないよね。今度、また、ゆっくり食べようね」

朱門の視線が更に強くなるのを感じながら
俺は昼用に買ったパンを開いた。

「宵(よい)!このチョコレート美味しい!!」

間食用らしいチョコレートを口に入れながら
宵(よい)へと話しかける朱門にまるで牽制でもするかのようにして睨まれる。


俺はさっさと食べ終えてこの場を去ろうと思うのだが、門川先輩は昼休み中に食べ終わる気があるのかというほど手に持った弁当を一口一口を噛みしめるように食べていた。


「智、早く食べないと置いていくからな」

「えー。食べ物は、ゆっくり食べる派なのにー。いいもんね、ゆっくり食べてさっとんと帰るもんね」

「はい?」

門川先輩が俺の腕を組んで密着しながら言った。
恐らく、俺に言ったであろう、変な呼び名を呼びながら。

「だって女神様が、あおいくんって呼んでたから。俺も何かあだ名で呼んでみようと思って。佐藤からとってさっとん?可愛くないー?」

「可愛くないです。」

「えぇー。そっかなぁ。あ!そうだ、俺のこともあだ名で呼んじゃう?門川、門川…………かーちゃんだとちょっとアレだし。門川だから、アルファベットにしたらKが、2つで、K2とかどうどう?」

「年下を困らせるようなことをするな」

門川先輩が速水先輩に軽く窘められるが
それを気にした様子もなく、俺に話しかけてくる。

「いいじゃん、いいじゃん。頭固いんだからぁー。ねぇ、さっとん。そういえば、もうすぐ定期テストだけどさ。理数系どの先生?数学、夕暮先生だったりする。あの先生、テストの鬼だから______ん?」


門川先輩が途中で会話を切って、辺りを見回し始めたので俺もその原因が何なのか知ろうと門川先輩と同じ方向を向く。



そして、全員が見つめているのが
あの双子だということに気づいた。



「わぁ、綺麗な子達。」

宵(よい)の言葉ですらよく響くほどのその静けさを気にした様子もない双子は何かをひらひらと手に持ったまま誰かを探した様子で見渡していた。

「「あぁ。見つけた」」

彼らは誰かを見つけて、にこりと微笑むと
その人物に寄って行った。


「「君が、手紙くれた子かなぁ?」」



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