エリートなΩと心の折れたα ~疲れたオメガとやさぐれたアルファ

河まきじ

文字の大きさ
上 下
61 / 67

一日終わり⑵。

しおりを挟む
 やっと帰ってきた……。
 たった一日なのに、すごく働いた感がする…。

 朝あったことが、嘘のように思えてしまう。


 部屋に戻って、一人になった。

 誰もいない部屋にポツンと座り、ぼ~とする。
 たった五日間だったのに、その前まで、一人でいたのに。

 あまりにも、濃い時間だったから、
 一人の時間に、ぼんやりしてしまう。
 そういえば、言われてた洗濯もしないと。
 明日でもいいか…。

 何をするでもなくボケていた。そして、いきなり電話が掛かってきた。

『星也?』
『母さん』
『良かった、今回もなんとかなった?』
『うん、あっ、買い物ありがとう助かった、それに連絡忘れててごめん』

『それはいいけど体は?、悪くしてない?』
『心配かけてごめん、だいたいいつも通りだったから、もう大丈夫』

『あんたも自分のこと考えたら?』
『またその話?』
『だって、何かあったら助けてもらえるじゃない!』
『そんなことないよ、一人でも大丈夫だから』
『でも、ずっと一人でいるのは…』

『もういいって、その話ばっかりなら、切るよ』
『ちゃんと考えなさい、何かあってからじゃ、困るのは自分なのよ』
『色々ありがとう、それじゃまた連絡する』

 また話が振り出しに戻ってきた。
 心配してくれるのはわかるけど、まだそういうことを考えたくない。

 母さんには言わなかったが、今回だけは渡辺さんが居てくれて、本当に助かった。

 あんな時に、助けてくれるのは本当にありがたいことなのに。
 今回は身に染みてわかった。

 一人でいるのも限界があると。でもどうすればいいんだろう……。

 わからないまま、何かを考えるわけでもなく、ぼんやりしていた。


 気が付けば、けっこう時間が経っていた。
 さすがに腹が減ってきた。冷蔵庫に何か有るかと、開けてみたらラップに包んだおにぎりが二個あった。

「渡辺さん、隙がないな…」
 ちょっと笑ってしまう。
 朝の残りのご飯が、ラップに包まれて、おにぎりになっていた。

 ありがたく食べることにして、レンジでおにぎりを温め直した。
 あとはインスタントの味噌汁を作っただけ。

 それだけなのに、温かい気持ちでおにぎりを食べ始めた。

 食べながら、スマホをみていて、さっき渡辺さんからきた画像を、もう一度見ていた。

 そして、その画像を消さないように
ちゃんと保存した。




 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

想いの名残は淡雪に溶けて

叶けい
BL
大阪から東京本社の営業部に異動になって三年目になる佐伯怜二。付き合っていたはずの"カレシ"は音信不通、なのに職場に溢れるのは幸せなカップルの話ばかり。 そんな時、入社時から面倒を見ている新人の三浦匠海に、ふとしたきっかけでご飯を作ってあげるように。発言も行動も何もかも直球な匠海に振り回されるうち、望みなんて無いのに芽生えた恋心。…もう、傷つきたくなんかないのに。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

忘れ物

うりぼう
BL
記憶喪失もの 事故で記憶を失った真樹。 恋人である律は一番傍にいながらも自分が恋人だと言い出せない。 そんな中、真樹が昔から好きだった女性と付き合い始め…… というお話です。

ひとりのはつじょうき

綿天モグ
BL
16歳の咲夜は初めての発情期を3ヶ月前に迎えたばかり。 学校から大好きな番の伸弥の住む家に帰って来ると、待っていたのは「出張に行く」とのメモ。 2回目の発情期がもうすぐ始まっちゃう!体が火照りだしたのに、一人でどうしろっていうの?!

別に、好きじゃなかった。

15
BL
好きな人が出来た。 そう先程まで恋人だった男に告げられる。 でも、でもさ。 notハピエン 短い話です。 ※pixiv様から転載してます。

胸に宿るは蜘蛛の糸

itti(イッチ)
BL
小学生の頃、ふと目にした父と叔父との表情が、晴樹の頭の片隅にはずっと残っていた。が、それは記憶の片隅に追いやられて、歳を重ねるごとに忘れていってしまう。高校生になって、同性の友人から告白されて、昔の記憶は少しづつ剥がされていく。 しかし、剥がれる度に自分の気持ちが溢れ出し、それは全てを壊してしまう程のものとなり、ひとりでは抱えきれなくなった。晴樹に救いの手を差し伸べてくれるのは..........

処理中です...