花は何時でも憂鬱で

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chapter5

固執

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鬼の面を被ったよく分からない子から
離れて、数分_____。


僕は、連絡を受けて待っている人がいる寮へと足を運んでいた。


寮が見えてくると、バイクに跨ったままの
百樹 櫂(ももき かい)が待っていた。


「ももちゃん~。パス!!」

走りながらそう告げると
ももちゃんは、ヘルメットを粗雑に投げる。
それを、しっかりと受け取って装着すると
バイクの後ろに乗り込む。

「正門でいいんだよな?つうか、走って大丈夫かよ。」

「うん。大丈夫。ももちゃん、なるだけ飛ばして」

「ったく、人使い荒いんだよ。ちゃんと、説明してくれんだろうな。」

ももちゃんは、悪態をつきながらも
ハンドルを握りなおしてバイクを発車させた。


「正門が開いてるって。連絡がきたの」

「正門って……。紅組の連中が帰ってきたか?」

「ううん。それは、ない。正門が開いたのは今日の祭りが始まった時とちょうど同じ時刻。それから、もう6時間は経ってる。もし、紅組でも問題はそんなにないけど問題は_____。」

「なんだよ」

「正門がずっと開きっぱなしってことと。誰を中に入れたのかということ」

「そんなの、調べりゃあ……」

ももちゃんが言葉を詰まらせて
チラリと一瞬だけ視線を僕に向けた。


この学園から一歩も外に出られないわけではない
申請さえすれば学園からは出られるシステムになっている。
本来、誰がこの学園を出入りしたのか退出記録を見れば
すぐに分かるのだが、今回にいたっては全くその記録がなかった。


「白。飛ばすから、捕まってろよ。」

「ももちゃん。そっちでもモテると思うよ。わざわざ、猫被らなくたっていいじゃん。王子様キャラより僕はこっちのももちゃんの方が好きだよ。」

「うるせぇー。黙ってないと振り落とすぞ」

「はぁーい。でも、そっちの方があの子も振り向いてくれたりしてね?」

「……黙ってろ。」

「はぁい。黙ってますよぉ。」

そして、バイクで走ること15分
正門の前に着くと待っていたのは予想外の人だった。


「予想外の人たちですね。ねぇ、帝。」

「みーちゃん、と副会長さんどうしてここに?」

「俺は、佐伯に頼まれて探し物をしててここまで来たら都築に会ったんだ。」

「少し、君たちに聞きたいことがあります。学外の人がこの学園に来てます。知っていますか?」

「学外?」

みーちゃんが訝しむような声色で呟いた。

「そちらのお2人はどうですか?」

「僕には、さっぱりわからないかな。都築副会長」

ももちゃんの台詞に続けるように
僕も、言葉を返す。

「副会長さんは、誰が来てるのか知ってるの?」

「それは_____」



「西方燐の子が来てる?!」

副会長の話を聞いて、驚いたのは
百樹だった。


帝と白は顔を見合わせて、首を傾げた。

「「西方って誰のこと?」」

「風紀委員長と副風紀委員長ともあろう人達が、それを知らないとは一体どういうこと何ですか。」

「そういうのには疎いんだよ」

「右に同じく~。僕も、分かんないな~。」

「それを知らないのは、流石にどうかと思うよ?」

百樹が王子様スマイルでにっこりと微笑んで
優しく諭すように言うが、そう言ったことに疎い2人は
苦笑いを浮かべた。


「この際、説明は省きます。私は、彼を探さないといけませんので失礼します。」

「都築。俺たちも手伝う。ただ、1つ問題があってだな。」

「問題とは何ですか?風紀委員長」

「今、この学園はお面を被らないといけないルールがあるんだよ。」

「何を言っているのか分からないんですが……。」

都築が整った顔を崩して、眉が寄せられる。

「てゆーことで、副会長さんはコレを被ってください!」

「何なんですか。それに、貴方達だってお面を被っていませんよね?」

「それもそうだな。白」

「はーい!用意できてまーす。あ、ももちゃんのもあるよ?」


「…………今は取り敢えずは、納得します。今は、何も聞きません。けれど、後で、どういうことかご説明願いますか?風紀委員長さん。」

都築が深いため息を吐いて
鋭い視線を帝へと向けた。



「……はい」


冷たい都築の声に帝は背筋を凍らせながら首をゆっくりと縦に振った。



都築と帝は車で白と百樹はバイクで学園へと戻り
学園の付近に近づくたびに黒いオーラを醸しだす都築に
帝はようやく口を開いた。


「このイベントを撤収させて下さい。会長がいない今、貴方がして下さい。」

「え?」

都築の台詞に帝が不思議そうに眉を寄せた。
その帝の声に反応した都築が鋭い視線を向ける。

「何ですか。できない、と?」

「いや、撤収作業も全部、やりそうだと思ってたから」

「何故、私達が勝手な事をした白組の尻拭いをさせられるんですか。まぁ、こっちに残っていた生徒会の役員面々には私から個別にお話しさせてもらいますがね」

都築の底冷えした瞳に帝は
背筋を凍らせながら、引きつった笑みをこぼして
1つ深呼吸をすると帝は都築を見据える。


「都築、悪いけど撤収はできない。俺には。………責任は、終わってからで頼むよ。せっかくのこの雰囲気を壊すのは出来ない」

「…全ての責任をあなたが負うという事ですか?きみのそういう所気味が悪いですね。感情より実利でしょう?普通なら。」

「つくづく、嫌われているみたいだな」

「えぇ。気づきませんでしたか。」

「他には、唯賀と後は?」

「数えたら、キリがないですかね。」

「とんだ、嫌われ様だな」

鼻から抜けるように笑いながら帝は零れるように呟いた。

「それで、この集団を捌けずに探す算段もなくそんな悠長なことを言っているのではありませんよね?」

都築の言葉に、帝は仄暗い赤い瞳を都築へと向けて
勿論と答えた。


「何の因果かこのお面が役に立つ。」

「と、ゆうと?」

「祭り参加者は必ずお面をつけている。もしも、西方財閥のご子息がいるなら、このお面はつけていないはず。このお面が配られたのは、祭り開催前夜。だから、人がごった返す出店の辺りにはいないだろうし、もし、いたとしても一発でわかる。」

「なるほど。では、集中的に探すべきは出店の辺りではなく休憩してる生徒達がいる場所などというわけですね」


そして、都築と帝が車から降りたと同様
白と百樹もバイクから降りて
それぞれが捜索する手筈となり駆け出そうとした時______


「はいはい、止まってそこの4人組~。鳴川さんこと鳴さんがお呼びだよ~ん!」

何とも力の抜ける掛け声が何処からか発せられた。




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