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バース検査。過去⑸
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どうしようもない。
動かせない事実がでた。オメガだ。わかってた。でも、けど、ひょっとしたらと、少しの希望もあった。でももう、わかってしまった。
「病院から、電話あった?」
親から、聞かれた。
「あったよ」
もう隠しても、しかたがない。
「オメガだって」
「……そっかしかたがないね」
「いやじゃないの?」
「別にあんたが、変わるわけじゃないからね」
「そっか」
「できること、したらいいと思う」
「あるかな」
「探せば、あるんじゃない?」
「そうだね」
できることか、そんなこと考えてなかった。
「明日、病院いっしょに行ってくれる?」
「わかったわ」
親の普通の対応が、本当にありがたかった。
病院では、これからの生活についてだった。抑制剤の使いかた、発情期の注意点、突発的発情について。
「抑制剤も大量に飲めば、大変なことなりますから。今まで、発情期のような事はありませんでしたか?」
「ありませんでした」
(だからこそ、今まで延ばしてたんだけど)
「う~ん、発情期の症状と言っても、よく思いうかぶものではなく、そうですね、例えば、何ヵ月に一回の割合で熱がでたり、気分が悪くなったり、疲れやすくて、寝込んだりですが、心あたりはないですか?」
「わかりません」
「そう?、あんたたまにあるわよ」
「そうだっけ」
「親から見れば、風邪を引いたにしては、定期的にきてるから、気にはしてたわよ」
「そうなんだ」
「心づもりには、なったけどね」
「………」
「こちらから言えば、そのあたりが発情期の前段階のようなものだと思います」
「他に、まだありますか」
聞けることは、聞いておきたかった。
あの後色々聞いても、対処としてできる事は、抑制剤とその場所から逃げるくらい。結局、自分でなんとかするしかない。それだけだった。
「また、嫌なこと思いだした………」
もうやめた。明日は仕事だ。今考えても何もできない、昔あったことなのだから。
早く寝て、仕事に行かないと。
そういえば、新谷には何も言うことはなかった。あいつは急に転校してしまった。
くわしくわからなかったが、家の都合らしく、連絡もつかないままになっていた。
それで、よかったと思う。
言いたくなかったから。
動かせない事実がでた。オメガだ。わかってた。でも、けど、ひょっとしたらと、少しの希望もあった。でももう、わかってしまった。
「病院から、電話あった?」
親から、聞かれた。
「あったよ」
もう隠しても、しかたがない。
「オメガだって」
「……そっかしかたがないね」
「いやじゃないの?」
「別にあんたが、変わるわけじゃないからね」
「そっか」
「できること、したらいいと思う」
「あるかな」
「探せば、あるんじゃない?」
「そうだね」
できることか、そんなこと考えてなかった。
「明日、病院いっしょに行ってくれる?」
「わかったわ」
親の普通の対応が、本当にありがたかった。
病院では、これからの生活についてだった。抑制剤の使いかた、発情期の注意点、突発的発情について。
「抑制剤も大量に飲めば、大変なことなりますから。今まで、発情期のような事はありませんでしたか?」
「ありませんでした」
(だからこそ、今まで延ばしてたんだけど)
「う~ん、発情期の症状と言っても、よく思いうかぶものではなく、そうですね、例えば、何ヵ月に一回の割合で熱がでたり、気分が悪くなったり、疲れやすくて、寝込んだりですが、心あたりはないですか?」
「わかりません」
「そう?、あんたたまにあるわよ」
「そうだっけ」
「親から見れば、風邪を引いたにしては、定期的にきてるから、気にはしてたわよ」
「そうなんだ」
「心づもりには、なったけどね」
「………」
「こちらから言えば、そのあたりが発情期の前段階のようなものだと思います」
「他に、まだありますか」
聞けることは、聞いておきたかった。
あの後色々聞いても、対処としてできる事は、抑制剤とその場所から逃げるくらい。結局、自分でなんとかするしかない。それだけだった。
「また、嫌なこと思いだした………」
もうやめた。明日は仕事だ。今考えても何もできない、昔あったことなのだから。
早く寝て、仕事に行かないと。
そういえば、新谷には何も言うことはなかった。あいつは急に転校してしまった。
くわしくわからなかったが、家の都合らしく、連絡もつかないままになっていた。
それで、よかったと思う。
言いたくなかったから。
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