7 / 7
あなたは私のものでしょう?
しおりを挟む
「余罪として追及はされなかったの?」
「ああ。立証するのが難しいし、金を引っ張ってるわけでもないしな」
「そうね、それでこちらで補償をするといっても難しいのよ」
「だからって気にするなよ。お前に責任があるわけじゃないんだ。
……しかし、あの家はどうなってるんだ。お前の従妹の言いぐさじゃないが、そろって頭おかしいんじゃないのか」
アリーチェの戻った侯爵家は内輪もめのただ中にあるという。
アリーチェに真っ向から否定されたシルヴィオとその母親は離縁を望んでいるが、それでも離縁できない事情がある。この国の法律では、高位貴族は既婚でなければ家督相続できないと定められているのだ。
家督相続のためにシルヴィオに妻を迎える。ここまでは親子三人の利害は一致している。問題はその後だ。
母親以外の女性を嫌悪しているシルヴィオには子供はまず望めない。その一方で侯爵は自分の血を伝えたいと考えている。仮に愛人に子ができても庶子では家を継ぐことは出来ない。
「だからってあれはないだろ、あれは」
ジラルドは酷くいれ損なった紅茶を飲んだような顔をした。
「侯爵夫人としてはご実家から養子を迎えるおつもりだったと思うの。遠縁とはいえ侯爵家の縁類だから」
「それじゃ乗っ取りだろ。さすがにそれは……いや、ありうるか?」
パウジーニ侯爵家は宮廷における役目を失って久しい。その上財政は傾いている。それで夫人の実家にかなりの借財があるというもっぱらの評判なのだ。
「どう転んでも泥沼ね。とにかくこちらに関わってくる余裕さえなければ良いわ。
……それよりもっと大事なことがあるから」
「大事なこと?何だ?」
ジラルドは紅茶のおかわりを頼もうとして、いつの間にか侍女が席を外していることに気付いた。
「自分で言うのは恥ずかしいけど、私、条件は悪くないと思うの」
ルフィナが空のカップに目を落としたまま、早口でまくし立てる。その白い頬が染まっている。
「皆のおかげで領地の経営状態も持ち直したし。商会もそこそこ順調よ。
社交シーズンにはいろいろお願いすることが増えると思うけど、騎士団のお仕事を続けてもらっても大丈夫だと思うの。だから」
「待て。それ以上言うな」
ジラルドが真顔で話を遮った。
「それ以上言われると、俺が条件に釣られるさもしい男みたいだろ。
……領地経営や商売は門外漢だが努力する。そっち方面はお荷物でも治安維持とか魔獣狩りなら役に立てると思う。騎士団は別に時機を見てやめてもいい」
「それじゃ今度は私がさもしい女みたいってことになるのかしら?」
くすくすとルフィナが笑うのをみてジラルドは紅茶を呷ろうとしたが、カップは空だった。ぐっと奥歯を噛みしめてから彼は勝負に出た。
「ルフィナ、俺と一緒になってくれ!」
その勝負の結果をルフィナの家族たちは心づくしの夕食で祝ってくれた。庭に大きなテーブルをいくつも出して立食形式を取ったその場に、どう話が伝わったものか領民たちが代わる代わる訪れる。酒や手料理を持ち込むものも少なからずいて、ついには陽気な歌がはじまった。
あたらしい婚約者たちは、ワイングラスを傾けながらその歌に聴き入った。
「ああ。立証するのが難しいし、金を引っ張ってるわけでもないしな」
「そうね、それでこちらで補償をするといっても難しいのよ」
「だからって気にするなよ。お前に責任があるわけじゃないんだ。
……しかし、あの家はどうなってるんだ。お前の従妹の言いぐさじゃないが、そろって頭おかしいんじゃないのか」
アリーチェの戻った侯爵家は内輪もめのただ中にあるという。
アリーチェに真っ向から否定されたシルヴィオとその母親は離縁を望んでいるが、それでも離縁できない事情がある。この国の法律では、高位貴族は既婚でなければ家督相続できないと定められているのだ。
家督相続のためにシルヴィオに妻を迎える。ここまでは親子三人の利害は一致している。問題はその後だ。
母親以外の女性を嫌悪しているシルヴィオには子供はまず望めない。その一方で侯爵は自分の血を伝えたいと考えている。仮に愛人に子ができても庶子では家を継ぐことは出来ない。
「だからってあれはないだろ、あれは」
ジラルドは酷くいれ損なった紅茶を飲んだような顔をした。
「侯爵夫人としてはご実家から養子を迎えるおつもりだったと思うの。遠縁とはいえ侯爵家の縁類だから」
「それじゃ乗っ取りだろ。さすがにそれは……いや、ありうるか?」
パウジーニ侯爵家は宮廷における役目を失って久しい。その上財政は傾いている。それで夫人の実家にかなりの借財があるというもっぱらの評判なのだ。
「どう転んでも泥沼ね。とにかくこちらに関わってくる余裕さえなければ良いわ。
……それよりもっと大事なことがあるから」
「大事なこと?何だ?」
ジラルドは紅茶のおかわりを頼もうとして、いつの間にか侍女が席を外していることに気付いた。
「自分で言うのは恥ずかしいけど、私、条件は悪くないと思うの」
ルフィナが空のカップに目を落としたまま、早口でまくし立てる。その白い頬が染まっている。
「皆のおかげで領地の経営状態も持ち直したし。商会もそこそこ順調よ。
