花は何時でも憂鬱で

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chapter6

血痕

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九重ひらりside




妙な胸騒ぎがした_____。



だって、今の会長様が何故だか“あの時”と似ている気がしたから。



『オタクの父親、女遊びが激しくて碌に家に帰ってこないんだってなァ?あぁ、違ったか男遊びだったか?それも、春田叶多って言ったっけかなぁ……?なぁ、唯賀。』


八神匡は、中学の時から会長様を敵視していた。
それに会長様が応じることはなかった。
けれど、八神の発したその言葉は本人が思っている以上に会長様を煽った。



それでも、その時は
静かな怒りを黒い瞳に閉じ込めていた様な気がする。



けれど、今回は
あの時より苛烈な感情が見えたのは何故なのだろうか。


会長様を追いかけて生徒会室まで来ると
取っ手をぎゅうっと握りこんだが
どうしても開けられなかった。



その扉を開けたのは、雨が激しく降り始めた頃になってからだった。






取っ手を引いて扉を開けると、生徒会室は惨憺たる状況だった。


机や椅子は倒されて机の上にあったと思われる
ペンや消しゴムなどの筆記用具、ノートパソコン
食器棚から落ちて割れたティーカップが
あちこちに散乱していた。



「会長……様」


この時期は、寒いからと閉じられている筈の窓から風が吹いているのに気がついて視線をあげると、会長様の背中越しにある窓が割れているのを目にする。


そして、会長様の手から血が滴り落ちているのも目にして
直ぐに駆け寄った。

「直ぐに手当てします……!」

「いい。」

「ですが……!!」

「九重、俺がいいと言っている。」

「はい、」


会長様が窓枠に手をかけて呟くように告げた。


「あの白髪の生徒は、楪かもしれない。けど、そうじゃないのかもしれない。でも、そんな事俺にとってはもうどうでもいいことだ」

「会長様。僕がもう一度だけ、」

「どうでもいいと、言っただろ。問題なのは、アイツがあの男と似ている事だ。もしも楪が白髪ならあんなに俺が意固地になって囚われた理由も分かった。あの男に似ていたからだ、俺の最も憎い男に___。」



指先からポタリと落ちる赤い血を見ながら唇を噛み締めた。
僕のしたことは、意味なんかなかった。
思い出したくもないことを思い出させた。


馬鹿だ。


会長様の為になることをしたいのに
僕は、何一つ返せてない。


好きです。大好きです。
僕は、貴方のためになることをしたいのに。


深すぎて出口なんかないんじゃないかと思えるほどの
暗闇を救ってくれたのに僕は何もできないんだ。


「また、泣くのか。ひらり」

「………泣いてません」

いつのまにか俯いていた顔を上げて
会長様の顔を見据える。

「絶対に泣かない。そして、僕は会長様の為になる事だったら何でもします。ご指名して下さった時にそう言いました。」


そうだ。あの時誓ったんだ。
絶対に、もう泣かないと。



そして、僕の全てはこの人の為にある。
だから、貴方を害するモノは僕の敵でもあります。



「僕は……親衛隊隊長ですから」


だから、佐藤蒼___。
君を徹底的に壊すのは僕だ。



どんな手を使ってでも…………。








 
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