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chapter6
微笑4
しおりを挟む※暴力表現注意
「………イぁ……っ。……う」
与えられ続ける痛みに悶えながら
がちゃんっと音を立てる、鎖の音が耳に響く。
「つーか、お前。なぁーんで、九重に捕まってたわけ?まぁ、九重が俺にその件について話していかなかったってことはそもそも九重に大人しく話を聞く気はなかったつうことなんだけどなぁ。さっさと吐けや」
肩に乗せられた足に体重をかけてギリギリと骨が軋むほど
故意に痛みを与えてくるその生徒を見上げる。
「俺、そーんなに気の長い方じゃないんだよっ!」
何も言わない俺に焦れたのか苛立ち紛れにまた、同じ腹へと重たい蹴りを打ち込む。
「………っ!!」
その衝撃に咳き込むと
目の前にいる生徒が首を鳴らすと
「あーぁ。こんなに痛めつけてんのに、こんなに鳴かないなんてつまんねぇな」
しゃがんで
強引に顔を掴まれて、視線を合わさせられる。
「……言えよ。」
脅すようにきりきりと力をいれられて
思わず顔を歪める。
「…………新歓の………あの白髪の生徒だって、疑われてる。」
「お前が?………アイツだって?クッ、そりゃねぇわなぁ。容姿からしてありえねー。おい、新入生。明日から気をつけろ。大勢の生徒の前で吊し上げられるぜ。九重が今からやることは、ようは魔女狩りと同じだ。」
心底、可笑しそうに笑いながらピアスをつけた生徒は告げた。
「あー、かわいそ。」
顔から手を離すと
膝で頬杖をつくと乾いたように笑った。
「かわいそうだって思うなら、チャンスくらい……下さい。」
「はぁ?チャンス」
「ここから、逃げるチャンスを」
「それで?」
「一本だけ、電話かけさせてくださいよ」
「お前、馬鹿か。そんなのさせるわけねぇだろ」
「………3コールで、出なかったら何をされても口をつぐみます。例え、見える位置に傷がついても。これなら、どうですか。」
「お前、何を勘違いしてんのか知らないけどなぁ。これは、見えるとか見えないとか関係なく誰にも知られる筈がないんだよ。風紀に訴えるって腹づもりならやめた方がいいぜ?何でかって________」
そのピアスをつけた生徒は、ニタリと笑って告げた。
「それは、俺が風紀委員だからだ。俺らが全部、揉み消してんだよ」
ズボンから携帯を取り出して操作すると
生徒手帳を翳す。
そこには確かに風紀委員
『3年 河井 颯斗』
と、表記されていた。
「それでも、訴える生徒がいるはずです。」
「まぁ、要するにだ。世間のルールと一緒で、いつでもどの環境でも、出る杭は打たれるっつうこった。風紀委員がそんなんだから、みーんな訴えんのはやめちゃったってわけ。そんなんしたら、返り討ちにあうからな。けど、バレないようにやんのは保険だよ。保険。」
「保険……?」
「バレたら、面倒なのが……。って喋りすぎたか。でも、まぁ_______。その提案は面白ぇし。これから3年間がかわいそーなお前にチャンス与えてやるよ。ただし、何も喋るなよ」
一度もかけたことのない番号を入力してもらうと
風紀委員の河井は馬鹿にしたように嘲笑しながら
目の前に河井の携帯を投げつけてきた。
携帯のスピーカーから、目を閉じて流れる呼び出し音に耳をすませる。
_____1コール目
_____2コール目
不意に、あの時、あの食堂で純さんが言っていたことを
思い出した。
《『佐藤』は、君の盾であり剣にもなりうる。どう使うかは春くん次第だ》
どちらを、選ぶか。
それは、きっともう決まっている。
答えは、一つ。
純さん、俺が選ぶのは________
__________3コール目
呼び出し音が途中で切られて
視線をあげると河井が勝ち誇ったように笑んでいた。
「はーい。終了ー。残念だったねぇ、新入生くん」
純さん、何があろうと俺が選ぶのは__________盾です。
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