花は何時でも憂鬱で

青白

文字の大きさ
上 下
102 / 178
chapter6

白鬼1

しおりを挟む





河井颯斗の方(かた)がついてすぐに
手錠もそのままで
あの黒マスクの生徒に無理矢理に連れ出された。


されるがままついて行くと
学園の食堂の扉の前へとたどり着いた。
その扉が開け放たれると




「………」


俺へと巡らされる視線視線___視線。


悪意、敵意、嘲笑。
どれもこれも良いとは言いがたい視線に目を細める。




会長のモチーフカラーは黒。
親衛隊は、そのカラーのブレスレットを必ず持っている。
そして、ここにいる大半が会長のモチーフカラーの証の黒いブレスレットを身につけていた。


一瞬だけ視線を伏せてから上へと向けると食堂の壁につけられている大きな時計は午後15時を指していた。


九重ひらりが言っていた
紅組が帰ってくるまで、後2時間はあるはずだった。
けれど、この状況はいったい____。


「綾人」

九重ひらりのよく通る声が静かな食堂に響いた。


後ろにいた黒マスクの生徒に食堂の中央部へと強引に歩かされ、俺の襟首を掴んだ黒マスクの生徒によって床へと引き倒す。


静寂だけのその空間にカツンと
誰かな足音が響いた。


その人物の足音に耳を澄ませて
その息遣い一つに、その場にいた全員が息を潜めて見ていた。



思えば最初からおかしかった
静かすぎる親衛隊。
何故、あそこに九重ひらりが来なかったのか。


視線をゆっくりとあげると
目の前には、生徒会会長_____唯賀駿_____その人の姿があった。


「お前がそうか____。あの時の生徒は」

感情の波がなく、色もない
無色透明な声がよく響いた。


けれど、その瞳は酷く冷徹な焔の影が覗いていた。


暫く、ただじっとその人は俺を見つめ続けると
視線だけを九重ひらりに向ける。

「九重。証拠は」

「佐藤蒼、高校からの編入生です。あの、大々的に捜索した日に何故かいなくなっていました。演劇部から白い鬘が消えていますので、持っていれば確実でしょう。それに、最大の証拠は_____。あの生徒が持っていたのと同じ青い腕輪をそこの生徒がつけている事です。けれど、本人は否定してます」

九重が襟首を掴んでいる黒マスクの生徒に目配せをすると腕を捻り上げられて腕輪を掲げられる。


「腕輪?」

会長が俺へと再び向き直ると
手錠で繋がれている手首を掴んでジャージの袖口を捲る。


「何だこの腕輪は。手作り、か?」

腕輪に指を引っ掛け
鼻から抜けるように笑い
馬鹿にしたように告げられる言葉に
ぎゅっと口を引き結ぶ。


「………さ、わるな」

これは、他の誰かが触っていいものなんかじゃないんだよ。馬鹿にされる覚えもない。


「………起こせ」

会長が俺を引き倒している生徒に告げると
九重ひらりが首を縦に振ったと同時に
引っ張り起こされる。

「何だって?」

「……触るな」

はっきりと告げる言葉に反応をする事をしなかった会長は俺の顔を手で掴みながら告げた。

「随分、ハデにやられたもんだな。まぁ、当然か。俺の親衛隊は少々手荒なんでな。」

そして、顔を掴んでいた手は、首の後ろへと回って髪が抜けそうなほど強く掴まれる。

「…………ッ」

「だが____。よくもまぁ、この状況でそんな態度がとれるな。」

髪を掴んでいる手とは反対の手で
くいっとその腕輪を引っ張っられる。

「今、ここであの時の生徒だって認めろ_____。認めないなら、コレを壊してやろうか。」

ぴくりと腕が強張ったのに感づいてか
会長は薄く笑った。


「大切なモノなんだろ。」




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

BlueRose

雨衣
BL
学園の人気者が集まる生徒会 しかし、その会計である直紘は前髪が長くメガネをかけており、あまり目立つとは言えない容姿をしていた。 その直紘には色々なウワサがあり…? アンチ王道気味です。 加筆&修正しました。 話思いついたら追加します。

病んでる僕は、

蒼紫
BL
『特に理由もなく、 この世界が嫌になった。 愛されたい でも、縛られたくない 寂しいのも めんどくさいのも 全部嫌なんだ。』 特に取り柄もなく、短気で、我儘で、それでいて臆病で繊細。 そんな少年が王道学園に転校してきた5月7日。 彼が転校してきて何もかもが、少しずつ変わっていく。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 最初のみ三人称 その後は基本一人称です。 お知らせをお読みください。 エブリスタでも投稿してましたがこちらをメインで活動しようと思います。 (エブリスタには改訂前のものしか載せてません)

迷いと絆~友情か恋愛か、親友との揺れる恋物語~

月音真琴
BL
成績優秀だけど友だちがいない皇祐(こうすけ)は、たった一人の親友、敦貴(あつき)に想いを寄せていた。 気持ちは伝えず友だちのままでいるつもりだったが、高校卒業間近、同級生に敦貴のことが好きだとバレてしまう。敦貴に気持ちが知られることを恐れた皇祐は彼から離れることを決める。 物事を深く考えない敦貴だが、海外に留学した皇祐と音信不通になってしまい、落ち込んでいた。 それから5年後、親友の皇祐と再会することができた。喜びもつかの間、優秀だった彼は男に身体を売る仕事、風俗店で働いていることを知る。敦貴は物の弾みで親友の皇祐を買うことになって…。【大人になった元同級生二人の恋物語】 『はじめてできた友だちは、好きな人でした(完結)』 https://www.alphapolis.co.jp/novel/416124410/975800487 に出てくる小此木敦貴(おこのぎあつき)と仲谷皇祐(なかたにこうすけ)が大人になってからのお話。単体でも読めます。 過去作品を改題、改稿してます。webでは初公開の新作です。 少しずつ更新していきます。 ★Rシーンには※がつきます。 ★受け(皇祐)が不特定多数(男性客)との性描写シーン(※ と☆がつきます)がありますので苦手な方はご注意ください。 ◆「第12回BL小説大賞」に参加しています。 応援していただけたら嬉しいです。励みになります。よろしくお願いします。

幸せのカタチ

杏西モジコ
BL
幼馴染の須藤祥太に想いを寄せていた唐木幸介。ある日、祥太に呼び出されると結婚の報告をされ、その長年の想いは告げる前に玉砕する。ショックのあまり、その足でやけ酒に溺れた幸介が翌朝目覚めると、そこは見知らぬ青年、福島律也の自宅だった……。 拗れた片想いになかなか決着をつけられないサラリーマンが、新しい幸せに向かうお話。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

彼の理想に

いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。 人は違ってもそれだけは変わらなかった。 だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。 優しくする努力をした。 本当はそんな人間なんかじゃないのに。 俺はあの人の恋人になりたい。 だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。 心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

処理中です...