ぼっちですが何か

青白

文字の大きさ
上 下
12 / 14

ぼっちの登校

しおりを挟む


「叔父さんっ!」

白を基調とした病室
若菜に叔父さんと呼ばれたその人物は、点滴をされた状態でベッドへと横たわっていた。


無意識に、手に力が入る。
けれど、若菜の切羽詰まったような様子とは裏腹に
若菜の叔父さんは、あっけらかんと笑ってみせた。


「おぉ、律。また、来たのか。」

「来るに決まってるじゃん!僕が連絡聞いて、どれだけ………っ!」

「悪かったって。今日は、調子がいいと思ってたんだけど。どうしてもな。」

若菜を慰めるように若菜の叔父さんは頭を撫でた。すると、俺に気づいたのか、一瞬、驚いたような表情をした後、手をこまねくように俺を呼び寄せる。

「律の友達か?」

「………ぇ。ぁ、いや。俺は、」

「友達だよ。音くんって言うんだ。」

〝ともだち〟?

アレ、友達って何だっけ。
確かなんか友達って、一緒に昼飯とか食べたり、くだらない話したり、授業サボったりする…………アレ、か?


いやいやいや。
違う違う。


若菜は違うこと言ってるんだよ。
まさか、友達なんて言うわけ…………。

「名前は、音くんって言って。ギターの弦を直してくれて僕の、友達!」

やっぱり、友達って言ってる?

「音くん?どうかしたの。」

「ぁ、。いや、久々に聞いた言葉にびっくりしただけ。」

「?」

「いや、何でもない。気にすんな、マジで。俺の言葉の8割は意味ないと思っていい。」

「え、わ、分かった!」

俺と若菜のその様子を見ていた若菜の叔父さんが、俺と若菜を見て肩を震わせて笑い出した。

「ぷはっ。何だ、お前ら全然、噛み合ってないな。ははっ!」

「そんなことないよ!ね、音くんっ!!だって!音くん運命感じるとか言ってたし。ね!」

「運命?」

若菜と若菜の叔父さんが俺へと視線を向けてきて、緊張するやら自分の言った言葉を再度、聞かされるとイタイ言葉だったと気付かされるやらで顔を覆いながら答える。

「やめて、お願いします。あれは、その場の何か空気というか、本当やめて。」

「ぇ、や、僕、感動したよ!運命とか何かカッコいいし!」

「本当に、やめ」

悪気のない若菜の言葉にメンタルをズタボロにしていくのを感じて、ついに蹲った瞬間、ふと視界に入ってきた白い楽譜に身体が真っ先に反応する。

「あ。そうだ。律。売店でいつものやつ買ってきてくれよ。」

「分かった!音くん、すぐに戻ってくるからね。」

小銭の音だろうかチャリンと音を立てて
若菜が病室から出て行く足音が響く。

「具合悪いのか?」

「いえ、大丈夫、です。音楽………やってるんですね。」

大きく深呼吸をして立ち上がりながら告げる。


「まぁ、暫く、弾けてないけどな。君も、音楽やってるだろ。」

「いや、俺は______。」


〝音楽は、やったこともない〟


今まで何度となくするりと出てきた言葉がうまく音にならない。


喉に言葉が張り付く。


だって、多分、俺の目の前にいる人は
音楽を続けたいのにそれが叶わない人だから。


若菜の叔父さんの痩せ細った手首を見てしまえば
否応なしに理解できた。


「俺は______もう、」

目の前の人には嘘はつけない。
それは、心苦しい。


「音楽は____________やめました。」





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

眠るライオン起こすことなかれ

鶴機 亀輔
BL
アンチ王道たちが痛い目(?)に合います。 ケンカ両成敗! 平凡風紀副委員長×天然生徒会補佐 前提の天然総受け

BL学園の姫になってしまいました!

内田ぴえろ
BL
人里離れた場所にある全寮制の男子校、私立百華咲学園。 その学園で、姫として生徒から持て囃されているのは、高等部の2年生である白川 雪月(しらかわ ゆづき)。 彼は、前世の記憶を持つ転生者で、前世ではオタクで腐女子だった。 何の因果か、男に生まれ変わって男子校に入学してしまい、同じ転生者&前世の魂の双子であり、今世では黒騎士と呼ばれている、黒瀬 凪(くろせ なぎ)と共に学園生活を送ることに。 歓喜に震えながらも姫としての体裁を守るために腐っていることを隠しつつ、今世で出来たリアルの推しに貢ぐことをやめない、波乱万丈なオタ活BL学園ライフが今始まる!

女装趣味がバレてイケメン優等生のオモチャになりました

都茉莉
BL
仁科幸成15歳、趣味−−女装。 うっかり女装バレし、クラスメイト・宮下秀次に脅されて、オモチャと称され振り回される日々が始まった。

私立明進学園

おまめ
BL
私立明進学園(メイシン)。 そこは初等部から大学部まで存在し 中等部と高等部は全寮制なひとつの学園都市。 そんな世間とは少し隔絶された学園の中の 姿を見守る短編小説。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 学園での彼らの恋愛を短編で描きます! 王道学園設定に近いけど 生徒たち、特に生徒会は王道生徒会とは離れてる人もいます 平和が好きなので転校生も良い子で書きたいと思ってます 1組目¦副会長×可愛いふわふわ男子 2組目¦構想中…

たとえ性別が変わっても

てと
BL
ある日。親友の性別が変わって──。 ※TS要素を含むBL作品です。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

ボクに構わないで

睡蓮
BL
病み気味の美少年、水無月真白は伯父が運営している全寮制の男子校に転入した。 あまり目立ちたくないという気持ちとは裏腹に、どんどん問題に巻き込まれてしまう。 でも、楽しかった。今までにないほどに… あいつが来るまでは… -------------------------------------------------------------------------------------- 1個目と同じく非王道学園ものです。 初心者なので結構おかしくなってしまうと思いますが…暖かく見守ってくれると嬉しいです。

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

処理中です...