花は何時でも憂鬱で

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chapter4

引き合わされた糸

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坂田 帝(風紀委員長)side


「リアー?リア、何処にいるんだ。」

ため息を一つ吐いて、腰に手を当てる。


気まぐれなタイプの猫だから
探しに行かなくても帰ってくるとは思うけれど
ごはんの時間に帰ってこないとなると話は別だ。


「随分、遠いところまで探しにきちゃったな」

今は、3つの部活動に使われている
少し古びた旧校舎の内装を見ながら呟く。



「みーちゃん!見つかった?」

「白か。いや、見つからない。」

あからさまに落ち込んでる白を見て
ポンポンと頭を撫でる。

「白、言いづらいんだが。そろそろ、戻らないと」

「分かってるよ。仕事、溜まってるだろうしね。見回りもしないとだもんなぁ。リアちゃん、大丈夫かなぁ。」

「悪いな、白。リアは、仕事が終わって帰ってこなかったらまた、探しに来よう。毎日、遅くまで悪い。勉強もあるのに。」

「みーちゃん。屈んで」

「何で。」

「いいから!」

突然駄々をこねる白に
渋々、 白と同じ目線になるまで屈むと
何処か不機嫌な顔をした白の顔が見える。

「また、隈できてる。」

白に頰を包まれて
目の下をスッと撫でられる。

「これは、夜、遅くまで起きてるから」

「嘘。また、隠れて他の人の仕事分までやってるんでしょ」

「そんなことするかよ。」

「それとも、厄介な案件でもあった?僕が、やってもいいんだよ。」

心配そうにそれでも真摯な瞳に
覗きこまれて、敵わないなぁと思う。

「別に、最近、昔のゲームにハマってやりこんでるだけ。」

「何のゲーム?」

「ゲームボーイ、とか?」

白のさっきまでの真剣な表情は崩れ去って
呆れ混じりのため息が漏れでた。

「みーちゃん、時代遅れすぎだよ。」

「面白いけどな?昆虫同士で戦わせるのとか。でも、アレほとんど運だからなぁ。」

「もう!こっちは、真剣に相談に乗ってあげてるのに!!」

「はいはい。悪いな。」

レンガ造りの旧校舎から出てから
誰かが旧校舎の周辺に点在するパラソルの下で寝ているのに気づき、忘れ物をしたと白に言ってそこで別れた。


腕時計を確認して、時間を確認する。
針は6時半を指していた。


「流石にこの時間はまずいよな。」

そのパラソル下で寝ている人物に声をかけようと
歩み寄る。



「こんな所で、寝たら風邪ひくぞ。」

横から声をかけても起きない人物に
揺り動かそうと手を肩にかけた瞬間。


パシッと白い何かに手を払いのけられる。
驚いて、それが何なのか確かめようと視線をあげると


「リアっ!お前」

ずっと探していた白猫のリアは、不機嫌そうにこっちを見上げていた。

「リア、心配したんだからな。帰るぞ。白が心配してる。」

その言葉を聞き入れるつもりもないのか
未だに寝ている人物に身をすり寄せながら眠る体勢を取る。

「随分、懐いてるな。リアが人に懐くなんて見たことないけど。」

急に、気になって寝ている人物の顔を覗き込む。


前髪が長くてよく分からないな。


「……ん。」

漏れでた寝言と一緒に
かちゃりと無機質な音が聞こえる。

「眼鏡、か。」

これ、割れでもしたら危ないよな。

同意もなしに悪いとは思ったが
腕を重ねて寝ている人物の耳元に手を差しこみ
眼鏡を取ろうとしたらリアがニャーオと不機嫌極まりない声で鳴いた。


身を起こし威嚇するリアの姿を視界に入れて、何とかたしなめようと告げる。


「眼鏡で、怪我でもしたら危ないだろ。」

それに、納得したのかしてないのか
リアは、眠った体勢から起き上がりその動向を見守ろうとする。

「なつきすぎだろ。そんなに、好きなのか?」

リアに語りかけながらも
眼鏡を外して、寝ている人物の前に置く。


眼鏡を外した拍子に
ほんの少しだけ顕になった顔を
視界の端にいれる。


「睫毛の色素は、薄いんだな。」

少しだけ、顔を近づけて覗き込むと
あどけない寝顔で眠っている人物が微笑ましくて
口元を緩ませる。

「寝かせておきたい所だけど、俺も行かなきゃいけないからなぁ。」

肩を揺すって揺り動かして
起こそうと試み続けるが
一向に起きる気配はない。

「仕方ない、な。後で、白に怒られるか。」

呟いて、まだ、肌寒い春の気配に身震いして
目の前の人物へと制服の上着をかけると
腰を下ろす。

「これで、俺が風邪ひいたらどうしてくれるんだか。」


自分でも思ってもみないほど柔らかい声に
驚きつつ頬杖をつきながら、その寝てる人物の
髪の毛を起こさないように触れた。


「それにしても、少し、似てるか……?」


いや、でも、あの時は暗くて
顔なんか見えなかった。


あの子が


資料室を出る時にも確認すらしなかった。
何年生でどんな顔をしてるのかさえ。




「なぁ、もしかして。………なまえは、春?そんなわけないな。」


帰ってくるはずのない答えだと
知っているのに。



何故か、そんな気がしてならない。


親指の腹でその頰を撫ぜる。


「春だと、いいんだけどな。」

「………ん、」


その声に反応したリアがいち早く反応を示して
トタトタと近くによって、甘い声で鳴き声をあげる。

「おい、リア。そろそろ帰るぞ。」

そろそろ起きそうな
目の前の人物から手を離して立ち上がり
いつになく素直に反応した
リアが俺の肩から頭の上へとひょいひょいと登る。

「お前は、何でいつも頭の上なんだよ。」

目を覚ましそうなその人物の
頭を一撫でするとその尻尾で
ベチッと額にリアの攻撃を受けて



「はいはい、悪かった。だから、怒るなよ白猫様。」


名残惜しい心地もしたが
リアの機嫌をこれ以上悪くしないためにも
その場を立ち去った。



少し肌寒いと思いながら風紀室に戻り


「みーちゃん。上着は?」

と、白に言われて気づいた。


「あぁ______忘れた。」

そのどこか、愉しさを乗せた色を響かせているのに
また、驚いて。
次には、口元に笑みを浮かべた。






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