花は何時でも憂鬱で

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番外編

【桜紅と残虐王1】

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※他サイトさんでのアクセス記念の番外編です。



「りーっちゃん。何見てるの?」

「文人が嫌がらせに送ってきた、写真」

「文人って、確かりっちゃんの従兄弟の」

「……ご名答」

ため息混じりに黒河が答えると
桜崎は後ろからその写真を覗きこみ
目を見開いた。


「……こ、これは?!」

「良かったな。お前のファンらしいぞ。たしか、桜紅だったか……?」

黒河がひらひらと写真をふって
その淡い桜色の髪をした頭から滴る血を拭う少年を指差して薄く笑った。


「何よ!ちゃんと、目を見開いて見なさいよ!私だけじゃなくて、隣に、映ってるのりっちゃんじゃない!確か、別名は残虐王だったわね!その割に、私に全然歯が立たなかったけど」

写真の中に映る、あの桜色の少年と背中合わせで立って
ボロボロの相手の胸ぐらを掴んでいる
まだ、幼い黒髪の少年を桜崎は指差す。

「おい、恋。誰がお前に歯が立たなかっただって……?」

「はいはい、ちょー強かったわね」


ニッコリと微笑む黒河にカラコロと口の中で飴玉を転がす桜崎は生返事を返す。

「つうか、今度は何味食べてんだ、お前」

「チョコレート」

「……の?」

「なんばん風味よ。私のイチオシ」

「相変わらず、味覚狂ってんな」

黒河が苦虫を潰したような表情で宣うと
桜崎は、ムッとしたように言った。

「美味しいのよ!コレ!!まぁ、りっちゃんには分からないと思うけどね」

「まぁ、世間話はコレぐらいにしといて」

「りっちゃん」「恋」

「「絶対に、こんな黒歴史はバレたくないから黙っとけよ/いてよね」」

黒河と桜崎は、2人同時に同じ台詞を呟くと
また、2人同時に視線を逸らした。


「何々ー。その写真ー?黒ちゃん、それ見せてー。」

突然、現れた声に2人は驚いて視線を向けると
桐島が興味深そうにその写真を覗いていた。


咄嗟に、黒河がその写真をくるりと反転して
見えないようにする。


「内緒です」

黒河が唇に指を当てて
微笑むと桐島が頬を膨らませてむくれた。


「むぅ。ケチケチー。でーも、黒ちゃんと桜ちゃんが仲良しだって事は知れたから、いいけど」

「「仲良くないです!!」」

「へへ。やっぱり、仲良しだねぇ。でもさ、さっきの桜色の髪の子、どっかで見たことあるなと思ったんだけど。______鮮華(せんか)ってグループの子でしょ?」


「へぇ~、そうなんですかぁ。気のせいだと思いますけどね。ねぇ、りっちゃん」

「いやいや、意外とすぐ近くにいたりするもんで、……っ」

黒河が余計な事を言わないように
桜崎が足を踏んで阻止する。

「ん?黒ちゃん、どうかしたの?」

「いえ、何でもありません」

直ぐに完璧な笑顔で微笑んで
取り繕う黒河に桜崎が、悪魔みたいだわ。昔は、可愛かったのにと呟いた。
それに、お前、後で覚えてろと視線で訴えると
黒河は桐島へと視線を向けた。

「そういえば、鮮華なんてグループ桐島先生が知ってるとは思ってもみませんでした。」

「僕も知らなかったんだけどねー、この学園の生徒にね、」


桐島の言葉を遮るように
チャイムの音が響いて、授業終了の音が鳴った。


「あ、次。私、授業だわ!」

「あ、僕!!校長に呼ばれてるんだったー!また、給料減らすぞって脅されるぅー」


黒河も、職員室から出て保健室に向かおうとした時だった。


行き交う人の中に、昔みた
桜と刀を象ったあのタトゥーを見た気がして
黒河は振り返るが何処にもそんなものは見当たらなくて
眉をひそめた。

「気のせいか……?」

「りっちゃん。ちょっと、ドアの前に立たないでよ。職員室に入れないでしょ」

「あぁ、悪い。そういえば、何で戻ってきたんだ」

「忘れ物よ。忘れ物」

「なぁ、恋。お前のあのグループって、なくなったんだよな?」

「えぇ。そうだけど、どうして……?」

「……いや、何でもない」

「変な、りっちゃんね。」

黒河は、さっさと歩いていく桜崎の背中を見ながら呟く。

「気のせいだな。ありえない」

足早に桜崎の横に並ぶと
黒河はもう一度、念を押しとこうと話しかけた。

「おい、分かってると思うけど」

「絶対に、言わないわよ。本当、りっちゃんにしたら黒歴史よねぇ。可哀想。」





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