花は何時でも憂鬱で

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chapter5

夜の足音2

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「グ腐腐腐腐腐腐っ」


自分の持ち場へと足を運ぶために
矢井島と別れたはいい、が。


その持ち場では何故か

クマの耳をつけた赤いパーカーを羽織った
先輩を筆頭にして何かの本を持ち寄った集団が
ニヤニヤと笑いあっていた。


「あの、すいません。」

「良先輩。傑作ですな~、コイツは!やっぱり、王道に限りますな~。会長×王道転校生。しかし、我が学園にそれがいないのが悩みのタネ。」

「いんや。でもでも、生徒会長×風紀委員長もなかなか。傑作だよねぇ。うちの学園の唯賀様と坂田様がモデルなんでしょ?美味しい展開、アザマス!!良先輩!!」

「いやいや、そんなに褒められると筆がのっちゃうよ!グ腐腐腐腐腐っ!」

よく分からない事を話しているが
何か関わってはいけない先輩達なのではと思ったが
持ち場を離れるわけにもいかないと
もう一度、声をかける。


「すいません。」

「へあっ?!だ、だ、だだれ?!」

赤いパーカーを羽織った先輩が
声をあげると瞬く間に他の先輩達は
本を懐に隠して何事もなかったかのように
各々の仕事をし始めた。


このどもり加減最近、見た気がしないでもないが
気を取り直して未だに本を隠しきれていない先輩を見ながら、ふと、思い出す。

「あ。あの本の先輩。」

そのクマ耳の赤パーカー先輩と
他の先輩たちも同様にピシリと固まった。

「それならそうと早く言いたまえよ、後輩くん。同志であったか。」

ポンと肩を叩かれて
どこか涙ぐむクマの赤パーカー先輩の様子に何か勘違いされているとも思ったがどうでもいいかと思い、否定しなかったのが運の尽きだった。

「やっぱりぃ。僕は、生徒会長×副会長っていうのがセオリーだと思うんだよねっ?!グ腐腐腐腐腐っ!!でもでも、会計が本当はチャラく見せといて実は、副会長が好きでそこから泥沼の三角関係っ?!萌えるよぉ~!!萌えつきちゃうよぉ~!!!ね?どうどう?」

「いや、どうと言われても。」

赤パーカー先輩を筆頭にした
他の先輩たちのキラキラとした視線が痛い。

「さぁ!君のセオリーは、どれだい?!」

「えっ………と、じゃあ、会長×転校生の王道がセ、セオリーで。」

一瞬の沈黙の後。
騒ぎまくる先輩達に圧倒されて俺は、何も言うことができなかった。

「分かるよ!同志よっ!!一度は通る道さっ。君は、我が漫研に入る資格を持ち合わせているいつでも待っているよ。」

どこか誇らしげに赤パーカー先輩が
キマったと呟きながらドヤ顔を決めていた。




「そういえば。屋台の唯一の一年生ってまだ来ないの?」

この集団の中から不意に飛んできた
やっと本題に入ってくれそうな言葉に
その一年ですと答えると泣きそうなほどに喜んでいた。


「さぁてと。僕たちの作るのは何かなぁーっと」

赤パーカー先輩が持っている
分けられた班ごとに配られている説明の紙を
覗き込んでいる先輩たちから聞こえた


「綿あめかぁー。」


という安心とも落胆とも似つかない声とともに出た単語に疑問を隠せなかった。



「綿あめ?」


初めて聞く単語に反応し
繰り返すが全く身に覚えがなかった。


「ん?まさか、綿あめ知らないの?」

赤パーカー先輩の声の反応に
他の先輩たちも興味深いものでも見るように
こっちに視線を巡らせた。


「初めて聞きました。」

その視線を受けながら
何となく居心地の悪さを感じながら、そう答えた。





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