花は何時でも憂鬱で

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chapter5

夜の足音1

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ジリジリジリというとてつもない
騒音に起こされて、目を覚ますと
部屋に設置されているテレビの電源がつき、


『ヤッホー。こんな時間に起きる君たちはお寝坊さんかなぁ~?』

見覚えがあるイベント好きの門川先輩が
高いテンションで手をフリフリとしながら
映っていた。

『白組の賞品はないけど、こっちはこっちでお祭り開催しちゃいま~す。パチパチィっ!』

「お祭っ!?」

隣で寝ていた矢井島が飛び起きて
瞳をキラキラさせながら楽しげな声色で声をあげた。


何で、この学園の人はこうも
唐突なんだ。



_____昨日の夜。


食堂から戻ってくると
矢井島が部屋までついてこようとするので
声をかけたら、さも、当然のように


「え?だって、今日は蒼くんの所に泊まろうと思ってきたんだよ」

と、有無を言わせない笑顔で告げて
仕方なく部屋にあげてから数分もせずに
テレビの画面がつき


校長が現れた。



『こんばんわー。校長でぇーす。さてさて、新歓の賞品発表がまだだったので発表します!
宮路の所有のリゾートで2泊3日のお泊りに決定~!
残念ながら、白組には商品はないけど
授業はないから、寝てもよし、遊ぶもよし、何をしてもよし~っ!出発は、明日の朝7時だから用意してねっ!』


そう言い切ると、画面は唐突にきれた。
その映像が流れたのは午後11時半のことで
きっと、紅組が用意に忙しなく動いていたためか
上の階やら、周りの部屋から煩い音が聞こえたのも
そのせいだ。



そして、今日の11時が回った頃
寮長の門川先輩により
『祭り』の開催が報告された。




眠気がかった俺は布団に包まろうとしたが
それを見計らったようにテレビの中の門川先輩が


『あぁ。そうそう、全員参加だからね、コレ!来ない子は、直接ピンポンダッシュしに行くから
気をつけてねっ!』



そう言い切って、映像はプツリと消えた。


「蒼くん!お祭だってさ!早く行こー!」

矢井島に促されるまま
またしても、寮のホール集合でその場に行くと
いつかの時みたいに大勢の生徒でごった返していて
もう、何かに忙しそうに動き回っている生徒が多かった。


どこから出してきたのか
ホールの中心に出されているスクリーンには
各々の仕事の振り分けがされているようだった。


どうやら、縁日のようなモノにするらしく
1つの出店に7~8人程度を振り分けるらしい
準備期間は1日とかなりハードなものだった。


「それにしても、よく、許してくれたよね。校長先生とか
生徒会とかにも許可取らないと、なのに。」

「それが、無許可なんだよ。美音」

どこからともなく飛んできた声に
矢井島が素早く振り返りそれに続くように
振り向くと第一印象がホワンとした人が
立っていた。


「天ちゃん。無許可ってどういうこと?」

「そのままの意味だよ。さっきまで、風紀委員とかけあってて紅組の皆んなが帰ってくるのは3日目の夕方ごろだからって昼までに片付けるってことで何とか話がついたってわけ。」

「それって……。もしも、見つかったらどうするの?」

「まぁ、その時は………その時かな?」

初めて見るそのクリーム色の緩いパーマの人と矢井島との会話を聞いていたら、不意に、視線がこっちを向いたのに気づいて軽く会釈をした。

「初めまして……かな?」

「初めまして。」

「何か何処かで見たことある気がするんだけど。気のせいかな?」

「、気のせいだよ。天ちゃん。」

「そうだよね。……改めまして、八色天と言います。一応、親衛隊総隊長を務めてます。どうぞ、よろしく。」



親衛隊総隊長の八色天。
あの日、確か生徒会長に駆り出された人のうちの一人。



「……佐藤、蒼と言います。」

「佐藤、蒼くんって、確か………。」

その先輩の次の言葉はどこからかこの人を呼ぶ声によって出てくることはなく、颯爽とその人はいなくなった。


八色先輩の姿が見えなくなると
矢井島がふぅ、と安堵のため息をついた。

「天ちゃんって、厭に鋭いから。気をつけた方がいいよ?」



あの親衛隊総隊長の言う
『確か』の続きが気になるものの
考えたとしてもどうしようもないかと思い直し
自分の持ち場に行くことにした。



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