花は何時でも憂鬱で

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chapter3

1st GAME 【 捨てたもの 】ーI

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「それで、内容は?」

「内容は、行けばわかる。」

「_____どこに?……っ!」

柔く手首を取られると
どこかへと向かう荒谷の背中を見ながら
引っ張られる。

「佐藤、これは正式な勝負(ゲーム)だ。俺が勝ったら、ちゃんと俺の望みを__」

「分かってる。………勝てば、叶えるよ。その望み。けど、負けたら俺の望みを叶えてもらう。」

一瞬、少しだけ力の入った手から
動揺を感じ取って、視線を荒谷に向けるけど
何でもないように、分かってるって、と笑った。

「まぁ、問題ないって。絶対に、俺が_____勝ってみせるからさ。」



月明かりに照らされる桜並木は消え去り
どんどん人気のない場所へと変わっていく景色に
不安を覚え、声をかけようとしたら





荒谷の足が突然、止まったのを感じて
視線をあげると、見えてきたのは開けた広場の中央に
古い建物がポツリと建っている姿だった。


「ここは_____」


荒谷に尋ねようとした瞬間
それを割く何処かで聞いたことのある声が飛んできた。

「あ!やっと来た、遅いよ。新くん、それに蒼くん。僕、すっごい待ったんだけど。」

下から覗き込むように
天使の笑みを浮かべるその人物に
目を奪われた。


「矢井島。何で、ここに。」

「酷いな~?僕がいたら駄目なわけ?蒼くん。でも、僕のこと覚えててくれて嬉しいな。まぁ、覚えてなかったら僕、危うく誰かに話しちゃうとこだったよー!」

何の悪びれもなくそう言ってのける姿に
表情が引きつるのを感じた。


「2人とも、知り合いだったんだな。」

「あぁ、そうそう。ねぇ?蒼くん。色々とね?」

「まぁ。色々と。」

矢井島は俺の返事を聞くや否や
パチンと手を鳴らして、始めよっかと告げる。

「それじゃあ、改めまして。今回の見届け人を務めます。矢井島美音です。どうぞ、よろしく。」

「「見届け人?」」

「そうそう、見届け人。蒼くんは、知らないのは分かるけど____新くん!何で知らないの?!高等部に上がる前、中等部で教えて貰ってるはずだよね?それに、見届け人探してたじゃん。」

「あはは、イヤ。その時は普通に寝てたからさ。後、見届け人っていうのがいるってことは知ってたってだけなんだよ。」

「信じらんないんだけど。ったく、じゃあ簡単に教えるね。」

しかたなしといった体で
矢井島が人差し指を立て、

「1、正式な勝負には中立の立場の見届け人を最低1人、要すること。なお、適任者がいない場合は風紀委員から選ぶこと。」

続けて、中指を

「2.両者の同意なくしては、正式な勝負とは認めない。」


そして、薬指を立てる。


「3.この勝負(ゲーム)において、勝った者には1つだけ願いを叶える権利が与えられる。この願いっていうのは勝負内容を決める側は相手に伝えること。勝負(ゲーム)を受ける側は、伝えなくてもよいが、見届け人には伝えること。____と、まぁこんな感じ。それで、荒谷くん。勝負(ゲーム)内容は?」


「内容は_____剣道。一本勝負」




心がざわりと揺れ動く心地がした。
久しぶりに聞く、その単語に頭より先に心臓が反応して、重く低くどくりと音を鳴らした。



何処か痛みを伴って。



「了解。それで、蒼くん。どうする?蒼くんの望みは、伝える?それとも伝えない?………おーい。蒼くん?」

「分かってるから、大丈夫。望みはなんとなく分かってる。だから、聞かない。アイツの考えてることなんて1つだろ。」

「……新くんがそう言うならいいけどさ。」



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