花は何時でも憂鬱で

青白

文字の大きさ
上 下
143 / 178
chapter8

傾城4

しおりを挟む




「お楽しみのところ悪かったな」

「何がですか」

「いや、ただ。………随分、親密そうだと思っただけさ。」

風紀委員長を運び終えて保健室から出ようとすれば
黒河先生に呼び止められた。


あの体勢でいたのだから、何か言われない方が可笑しいとは思っていたけれど、どんな言い訳をしても流されそうな気がしてならず


「絆創膏、剥がれかけてましたよ」


あえて、その話題に触れないでいると
絆創膏を差し出される。

「ん。」


黒河先生から絆創膏を受け取ると、死んだように眠ってる風紀委員長のベッドの横にあった椅子へと座る。


口元の剥がれかけの絆創膏を取って新しい絆創膏をそっと貼ろうとすると、風紀委員長の顔が歪んだ。



「喧嘩だとさ。誰とは言ってなかったが。」

「風紀委員長様でも、喧嘩なんてするんですね。」

今度は、極力、肌に触れないように注意しながらゆっくりと絆創膏を貼る。

「白鬼と喧嘩でもしたんじゃないのか」

「会長様の次は、風紀委員長様の相手をするんですか。忙しい方ですね。」

「白鬼は白髪に蒼い目の鬼らしい。あぁ、今は、黒髪か」

ベッドの淵に腰掛けた黒河先生がさも面白そうに顎に手を当てながら言う。

「へぇ、そうだったんですか。」

「いつまで、シラを切るつもりなんだ?」

「確かに、あの最初の白鬼が誰なのかは知っています。だけど、二度目のあれが誰なのかは見当もつきませんよ」

「まるで、最初の鬼(アレ)もお前じゃないような口ぶりだな」

「違いますよ。このご時世です。目も髪の色も簡単に変えられる。あれが、僕である証拠なんて最初からないですよね。」

「よくもまぁ、息をするように嘘をつけるな。………まぁいいさ。佐藤、俺は____________保険医だが、先生というものに変わりはない。だから、簡単に嘘を真実にもできる。………九重ひらり、唯賀の親衛隊隊長は諦めるつもりなんてない。それを踏まえて何かあるか?」

「それは、脅しと捉えられるんですが」

「これは提案だ。園芸部が何をしようとしてるのか。校長に呼び出された理由は何なのか。楪は何を企んでお前を送ったのか。あの鬼は、お前なのか違うのか______色々と聞きたいことは山ほどあるが。だが、全部聞かない代わりにお前のことを唯賀達にもらさない為にやってほしい事がある。」

「何ですか。」

「1番になれ、林間学校が終わるまでに________それが出来たならあのU.TFにも一泡吹かせてやれるだろうし」

「………U.TF?彼らが林間学校に関係あるんですか。」

思ってもみなかった情報に思わず聞き返す。

「詳しくは言えないが、そうだとだけ言っておく」

______U.TFが関係がある?林間学校に。校長でさえ、会ったことがないはずなのに。


「後、もう一つは。………そうだな____________。」

「2つもあるなんて聞いていません」

「聞かなかったお前が悪い。………俺が悪趣味な大人だってことは知っていた筈だが?_____とゆうか、1番になることへの異論はないのか。随分、自信があるんだな」

「当然、1番になれるとは思えませんが、勿論、やれることはやりますよ。それに、異論は最初から認めてはくれなそうだと思っただけなんですが。」

「ご名答………んじゃ、もう一つの発表__________もう一つは。」


黒河先生は風紀委員長に目を留めながら言った。


「この風紀委員長の抱き枕」

「………抱き、まくらっ?」

思ってもみなかった内容に思わず、引き攣ったような声が出た。

「そんなに嫌がるようなことか?………そういや、なんかの人気投票で唯賀と同率一位だったくらいだしな。そういう奴と関わり合いたくなさそうだしな。お前。______ま、まだお前の嫌いな会長じゃないだけいいだろう?」


風紀委員長か会長か比べるとなったら
比べるまでもなくあの会長と一緒にいたくはないが。
結局、どちらも受ける被害を鑑みた場合、変わらない気がする。


「嫌いではないですよ。ただ、お近づきにはなりたくないだけです。」

「それを嫌いって言うんだろ。にしても、お前も変わってるな、他の奴等は唯賀に近づきたくても近づけないっていうのに」

「近づいてバケツの水を被せられるような酷い目にあいたくはないだけです。それは、普通のことだと思いますが」

「あぁ、そりゃそうだわな。俺が同じ目にあってたら確実にぶん殴って………じゃなくて、それよりももっと、酷い目に合わせるけどな。穏便に」

わざとらしく言い直す黒河先生が座っていたベッドから立ち上がる。

「抱き枕ってのは冗談だが______。せめて夏が終わるまでこの風紀委員長の監視を頼む。______異論は認めない。それとも唯賀の補佐にでもつくか。最近、ちょうど人手が足りなかったんだが」

「………ちゃんと約束は守ってくださいよ」

「あぁ。______俺は約束は守るタイプなんだよ。あ、それと。E組で健康調査票出てないのお前だけだからさっさと出せよ。」

「わかりました。」


健康調査票?


荷解きした荷物の中にそんなものはなかった気がして
一度、部屋に帰って荷物を整理する必要があるかもしれない。

そんなことを考えていたら
もう授業が始まってからもう少しで半刻になってしまっていた。


桜崎先生に釘をさされたのもあるのと早く戻るに限ると思っていたら黒河先生が先生らしからぬ言動で手に持つ端末が壊れそうなほど握りしめていた。


「あの問題児ども………。殺す」

はっと我に返ったような表情をしてから
胡散臭い笑みを俺にむかって浮かべた。

「悪いが、ここで留守番を頼む。恋には俺から言っておく。あ、これお駄賃な」


黒河先生は、何かをこちらに放り投げると
さっさと保健室を出ていってしまった。



チョコ………?




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

忘れ物

うりぼう
BL
記憶喪失もの 事故で記憶を失った真樹。 恋人である律は一番傍にいながらも自分が恋人だと言い出せない。 そんな中、真樹が昔から好きだった女性と付き合い始め…… というお話です。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

表情筋が死んでいる

白鳩 唯斗
BL
無表情な主人公

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

処理中です...