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chapter6
囚われ2
しおりを挟む「あ、あがった?」
「………有難うございました。」
バスタオルを頭にかけたままシャワーからあがると
湯気が上っているマグカップが2つと可愛らしいクッキーがテーブルに置かれていた。
さっさとシャワーを借りたら帰ろうと思っていたのに
この状況じゃあ仕方ないとテーブルの横にあるソファに座る。
「牛乳しかなくて、あっためただけなんだけど。飲める?」
「……頂きます。」
目の前にあるマグカップを口につけて
フーフーと軽く息を吹き込む。
コクリと喉を通るミルクは、まだ少し熱かったけどほんのり甘かった。
「もしかして、猫舌だった?」
困ったように眉をへの字に曲げながら微笑む姿を見て
この人がお人好しだと再認識した。
「少しだけ。」
じんわりと染み渡るマグカップの熱さを肌で感じながら
チラリと風紀委員長を見る。
(まぁ、この人。お人好しとはいえ寝ぼけたらキス魔になる人ではあるけど。)
「………っ、」
頰を殴られたせいで少し口の中が切れていたのか
マグカップを置いて手の甲を唇にあてる。
「あ、そうか。手当てしないと。見せてみな」
焦ったように立ち上がって救急箱を取り出して
隣に座った風紀委員長に無意識に後ずさる。
「いや。別に手当てされるほどのことじゃ」
「口、開けた開けた。ホラ」
強引とはいえないが
断りきれないやり方で口を開けるよう促すのに
徐に口を開ける。
ムニッと頰を掴まれて口を開かされて覗き込まれるのに
居心地の悪さを感じて、目を伏せる。
「唯賀は____。囚われているだけだ。」
唐突に発せられた会長の名前に視線をあげて
風紀委員長の顔を見る。
「あの人と、君を重ねたんだろうな。きっと___。何でかは俺には分からないけど、それ以外に考えられないからな。まぁ、だからって他人にバケツの水かけていい理由にはならないけどな。」
風紀委員長は、頰から手を離すとピンセットで消毒液を染み込ませた綿を摘むとしたり顔で笑いながら
「はい。しみますよー。」
と、頰を殴られた時に口の端が切れた
そこをトントンと叩かれる。
「……っ!」
「痛い?」
「……べつに、痛く」
「痛くされたい?」
「少しは………痛いです」
「素直でよろしい。」
ポンポンと子供ではあやすように頭をたたかれる。
昨夜の件にしろ、この行動にしろ
この人は、とんでもない勘違いをされそうな人だと
頭の片隅で考えていたら、風紀委員長が
視線を一点に注いでいたので俺もその視線を追うと
色素の薄い髪色の誰かが立っていた。
「雪。」
「お取り込み中ごめんね。」
クスクスと柔らかに笑うその人からは
とても甘い匂いがした。
何処かで、かいだことがあるような匂いがした気がした。
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