花は何時でも憂鬱で

青白

文字の大きさ
上 下
14 / 178
capture.1

指輪の持ち主

しおりを挟む

???side



「はぁ~。もう居ないか?」

溜め息を漏らし、耳をすませば
何の音も聞こえない。


よしっ
そろそろいいか?
ドアノブに手をかけて
回そうとした時、ガチャリと音をたてて
扉が開いた。


え?


「い、デッ!」

耳をそばだて体重をかけていたのもあって
そのまま崩れ落ちた。
すると、パタパタと可愛らしい音をたてる足音が聞こえる。


「だ、大丈夫?!み~ちゃん?怪我してない?顔に傷ついてない?死んだりしてないよね?」


ユサユサと俺の身体を揺すりながら
心配する優しいその声に笑みをもらす。


「白、大丈夫だよ」

むくりと身体を起こして
顔を突き合わせれば、大きな瞳が最大限に開かれ、抱きつかれる。


「み~ちやぁ~ん。よがっだァァ!!」

「お前は、昔から大袈裟なんだよ」

「そうかな?」

「そうだって、ほら、行くぞ」

廊下で座ったまま話すのも
アレなので、立ち上がり
白にも手を差し出す。
俺の手を取って、立ち上がると
資料室の奥をじっと見つめる。
そして、またパタパタと足音をたてて
何かを拾い上げて、戻ってくる。

「これ?み~ちゃんの?」

こてりと首を傾げて聞く。
白の手にあったのは2つの指輪だった。


「いや、俺のじゃあない」

「そっかぁ。じゃあ、僕が貰っちゃおうかな?綺麗だし」

「……あぁ、いいんじゃないか」


まぁ、問題ないだろ。
ここにあったとしても落ちてたってことは特別なものってわけでも無さそうだしな。



「み~ちゃん、もうそろそろ会場行かないと駄目じゃない?」

「そうだな。白、こういった場面では」

「分かってるって、坂田風紀委員長。
これでいいんでしょぉ~」

「あぁ」


そういえば、さっきのあの子は。
来るかな、今日の歓迎会。



来てほしいような、来てほしくないような
不思議な気持ちだ。



「…………春、か」









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

忘れ物

うりぼう
BL
記憶喪失もの 事故で記憶を失った真樹。 恋人である律は一番傍にいながらも自分が恋人だと言い出せない。 そんな中、真樹が昔から好きだった女性と付き合い始め…… というお話です。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

表情筋が死んでいる

白鳩 唯斗
BL
無表情な主人公

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。 1日2話ずつ投稿します。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

処理中です...