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chapter7
影4
しおりを挟む放課後、SHRが終わってすぐに
教室を出て昇降口へ足を運んでロッカーから靴を取り出している最中、妙に鋭い視線を感じて振り返るが
ごった返す生徒達の波に覆い隠されて、それが何なのかを判断することはできなかった。
その妙な視線から意識を逸らして
取り出した靴に履き替えていると
バイブ音が鳴り続けている携帯型生徒手帳を制服の内ポケットから取り出すと3年の学年主任からの呼び出しがかかった。
その差出人の名前を確認すると
もう、月末だからと納得して外履きから上履きに履き替えて職員室横にある生徒指導室へと向かった。
「来たか、取り敢えず座りなさい」
生徒指導室の扉を開けると
簡易な机を挟んで奥の椅子に座っている学年主任に
うながされるま席につく。
「緊張しなくていい。簡単な質問をいくつかするからそれに答えてくれ」
「分かりました」
「最近、どうだ。もう少しで入学して1ヶ月になるだろ」
「普通です。特に変わりありません」
「……オーケー。普通、ね」
学年主任が簡単な質問をして
手に持つファイルに何かを書き込んでいく。
「クラスでの交友関係は?」
「………薄く浅く、特に仲のいいクラスメイトもいません」
「そうか。じゃあ、最近、好きなものは」
次々とされる質問に、淡々と答えていくと
学年主任は、ファイルをパタリと閉じてペンを置いた。
「……今日は、これで終わりだ。次は、来月末な」
「……失礼します」
会釈をしてから、生徒指導室を出ると
また、鋭く研ぎ澄まされるような視線を感じて
振り返るが誰もいなかった。
「………誰なんだ」
ほとんど人がいない校舎には、その声はより一層よく響いた。
「てゆうか、会長どこ行ったの?今日、いなかったけどさぁー。もしかして、サボリィ?俺もサボりたぃ~」
「駿は君と違って、サボるようなことはしないでしょう。美波が来る前にとっくに終わらせてから行きましたよ」
「えぇ?マジでかぁー。……仕事の鬼だねぇ、ヤダヤダ」
誰かの話し声と足音が段々と近づいてきたのに気づくと
急いで階段をかけ降りて昇降口に向かって外履きに履き替えると急ぎ足で第3美術室へと向かった。
旧校舎の入り口にたどり着くと
烏が周りの木々や校舎にとまっていて不気味な様相をなしていた。
上げていた視線を前に戻すと、思いもよらない人の登場に一瞬、足を止めると向こうも足を止めた。
「………楪。」
僅かばかりの陰鬱を滲ませ呟く会長と視線が交錯する。
けれど、その刹那、物凄く強い風が吹き込んだ。
そして、腕で顔を覆いながら、どこからか聞こえる烏の群れの咆哮がけたたましく耳を刺激し続けた。
「………化け物………怪物……」
その合間に聞こえる誰かの声は
より鮮明に音を奏でた。
「………俺の邪魔者は………」
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