花は何時でも憂鬱で

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chapter4

気まぐれの猫

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くるり、くるりと
取っ手の先に桜が描かれている鍵を回す。


あの夜に
あの先生に手渡された鍵。



「一体、何の鍵なんだ。」


ここ2週間
学校にいる間、休み時間も指輪を探していたので
すっかりと忘れていて帰りのホームルームで
帰り支度をした時に、発見して
見つめるが答えが出るわけもなく諦め、鞄の中にいれる。


最近は特に何事もなく静かに時間が流れた
矢井島が訪ねてくることもなく
そして、荒谷が近づいてくることもなかった。


その荒谷といえば
最近はただぼうっと窓の外を眺めていたと思えば
担任に注意され、保健室に行くと言ってから
教室には帰ってこないことが増えた。



帰りのホームルームが終わってすぐに
教室を出てまっすぐ階段へと足を進め
角を曲がった時だった。
誰かとぶつかった。


「………ぃっ、」

「いったぁ。」

ぶつかったと同時に
尻餅をついて倒れたその人物が
下からキッと睨みつける。

「ちょっと!何処みて歩いてんの?」

「すいません。」

ジロリと品定めでもするように
全身に向けられた視線を受けながらも
謝ると、その人はため息をついて立ち上がる。

「今度から、気をつけてよね」

「はい。すいません。」

その人が、立ち上がった事で気づいた。
胸元のバッジに。
それは、親衛隊の隊長格の人だけがつけられるバッジで
色は_____黒。


各親衛隊には、各々のカラーがあり
自ずとそれが誰の親衛隊なのかが
はっきりとしてくる。


黒は____会長のモチーフカラー。


それに加えてこの苛立ちよう
ウチのクラスも何処か苛立っていた。


「九重隊長!」

「二度目は、ないからね。」

後ろから、恐らくこの人を呼ぶ声が飛んできて
もう一度、俺を一蹴してその人は立ち去っていった。


心の中で、ため息をつき、立ち上がり
再び歩き出そうとした瞬間
何かが床に落ちているのに気づく。


「何これ」

しゃがんで見ると、白い薄っぺらい紙のようで
裏返してみると、それは、会長が映っている写真だった。


「これ絶対」


_____あの人のだ。


もう、お近づきにはなりたくない人種ではあるし
かといって、落し物としてコレを届けるのも気がひける。


それに、これ。
同意を得て撮った写真とは考えがたい
誰かと話している会長の写真だった。


「どうしたらいいんだ………。」

近くから数人の足音がこっちに向かってくるのが
聞こえてきて
廊下でしゃがみながら
その写真を見続けるのはどうにも怪しいと思い
とっさに鞄の中のファイルに挟む。


急いで、鞄のチャックを閉めようとした瞬間
チャリンと音を立ててあの鍵が飛び出てきた。


その鍵を拾おうと手を伸ばしたら
白い手が伸びてきて、タシッとその鍵の上に手を置かれた。


「_____え?」

視線を僅かにあげれば
高そうなネックレスを首元に輝かせた
真っ白な品の良さげな猫と瞳があう。


____ニャーン


鳴き声を1つあげると
その鍵をくわえて廊下の開いていた窓に飛び移り
颯爽と何処かに言ってしまった。


「えっ?、ちょっ!」

その窓からその猫の行方を覗くが
一瞬にして猫は消え去っていた。

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