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chapter6
白鬼1
しおりを挟む河井颯斗の方(かた)がついてすぐに
手錠もそのままで
あの黒マスクの生徒に無理矢理に連れ出された。
されるがままついて行くと
学園の食堂の扉の前へとたどり着いた。
その扉が開け放たれると
「………」
俺へと巡らされる視線視線___視線。
悪意、敵意、嘲笑。
どれもこれも良いとは言いがたい視線に目を細める。
会長のモチーフカラーは黒。
親衛隊は、そのカラーのブレスレットを必ず持っている。
そして、ここにいる大半が会長のモチーフカラーの証の黒いブレスレットを身につけていた。
一瞬だけ視線を伏せてから上へと向けると食堂の壁につけられている大きな時計は午後15時を指していた。
九重ひらりが言っていた
紅組が帰ってくるまで、後2時間はあるはずだった。
けれど、この状況はいったい____。
「綾人」
九重ひらりのよく通る声が静かな食堂に響いた。
後ろにいた黒マスクの生徒に食堂の中央部へと強引に歩かされ、俺の襟首を掴んだ黒マスクの生徒によって床へと引き倒す。
静寂だけのその空間にカツンと
誰かな足音が響いた。
その人物の足音に耳を澄ませて
その息遣い一つに、その場にいた全員が息を潜めて見ていた。
思えば最初からおかしかった
静かすぎる親衛隊。
何故、あそこに九重ひらりが来なかったのか。
視線をゆっくりとあげると
目の前には、生徒会会長_____唯賀駿_____その人の姿があった。
「お前がそうか____。あの時の生徒は」
感情の波がなく、色もない
無色透明な声がよく響いた。
けれど、その瞳は酷く冷徹な焔の影が覗いていた。
暫く、ただじっとその人は俺を見つめ続けると
視線だけを九重ひらりに向ける。
「九重。証拠は」
「佐藤蒼、高校からの編入生です。あの、大々的に捜索した日に何故かいなくなっていました。演劇部から白い鬘が消えていますので、持っていれば確実でしょう。それに、最大の証拠は_____。あの生徒が持っていたのと同じ青い腕輪をそこの生徒がつけている事です。けれど、本人は否定してます」
九重が襟首を掴んでいる黒マスクの生徒に目配せをすると腕を捻り上げられて腕輪を掲げられる。
「腕輪?」
会長が俺へと再び向き直ると
手錠で繋がれている手首を掴んでジャージの袖口を捲る。
「何だこの腕輪は。手作り、か?」
腕輪に指を引っ掛け
鼻から抜けるように笑い
馬鹿にしたように告げられる言葉に
ぎゅっと口を引き結ぶ。
「………さ、わるな」
これは、他の誰かが触っていいものなんかじゃないんだよ。馬鹿にされる覚えもない。
「………起こせ」
会長が俺を引き倒している生徒に告げると
九重ひらりが首を縦に振ったと同時に
引っ張り起こされる。
「何だって?」
「……触るな」
はっきりと告げる言葉に反応をする事をしなかった会長は俺の顔を手で掴みながら告げた。
「随分、ハデにやられたもんだな。まぁ、当然か。俺の親衛隊は少々手荒なんでな。」
そして、顔を掴んでいた手は、首の後ろへと回って髪が抜けそうなほど強く掴まれる。
「…………ッ」
「だが____。よくもまぁ、この状況でそんな態度がとれるな。」
髪を掴んでいる手とは反対の手で
くいっとその腕輪を引っ張っられる。
「今、ここであの時の生徒だって認めろ_____。認めないなら、コレを壊してやろうか。」
ぴくりと腕が強張ったのに感づいてか
会長は薄く笑った。
「大切なモノなんだろ。」
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