社交シーズンにはいろいろお願いすることが増えると思うけど、騎士団のお仕事を続けてもらっても大丈夫だと思うの。だから」
「待て。それ以上言うな」
ジラルドが真顔で話を遮った。
「それ以上言われると、俺が条件に釣られるさもしい男みたいだろ。
……領地経営や商売は門外漢だが努力する。そっち方面はお荷物でも治安維持とか魔獣狩りなら役に立てると思う。騎士団は別に時機を見てやめてもいい」
「それじゃ今度は私がさもしい女みたいってことになるのかしら?」
くすくすとルフィナが笑うのをみてジラルドは紅茶を呷ろうとしたが、カップは空だった。ぐっと奥歯を噛みしめてから彼は勝負に出た。
「ルフィナ、俺と一緒になってくれ!」
その勝負の結果をルフィナの家族たちは心づくしの夕食で祝ってくれた。庭に大きなテーブルをいくつも出して立食形式を取ったその場に、どう話が伝わったものか領民たちが代わる代わる訪れる。酒や手料理を持ち込むものも少なからずいて、ついには陽気な歌がはじまった。
あたらしい婚約者たちは、ワイングラスを傾けながらその歌に聴き入った。
271
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた
黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」
幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。
貴方に私は相応しくない【完結】
迷い人
恋愛
私との将来を求める公爵令息エドウィン・フォスター。
彼は初恋の人で学園入学をきっかけに再会を果たした。
天使のような無邪気な笑みで愛を語り。
彼は私の心を踏みにじる。
私は貴方の都合の良い子にはなれません。
私は貴方に相応しい女にはなれません。
【短編】ちゃんと好きになる前に、終わっただけ
月下花音
恋愛
曖昧な関係を続けていたユウトとの恋は、彼のインスタ投稿によって一方的に終わりを告げた。
泣くのも違う。怒るのも違う。
ただ静かに消えよう。
そう決意してトーク履歴を消そうとした瞬間、指が滑った。
画面に表示されたのは、間の抜けたクマのスタンプ。
相手に気付かれた? 見られた?
「未練ある」って思われる!?
恐怖でブロックボタンを連打した夜。
カモメのフンより、失恋より、最後の誤爆が一番のトラウマになった女子大生の叫び。
私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。
愛を語れない関係【完結】
迷い人
恋愛
婚約者の魔導師ウィル・グランビルは愛すべき義妹メアリーのために、私ソフィラの全てを奪おうとした。 家族が私のために作ってくれた魔道具まで……。
そして、時が戻った。
だから、もう、何も渡すものか……そう決意した。
〖完結〗もうあなたを愛する事はありません。
藍川みいな
恋愛
愛していた旦那様が、妹と口付けをしていました…。
「……旦那様、何をしているのですか?」
その光景を見ている事が出来ず、部屋の中へと入り問いかけていた。
そして妹は、
「あら、お姉様は何か勘違いをなさってますよ? 私とは口づけしかしていません。お義兄様は他の方とはもっと凄いことをなさっています。」と…
旦那様には愛人がいて、その愛人には子供が出来たようです。しかも、旦那様は愛人の子を私達2人の子として育てようとおっしゃいました。
信じていた旦那様に裏切られ、もう旦那様を信じる事が出来なくなった私は、離縁を決意し、実家に帰ります。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全8話で完結になります。
幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ
猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。
そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。
たった一つボタンを掛け違えてしまったために、
最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。
主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?
三度裏切られたので堪忍袋の緒が切れました
蒼黒せい
恋愛
ユーニスはブチ切れていた。外で婚外子ばかり作る夫に呆れ、怒り、もうその顔も見たくないと離縁状を突き付ける。泣いてすがる夫に三行半を付け、晴れて自由の身となったユーニスは、酒場で思いっきり羽目を外した。そこに、婚約解消をして落ちこむ紫の瞳の男が。ユーニスは、その辛気臭い男に絡み、酔っぱらい、勢いのままその男と宿で一晩を明かしてしまった。
互いにそれを無かったことにして宿を出るが、ユーニスはその見知らぬ男の子どもを宿してしまう…
※なろう・カクヨムにて同名アカウントで投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる