エリートなΩと心の折れたα ~疲れたオメガとやさぐれたアルファ

河まきじ

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もう1人のバース検査、過去⑶、

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 いつの間にか半年がたち、また検査の日がやってきた。病院での検査も、三回目ともなれば慣れてしまう。
 だけど、検査結果には慣れることはない。

「どうだったんですか?」
 ストレートに聞いてみた。
「そうですね、やはり変わったことはないですね、また一年後くらいかな」
「なにを」
「検査ですよ、小さなお子さんでもないから、そのまま言いますが、たぶん18?、20才頃までは、一年に1回きてもらうようになります」

「···なんで?」
「ホルモンいや、フェロモン値ですよ、完全に安定するのはそのくらいの歳ですから」
「じゃあそれまで、二次性はわからない?
 」
「いえ、現時点でアルファと診断してます、ですのでアルファで問題ないです」

「けどまた変わったら!」
「たぶん、大丈夫かと」
 病院の先生からの弱めの確定。しかも、たぶんでしかない。
「また、来年と言うことで」
 突き放すように、来年の予定を言われて家に帰った。

「お帰り、検査どうだった?」
「あのさ……、たぶんアルファだって」
「嘘っ……」
「本当に!」
「あの、けど、」
「よかったわね!、それじゃ高校でも大丈夫じゃない!」
「待ってよ、まだ続きが」
「やったわね~、みんなに言わないと」
「待って、まだ話が」
「ちょっと電話してくる」

 母は、大喜びで電話しようしている。
「待って、話聞いて、また来年検査があるって」
「どうして?」
「前に言われた通り、フェロモン値のバランスが悪いからだって」
「だけど、せっかく」

「お願いだから」
「ええ~」
「どうしても」
「わかったわよ」
 ぶちぶち言って、母は台所へいった。

 なんとか母を押さえて、自分も部屋に行った。卒業まであと少し、高校はだいたい決まってるし、静かにしていればいつもと変わりない。

 高校に入ってからは、別に変わったことはないはずだった。

「渡辺くん」
「なに?」
「渡辺くんて、アルファなの?」
 いきなり聞かれた。

「違うけど」
 自分も、さらっと言えるようになっていた。
「え~だって、勉強も出来るし、カッコいいじゃん」
「だからって、アルファだとは限らないし」
「そ~かな」
「じゃあね」
 返事をするのもいやになった。誰にもしゃべってないのに、そんな噂が出始めた。

 たぶん僕は、ベータで間違いない。またもとにもどるから。

 高校になってまた検査を受けたら、きっとまた元どおりだ。
 こんな宙ぶらりんのままで、アルファなんてそんなはずない。



 ………あの時から、二次性にさんざん振り回された。今でも、自分の状況は微妙で、絶対にそうだと言える材料は少ない。

 それでも、どちらかと言えばのまま、
 今では、たぶんそうだと思えるくらいだ。


 自分に間違いはないと、自信を持っている本当のアルファには、かなり遠い。
 だけど、ベータかと言えば、それを何かが否定してくる。

 どっちつかずのまま。





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