花は何時でも憂鬱で

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chapter3

悪魔のカード

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宮路栄(校長)side



今まで、隠してきた理由もそうだが
これからも隠し通そうとしている理由はなんなんだ。


まさか、跡取りにする気がないからなのか。
それとも他に何か理由があるのか。


天宮くん。君は、何を考えているんだ。


『余計な接触は避けてもらいたい。けど、あの子に何かあったら、容赦はしません。いくら宮路先生でも。』


あんな事を言っておきながら
この子に諦めたような事を言わせる酷な事を言わせる。


嫌っているようにはどうしたって思えないが____________。


これは、どうにも腑に落ちない。




わざわざ、佐藤くんの子供という事にしてまで
何で入学させたんだ。


天宮ではダメな理由があるのか。




何を隠したがっているんだ、天宮くん。


入学テストも優秀、話していてその仮面が剥がれるような少し危うい面がある子だとは思うけれど、全てを語るわけではない頭のいい子だとは思う。


「分からないな。」

「何がですか?」

ジッと視線を春くんに移して見つめ続ける。


少し探らせてもらおうか。
この子を本当に跡取りにする気がないのか、を。


紅茶を飲もうとカップに指を絡ませながら
視線だけを春くんに向けながら問いかける。

「天宮春くん。天宮く、いや、君の父親はオーロ世代だったね。」

「………それは、何ですか?」

カップを持っていた指が少し強張るのを
自分でも感じながら
カップに口づけることをせず
そのまま、カップを受け皿の上に戻す。


「………………本当に、する気がないのか。そんなことまで教えてないとは。」

「どうかされましたか?」

私の溢した言葉に
疑問の声をあげる
春くんに動揺を悟られまいと
穏やかな笑みを浮かべて話す。


「少し、聞きたい春くん。君がここにくれば君の大切な人を守れると思った理由は何だい。この学園に来たからといって守れる保証なんてものはない。」

「天宮は、大きな家です。だから、それに対抗する力がいるんです。代わりに、守ってくれる人が。だから、学園の最高意思決定機関U.TF、それがここに来た理由です。校長先生、彼らに会わせていただくことは可能ですか。」

「______君には悪いが、それは無理な相談だ。そんな簡単に会える方たちじゃあなくてね。私でさえ、一度も会ったことがない。」

「……そうですか。」

「でも、そうだなぁ。ツテがないわけじゃあない。あの方たちは、U.TFは、気まぐれな方らしい。それに、面白いことが好きらしいよ。だから、春くん、私のお願いを叶えてくれたなら、かけあってみてもいい。きっと、これはU.TFの方々も興味を惹かれるだろう。」

「………そのお願いというのは何ですか。」

真剣みを帯びる声色で
縋っているようにも聞こえる声が耳に響く。


春くんの視線を背に浴びながら
座っていたソファから立ち上がり
デスクの引き出しから2枚のカードを取り出す。
そして、春くんの方へとくるりと振り返る。


「ここに、2つのカードがある。片方のカードにはDEVILと書かれている。白い方にはANJEL。まぁ、要するに。悪魔と天使のカードだ。君は、〝いま〟。どちらかを選ばなきゃならない。」


足を春くんへと向けて、元いた場所、ソファの前に立ちながら春くんを見下ろしながら話す。


「君は、どちらを選ぶかな?黒のカードを選んで、犠牲を伴うかもしれない学園のルールと闘うか。それとも、何も得ないが平穏な日々を送るか。さぁ、どちらだい?」


「そんなの、決まって___」

手を伸ばしてくる春くんを視界に入れながら
一歩、後ろに足をひく。

「本当に分かっているのかな?〝悪魔(こちら)〟を選べば、天宮とバレて君の願いは叶う可能性は低くなるかもしれない。要するに、何もできずに終わってしまう可能性が高い。

かたや、〝天使(こちら)〟を選べば、時間はかかるかもしれないが安全にその願いも叶うかもしれない。まぁ、叶わない可能性が99.9%だけどね。リスク無くして叶うなんてあり得ないからね。」

「俺には、時間もない。だから、望むことはたった1つなんです。それしかいらない。」


___盲目だねぇ。私の願いも聞かないなんてねぇ。
     そこまで大切なのか。


「私のお願いを聞かなくても、いいのかな。」

「構いません。それが、どんなお願いだったとしても、絶対に叶えてみせますから。」

「じゃあ、叶えてもらおうかな。」

立ち上がる春くんの前髪に隠れて見えない瞳を
射抜くように見つめながらそのカードを渡す。



______DEVILと描かれる悪魔のカードを。



「それで、お願いというのは何ですか。」

「私の願いは______この、学園規則をぶっ壊す、ことだ。」

「…………壊す?でも、その規則は」

「そう。この規則は絶対無二の規則。けど、この規則はもう壊さなければいけない。無くさなければいけない。もしかして、後悔したかい?」

「いいえ。」

一定の声色を刻むその声は
乱れることなく言葉を紡ぐ。


「君は、面白い子だね。すこし思い出すよ、昔を。こんな気持ちは、いつぶりかな。
それじゃあ、天宮春くん。これは、私との勝負(ゲーム)だね。


       【   全部壊して、全部救ってみせてよ   】      」
                                        

「学則を壊そうとしている方が、勝負(ゲーム)を挑むんですか。」

「こういうのは、楽しんだもの勝ちだよ。さぁ、始めようか。
PLAY     giochiamo!」


開けた窓から見える海を眺めながら
ポツリと溢す。

「盲目は、罪だね。でも、選んだからには突き進んで貰うよ。例え、それが人の心を踏みにじる選択でも。
まぁ、簡単にはいかない。何せこの学園の子達は
面倒な子ばかりだからねぇ。何かが欠けていて、それに気づいていない子たちばかりだ。」







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