エリートなΩと心の折れたα ~疲れたオメガとやさぐれたアルファ

河まきじ

文字の大きさ
上 下
21 / 67

バース検査。過去⑸

しおりを挟む
 どうしようもない。
 動かせない事実がでた。オメガだ。わかってた。でも、けど、ひょっとしたらと、少しの希望もあった。でももう、わかってしまった。


「病院から、電話あった?」
 親から、聞かれた。
「あったよ」
 もう隠しても、しかたがない。

「オメガだって」
「……そっかしかたがないね」
「いやじゃないの?」
「別にあんたが、変わるわけじゃないからね」
「そっか」
「できること、したらいいと思う」
「あるかな」
「探せば、あるんじゃない?」
「そうだね」
 できることか、そんなこと考えてなかった。

「明日、病院いっしょに行ってくれる?」
「わかったわ」
 親の普通の対応が、本当にありがたかった。


 病院では、これからの生活についてだった。抑制剤の使いかた、発情期の注意点、突発的発情について。

「抑制剤も大量に飲めば、大変なことなりますから。今まで、発情期のような事はありませんでしたか?」
「ありませんでした」
(だからこそ、今まで延ばしてたんだけど)
「う~ん、発情期の症状と言っても、よく思いうかぶものではなく、そうですね、例えば、何ヵ月に一回の割合で熱がでたり、気分が悪くなったり、疲れやすくて、寝込んだりですが、心あたりはないですか?」

「わかりません」
「そう?、あんたたまにあるわよ」
「そうだっけ」
「親から見れば、風邪を引いたにしては、定期的にきてるから、気にはしてたわよ」
「そうなんだ」
「心づもりには、なったけどね」
「………」
「こちらから言えば、そのあたりが発情期の前段階のようなものだと思います」
「他に、まだありますか」
 聞けることは、聞いておきたかった。

 あの後色々聞いても、対処としてできる事は、抑制剤とその場所から逃げるくらい。結局、自分でなんとかするしかない。それだけだった。


「また、嫌なこと思いだした………」
 もうやめた。明日は仕事だ。今考えても何もできない、昔あったことなのだから。
 早く寝て、仕事に行かないと。

 そういえば、新谷には何も言うことはなかった。あいつは急に転校してしまった。
 くわしくわからなかったが、家の都合らしく、連絡もつかないままになっていた。
 それで、よかったと思う。
 言いたくなかったから。
     
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

想いの名残は淡雪に溶けて

叶けい
BL
大阪から東京本社の営業部に異動になって三年目になる佐伯怜二。付き合っていたはずの"カレシ"は音信不通、なのに職場に溢れるのは幸せなカップルの話ばかり。 そんな時、入社時から面倒を見ている新人の三浦匠海に、ふとしたきっかけでご飯を作ってあげるように。発言も行動も何もかも直球な匠海に振り回されるうち、望みなんて無いのに芽生えた恋心。…もう、傷つきたくなんかないのに。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

忘れ物

うりぼう
BL
記憶喪失もの 事故で記憶を失った真樹。 恋人である律は一番傍にいながらも自分が恋人だと言い出せない。 そんな中、真樹が昔から好きだった女性と付き合い始め…… というお話です。

ひとりのはつじょうき

綿天モグ
BL
16歳の咲夜は初めての発情期を3ヶ月前に迎えたばかり。 学校から大好きな番の伸弥の住む家に帰って来ると、待っていたのは「出張に行く」とのメモ。 2回目の発情期がもうすぐ始まっちゃう!体が火照りだしたのに、一人でどうしろっていうの?!

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

別に、好きじゃなかった。

15
BL
好きな人が出来た。 そう先程まで恋人だった男に告げられる。 でも、でもさ。 notハピエン 短い話です。 ※pixiv様から転載してます。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

離したくない、離して欲しくない

mahiro
BL
自宅と家の往復を繰り返していた所に飲み会の誘いが入った。 久しぶりに友達や学生の頃の先輩方とも会いたかったが、その日も仕事が夜中まで入っていたため断った。 そんなある日、社内で女性社員が芸能人が来ると話しているのを耳にした。 テレビなんて観ていないからどうせ名前を聞いたところで誰か分からないだろ、と思いあまり気にしなかった。 翌日の夜、外での仕事を終えて社内に戻って来るといつものように誰もいなかった。 そんな所に『すみません』と言う声が聞こえた。

処理中です...