エリートなΩと心の折れたα ~疲れたオメガとやさぐれたアルファ

河まきじ

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出勤前に。、⑶

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 この休暇中に、散々ご迷惑をかけて、色々お世話された。

 この歳になってからだと、親より世話されたかも……。


 出勤まで、また少し時間がある…。
 だけど、もうすぐ出勤する。それに合わせて、渡辺さんも帰ることになっている。

 当たり前だが、渡辺さんだって住んでいる部屋がある。
 今回、俺のとばっちりで、こんなことになってしまったのだから、帰ってしなければならないことだってある。

 だから、俺の出勤と同じに、部屋から出ることにした。 
 その方がいいだろうと、俺も思うから。

「あと、洗濯のことですが、」
 言われて、あわてて意識を向けた。

「はい!」
「まだ、洗濯する分が残っているんですよ、それどうします?」

 自分が帰ってからしよう、それぐらいは当たり前だし。
 というか干すのめんどくさいから、
 洗ったら、乾かしに行こうっと…。

「自分でやっておきます」
 それだけ言っておく。
「わかりました」

 なんだかんだと、俺の部屋に長居することになった、渡辺さんも少しの荷物ができている。
 下着類やちょっとしたものを、それらを俺の使っていなかったバッグがあったから、それを渡して一旦持ち帰るようにしたみたいだ。

 五日間というのは、長い時間でもない。
 だからと言って、短いとも言えない。

 なんとなく、自分にすき間が少し空いたような気がした。
 たぶん、気のせいだと思う。

 そろそろ出ないと、間に合わなくなる。

「すいません、そろそろ出ますけど」
 そう声をかけた。

「わかりました、ちょっと待ってください」
 渡辺さんは、荷物を片付けて立ち上がった。

「おまたせしました、行きましょう」
「はい」

 部屋に鍵をかけて、通りの方へ歩いて行く。
 もう一度、挨拶をした。

「本当に、色々とご迷惑をお掛けしました、でも俺としては本当に助かりました、あのまま一人でいたら、どうなっていたかわかりませんので」

 少し間があって、渡辺さんが答えてくれた。
「謝らなくてかまいません、僕も居たいと思っていたのですから」

「でも…」
「…やめましょう、どうしょうもなかった、それを僕が助けた、それだけです」

「……」
「だから、謝るのは違うと…」
「これだけは言わせてください」
「?」
「本当に助かったんです、あのまま一人で、どうすることもできなかった
 それを助けてもらったんです」

「……」
「ありがとうございました…それに…色々世話してもらいました…」

「僕が悪いのだから」
「ありがとうございます」
 それ以上、言葉が出ない。

 もうすぐ、コンビニが見えてくる。そこで別れて、俺は会社に出勤する。


「それじゃあ」
「水澄さん、気を付けて!」
 何にとも思わなかったけど。

 お互い別れて、自分のゆく道を歩いて行った。

 しばらくして、
「水澄さん!、また連絡します!」
 少し離れた場所から、渡辺さんにそう言われた。

「わかりました!」
 そう返事をして、手を振った。


 また会えると思うから。








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