花は何時でも憂鬱で

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暗躍の影

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___パァン、パンッ

空砲の様な音があがる。
窓から外を覗いたと同時に
保健室のドアが
恐る恐るといった様子で
ドアが開いた。

「おい、もう終わったか?」

「終わりましたよ、それと、佐藤さ、父さんならさっき帰りましたよ」

「そっか。てゆうか、お前行かなくていいの?」

「何処にですか」

「どこって新歓……出るんだろ?」

「出てもいいんですか。」

「うんまぁ、本来なら止めるべきなんだろうがなぁ、新歓出ないと浮くぞ異様に
それにだ、将来役に立つと思うし」

「尚更……俺には関係ないんで休んでてもいいですよね?」

「まぁ、それはそれでもいいけどさ
お前、後悔するぞ。何せお前のチームな
生徒会役員の会計がいるからな」


「は?!」

「アイツに目つけられたら面倒だぞ」

「何でそんなこと知ってるんですか」

「ん?それはなぁ、俺が考えたからだな。あぁ、ちょっと待て。ジャージに着替えてけ、今日はジャージ登校だ。お前は、一年だから赤だな。面白いもんが見られると思うぞ」

「どういう意味ですか」

「さぁ?それは、見てからのお楽しみかなぁ?」


ニッコリと悪びれた様子もない
笑顔で微笑む。
ヒトの反応を楽しんでいるような
そんな顔、心のそこから楽しんでいるからこそいっそうたちが悪い。

「性格悪いって言われません?」

「うんうん。よく言われる。そんなことよりも時間大丈夫か?」

トントンとわざとらしく腕時計を
叩く仕草にイラッとしながらも
ジャージを羽織って保健室を出た。


「よりによって何で生徒会なんかと。」

体育館に、そう呟きながら走っていく春の姿を見る一つの影。

「あの子だ。ぱっとしないけど。
あんなのがうちの利益に関わるとは到底思えないなぁ、まぁ、取りあえずは様子みかな。それにしてもあの容姿はいただけないかなぁ」





緑に囲まれた木々の下。
静かに本をパタリと閉じ、膝の上に置く。


「あら、来たのかしら。思ったより、遅かったわね」

その純白のワンピースに負けないくらいの
真っ白な長い髪が少し肌寒い風に揺れる。
木々が揺れるのと同じように慌ただしげに、地面を蹴るその音が近づいて来るのをその女性は悠然と待ち構えていた。



「あの人は、何処に行ったんですか?!」

「さぁ、私に聞かれても分からないわよ。あの人は、自由なところが取り柄でしょ」

鈴が転がるように
優しく控えめに笑うのを
焦っている男は苛立ちげに続ける。

「そんなこと、言っていられる立場にないでしょうがっ?!貴方がたはっ!!」

「そうね。でも、もう行っちゃったのよ。」

「……行ったって、何処に?」

目の前の男が青褪めていくのを
感じながら、その女性は淡々と述べる。


「勿論、あの人の始まりの場所へ。
多くの財閥の息子が集まる、春栄学園に。止まらないわよ絶対に、それもあの人の取り柄ね。」

「まさか?!あの人、本当のことを言うつもりじゃ」

「それは、ないわ。そのために、大切なものを幾つ犠牲にしたと思っているのよ。それに、あの人は、先生はおろか生徒にだって変装できるわよ。」

「あの人は、自分の立場ってものがまるで分かっていない!!」

「何もなければ、戻ってくるわよ。今しかないでしょう。今、終わらせなければいけないのよ。春田から始まった悪習を。それに、気になることもあるしね。いいでしょ。空くん」

強く気高い緋色の瞳に
見つめられた男は、何も言う気はなくなったと言うようにはぁと諦めと一緒にため息をつく。



「何でそれ、……僕がそれに弱いってわかっててやってますよね?」

「お願いよ、空くん」

「わかりました!!わかりましたよ、今回限りですからね!!」

「大好きよ、空くん」

「2番目にでしょ」
  
「拗ねないでよ」





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