エリートなΩと心の折れたα ~疲れたオメガとやさぐれたアルファ

もくもくと仕事、

　朝、少し早く部屋を出て移動がてら、電話をする。何回かの呼び出し音のあと、相手が出た。

「おはようございます、事務の方でしょうか？」
「はい、会社からそちらに確認の上、業務を行いたいと思いまして。」
「わかりました、そちらに一度行ってから始めたいと思います」

　  昨日聞いた通りらしく、植え込みの剪定のようだ。ただし、一人でできるのか？ということなのだが。とりあえず、事務局へ向かう。

「おはようございます、先ほど電話しました渡辺と言います」
受け付けに行って挨拶をする。

「少しお待ち下さい」
  と言われたが、すぐに来てくれた。

「おはようございます、急に無理を言ってすいません」
　話を聞けば、いつもの剪定作業をしている者の方が急にこられなくなったとか。
   理由を聞くこともなく、作業手順と道具の場所を聞き、その場所に向かった。内容は、ベンチ近くにある木に毛虫が大量にでたとかで、枝を切り落として欲しい、苦情があって、とりあえず枝さえ落とせば一時しのぎには、なるからと。

「わかりました、では作業に向かいます」
　言われた通りに、道具を置いてある場所に行き、仕事を始める準備をし、そのベンチがある場所へ向かった。

　  そのベンチは、通りから少し外れた場所で、あまり使っている様子もなかった。少し薄汚れた
　ベンチだった。

（使ってないのに、苦情か）
　  見たところ、座ったら服が汚れるんじゃないかと思うようなベンチなのに。仕事は仕事なので、持ってきた脚立を樹に立て掛けて、先に小さな枝から、順番に切り落としていく。
　思ってたより、時間もかからずにすむと、安堵の気持ちも持ちつつ作業を進めていく。

　時間がかからずにすむかと思えば、そうでもなかった。一人で作業するのは、やっぱり時間がかかっていく。枝を落とした時に、バキバキと音がする。その音を何回も聞きながら、時間が過ぎていった。