エリートなΩと心の折れたα ~疲れたオメガとやさぐれたアルファ

河まきじ

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もう1人のバース検査、過去⑴、

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 だいたい検査が始まるのは、14才あたりからだ。中学生の立志式があり、それが終わったあとに個々で検査を受けて、高校入学ぐらいに、ほとんどの奴は二次性がわかっている。
 ほとんど親から受け継ぐものであり、これといって、変わるものではない。
 アルファはアルファ。
 オメガは親が、そうであり、それを受け継ぐ。それ以上ではない。

 ベータの両親からは、ベータが生まれるはずだった。

「一太」
「なに?」
「検査結果でた?」
「いや、またいってない」
「なんで?」
「中学卒業までで、いいかなって」
「早いほうがいいじゃん」
「だけどさあ~、行くのめんどくさいし」
「そうか?、早くわかったら安心するじゃん」
「そうかなぁ」

 どのみち見た目も成績も、抜きん出ているほどでもない。どちらかと言えば、成績は上位の方だと言えるくらいだ。
 本当のアルファなら、容貌も頭脳もトップクラスで、誰からも一目置かれるほどだ。
 だから、自分は普通に生きていくのだと、大多数のベータとして当たり前に生活していくと、あの時は思っていた。

 バースなんて関係ない。そう思った。


「一太」
「なに?」
「来週、病院予約したからいくわよ」
「悪いとこないけど」
「アホなの、バース検査に決まってるでしょう」
「え~、三年になってからでいいって、いった」
「早くわかって、進路決めないと」
「だってさあ~」
「一応、わかってないとダメでしょう」
「わかったよ、行けばいいんだろ」
「わかればよろしい」
 そうして、予約した病院に行くことになった。

 今週の土曜日だった。


「渡辺さん~」
「はい」
 呼ばれたので、返事をして診察室へ入った。
「今日保護者のかたは、きていますか?」
「はい、母がきていますけど」
「じゃ、呼んでもらえる?」
「わかりました」
 診察室から、母を呼んだ。

「きて欲しいって」
「なに?」
「わかんない」
 とりあえず、母といっしょに診察室に入り直した。

「すいませんお呼びして」
「なにか、大変なことでも?」
 すぐに終わると思っていたのに、呼ばれて気にしてるようだ。

「今の簡易検査ですけど、たぶんなんですがベータかと」
「それの何かが問題ですか?」
 ベータなら問題なんてまったくないはずなのに。


「ホルモン値が少し足りないので、今はベータと言うことです」
「今はと言うのは?」
「現時点で、と言うことです」

「まだ14才ですし、これで確定とはいいがたく、よろしければまた一年経ってから、検査を受け直してください」
「そうですか·····」
「·······」

 親と二人で妙な雰囲気のまま、家に帰ることになった。
「たぶん、大丈夫だよ」
「そうよ」
「一年たったら、確実だって」
「そうね」

 今は、そう思って帰っていった。
 だって大丈夫だと、思うから。
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