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部屋に帰って⑵、
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彼にメッセージを送った後に、晩飯は食べて帰ることにした。
一人で時々行くラーメン屋に入り、いつも通りの注文をし、さっさと食べて帰ろうと、あまり周りを見ずに、スマホをいじっていた。
だから、あいつが居ることに気が付かなかった。
「よう、久しぶり」
声をかけられて振り向くと、高校の同級生だった、安自賂(あじろ)に声をかけられた。
会いたくなかった。高校の時の奴らなんかに。
こっちはそう思っていても、向こうは、何でもないように、話しかけてくる。
「久しぶりだな、元気か?」
眉をしかめてしまいたくなる。僕は話したくもないのに。
仕方がない……。
「久しぶり、なんとかやってる」
表情に出さないように、できるだけ普通に話をする。
「隣いいか?」
いやだ……。本当は。
「いいけど」
そうして、横の椅子に座った安自賂は、一方的に話を始めた。
「お前、今暇してるか?」
「どうして?」
「いや、今度パーティと言うか、婚活パーティがあるんだ、それに人を集めなきゃならなくて」
「……」
「もし、暇なら、出てくれないか?」
どうして、僕がそんなものに行かなくちゃならないんだ。そんな考えが浮かぶが、続けて話がある。
「人数合わせなんだよ、できるだけアルファがいいって、言われてて」
めんどくさい。断わろう。
「悪いけど、婚活なんて興味ないから」
「そう言わずに!、頼む!」
嫌だ。僕はアルファじゃない。
「どうしても、あと二人は呼ばなくちゃならないんだ」
「なんで?」
「……言われてんだよ」
「誰に」
「…俺の上司?」
上司がそんな事を言うのか?、疑いしかない。
「上司って、会社の?」
とりあえず聞いてみる。
「うん、まあ、そんなもん」
怪し過ぎる。
「本当にそうなのか?」
強めに聞きなおす。
「そうだって」
関わりたくない。嫌な感じがする。
「すまないけど……」
「頼むから!」
あまりにも、必死過ぎて、断りにくくなってきた。
「そうだ!、バイト代出すから」
「そういう問題じゃ…」
「頼む、人数合わせだから、どうしても」
押しの強さで、だんだん押し切られてきた。
断るのも、難しそうだ……。
仕方がない。
「本当に人数合わせだな」
「来てくれるのか!!」
「これだけは言っておくが、僕は誰かと付き合いたいと思ってないから」
「大丈夫、大丈夫、そんなもん個人の問題で、誰がどうしようと大丈夫だから」
「本当に助かった!」
笑顔で言われても、うれしくない……。
話している間に、ラーメンがきて少し冷めてしまった。そのまま食べてもう帰ろうとした時に、安自賂の話が続いた。
「そうだ!、先に渡しておくよ」
「何を?」
安自賂は、持っていた財布から一万円札をだした。
「バイト代」
「はあ?」
「来てくれるからな」
「けど、一万円って」
「言うの忘れてた、別にドレスコードなんてないけど、一応スーツで頼む」
「……わかった」
「じゃあな、また連絡する」
諦めて、連絡先の交換をしたから、また電話でもあるだろう。
笑顔で帰っていく安自賂を見送った。
せっかく、水澄さんからのメッセージがあったのに。
彼との、つながりを切れないようにしているのに、こんな事になるなんて。
朝、別れたばかりなのに、もう彼に会いたい。
気分が悪くなりそうだ。たぶんろくな事にならないと思う。
気が重い……。
一人で時々行くラーメン屋に入り、いつも通りの注文をし、さっさと食べて帰ろうと、あまり周りを見ずに、スマホをいじっていた。
だから、あいつが居ることに気が付かなかった。
「よう、久しぶり」
声をかけられて振り向くと、高校の同級生だった、安自賂(あじろ)に声をかけられた。
会いたくなかった。高校の時の奴らなんかに。
こっちはそう思っていても、向こうは、何でもないように、話しかけてくる。
「久しぶりだな、元気か?」
眉をしかめてしまいたくなる。僕は話したくもないのに。
仕方がない……。
「久しぶり、なんとかやってる」
表情に出さないように、できるだけ普通に話をする。
「隣いいか?」
いやだ……。本当は。
「いいけど」
そうして、横の椅子に座った安自賂は、一方的に話を始めた。
「お前、今暇してるか?」
「どうして?」
「いや、今度パーティと言うか、婚活パーティがあるんだ、それに人を集めなきゃならなくて」
「……」
「もし、暇なら、出てくれないか?」
どうして、僕がそんなものに行かなくちゃならないんだ。そんな考えが浮かぶが、続けて話がある。
「人数合わせなんだよ、できるだけアルファがいいって、言われてて」
めんどくさい。断わろう。
「悪いけど、婚活なんて興味ないから」
「そう言わずに!、頼む!」
嫌だ。僕はアルファじゃない。
「どうしても、あと二人は呼ばなくちゃならないんだ」
「なんで?」
「……言われてんだよ」
「誰に」
「…俺の上司?」
上司がそんな事を言うのか?、疑いしかない。
「上司って、会社の?」
とりあえず聞いてみる。
「うん、まあ、そんなもん」
怪し過ぎる。
「本当にそうなのか?」
強めに聞きなおす。
「そうだって」
関わりたくない。嫌な感じがする。
「すまないけど……」
「頼むから!」
あまりにも、必死過ぎて、断りにくくなってきた。
「そうだ!、バイト代出すから」
「そういう問題じゃ…」
「頼む、人数合わせだから、どうしても」
押しの強さで、だんだん押し切られてきた。
断るのも、難しそうだ……。
仕方がない。
「本当に人数合わせだな」
「来てくれるのか!!」
「これだけは言っておくが、僕は誰かと付き合いたいと思ってないから」
「大丈夫、大丈夫、そんなもん個人の問題で、誰がどうしようと大丈夫だから」
「本当に助かった!」
笑顔で言われても、うれしくない……。
話している間に、ラーメンがきて少し冷めてしまった。そのまま食べてもう帰ろうとした時に、安自賂の話が続いた。
「そうだ!、先に渡しておくよ」
「何を?」
安自賂は、持っていた財布から一万円札をだした。
「バイト代」
「はあ?」
「来てくれるからな」
「けど、一万円って」
「言うの忘れてた、別にドレスコードなんてないけど、一応スーツで頼む」
「……わかった」
「じゃあな、また連絡する」
諦めて、連絡先の交換をしたから、また電話でもあるだろう。
笑顔で帰っていく安自賂を見送った。
せっかく、水澄さんからのメッセージがあったのに。
彼との、つながりを切れないようにしているのに、こんな事になるなんて。
朝、別れたばかりなのに、もう彼に会いたい。
気分が悪くなりそうだ。たぶんろくな事にならないと思う。
気が重い……。
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