花は何時でも憂鬱で

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番外編

【桜紅と残虐王2】

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「桜紅っていうのは、お前のことか_____?」

「………他人の名前を知りたいなら、まずは自分から名乗りなさいよ」

「……そいつは、悪かったなぁ。でも、お前に名乗るような名前なんか持ち合わせてないんでな。」

名前も知らないそいつは、こっちの話も全く聞く気もないようで大きく振りかぶって眼前に拳が迫っていた。


「あ。今、分かっちゃったわ。アンタ、最近噂の_______残虐王でしょ」

迫っていた拳を直前で受け止めて
腹部めがけて蹴りをいれるが
掠りもせずにそいつは後ろへ退いた。


「残虐王ねぇ。」

「お前、ほんとに男か?」

「失礼しちゃうわね。ほんとに………男に決まってるじゃない」

「にしては、髪も長いし。おまけに、何だその喋り方」

「アンタ、デリカシーって言葉を知らないのね?」

くるくると飴を回して
その男に視線を向けると面倒そうにクビを鳴らして  
溜息を吐いた。

「んなもん、どっかに置いてきたよ。つうか、拍子抜けだわ。お前が、桜紅なんて。」

「違うかもしれないじゃない。」

「お前知らないのか?耳についてんだろ、ハートのピアス」

「それが、何なのよ?」

「そのピアスが、桜紅の証だって噂されてんぞ」

「へぇ?そうだったの。てっきり、こっちを見たのかと思ったわ」

服の裾をペロリとめくって
桜と刀を象られたタトゥーを見せるとその男は薄く笑った。

「ほんとに本物みたいだな。偽物摑まされた事もあったからな。なぁ?お前は、俺を楽しませてくれんのかよ?」

「気分じゃないと、喧嘩はしないのよ。お分り?」

「んじゃあ、気分になって貰おうかなぁ。」

くるりと回って、回し蹴りをするそいつの蹴りをかわして飽きるまで付き合ってあげようと思っていたが
思いのほかの体力馬鹿で面倒だから、さっさと終わらせよとも思ったのだが必死な顔が面白くてほんのちょっとだけ悪戯心が出たのがいけなかった。

「ねぇ、名前はなんていうの?」

「……はぁ?お前、ぜってぇ泣かせる。」

「えぇー。でもカッコいい名前じゃないの。黒河理人くん?えーっと、星羅学園の一年生なのね?」

「お前、何で」

その男が、驚いたように目を見開いているもんだから
クスリと笑って答えた。


「さっきの最初の一撃の時に、くすねちゃったわ。」

仏頂面で映るその男の生徒手帳を振ると
男の動きが止まって、不機嫌そうな表情を貼り付けて
じっと見つめてきた。

「な、何よ」

「お前の名前は何だ?フェアじゃねぇだろ?」

「えぇー。秘密?」

「男のくせに、女々しい奴だな。」

「それは、一発でも私にいれられたら答えてアゲル。」

そう言うと、その男は苦虫を潰したような顔をして
深い深い溜息を吐いた。

「すっげぇームカつく。」













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