エリートなΩと心の折れたα ~疲れたオメガとやさぐれたアルファ

河まきじ

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夜は長く。、⑴

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 また寝てしまった。気がつけば、9時過ぎだ。そんなに疲れてたのだろうか。
 確かに今回はキツかったけど。いろんな意味で……。

「起きました?」
「···すいません、また、寝てたようで···」
「それはかまいませんけど、今度は
 何か食べられそうですか?」

「ありがとうございます……」
 なんかこんなのばっかりだ。

「準備してもらってありがたいのですが、シャワー浴びたいので、後からでもいいですか?」
「そうですね、寝ている時に少しは、拭いたりしたのですが、ちゃんとお風呂に入った方がいいですね」

「……えっと、…拭いてくれたりしたんですか?」
「そうですよ」
 ······あっさり返された。だよな。起きた時、体が全然ベタついてなかったし···。

「色々すみません······」
 謝ることばっかりだ……。

「そんなことより、シャワー浴びてすっきりしたら、何か食べるようにしましょう、普通に食べられそうですか?」
「わかりません···」

 気分はほんの少しいいが、胃腸の具合は微妙だ。
「なら、おじやみたいなのにしましょうか?」
「···お願いします」
 それしか言えなかった。

 シャワーを浴びるのに、風呂場に行き、思いついたけど、渡辺さんはお風呂を使ってくれたのだろうか?
 自分ばかり、色々と世話を焼いてもらっているから、心配になってきた。
 めんどくさい。聞いてしまえ。

 部屋の方に声をかけ、聞いてみた。
「渡辺さん、シャワー使ってくれました?」
「すいません、勝手とは思ったんですが、使わせていただきました」
「よかった、色々してもらっているのに、そのままだったら、どうしようと思って」

 安心した。自分だけ身綺麗にしてるんじゃなくて。

 また、風呂場に戻って服を脱ぎ、中へ入るとなんとなく片づいていた。

「またか···」
 さっき、流しを見ても片づいていた。ありがたいけど、なんか情けない···。
 掃除しようと思っても、忙しいとつい後回しにしてしまう。
 家事力がない···。
 だって仕事も忙しかったし、このところ、ストレス大量でやる気さえなくなってたし···。

「とりあえず、風呂入ろう……」
 あきらめて、シャワーを浴びた。

「いたっ!!」
 肩口の辺りに、お湯がかかるとピリピリする。鏡でよく見ると赤くなって少し擦り傷が できている。
 しかも、ひとつじゃない…。左右の首筋辺りに二つと、肩口にも二つ。
 なんでできたかなんて、聞くまでもない……。

 ちょっとずつ、何ヵ所かの、擦り傷に当たらないように、撫でるように体を洗い流した。そういえば、傷薬がどっかにあったから、後で塗ろう。

 ……………まて、
 今ごろ、とんでもない爆弾が……。

「!!項!!」
 急に、体から何か落ちたような寒気がして、自分の項を手でさわった。

「……よかった~」
 まったく何もない。ちからが抜けて、浴槽の縁に座り込む。

 安心と、同時にふと思うことは、彼はベータなのか?、と言うことだ。

 それはそれで、いいのだけれど、要するに、自分の体には、相手さえいれば誰でもよかったのかと、気がついた。
 やっぱりオメガの体は、そうなっているのか……。わかってはいるが、落ち込んでしまう。

「やっと発情期が終わって、少しは気分も上向いていたのに」

 情けない自分の体に、また落ち込むばかりだ。









 
 読んでくださる方々。本当にありがとうございます。
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