豆腐メンタルな推しが尊い

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プロローグ

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    小学四年生の時の話だ。
    仕事帰りの両親を乗せた車は居眠りトラック運転手に突っ込まれ、幼い私を残して両親は天国へと旅立った。親の葬儀の後、悲しみで絶望しかなかった私を他所に、親の相続目当てに親戚達は私を引きとろうと揉めにもめた。

「梨音ちゃん、おばさん家には梨音ちゃんと同い年の女の子がいるのよ?だから」

「おいっ!お前何言ってるんだ。梨音ちゃん、おじさんところに来るよな?」

「子供がいたら梨音ちゃんそっちのけでしょ?あんた、私のところおいでよ」

   大人たちは私の気持ちを他所にわたしざいさんを目当てに話けてくる。そんな日々が1週間ほど続いた。正直、父方の祖父母に引き取ってもらえれば…と思っていたが2人は歳なため、決まるまでは面倒を見るがそれ以降は面倒をみれない断られてしまった。

   私…どうなるのかな…

   大人たちは、私を見ているようで私を見ていない。そんな視線に晒され続け2週間が過ぎた頃、父の妹…叔母が突如家を訪ねてきた。

「たくっ、これだから嫌なのこの家は。ねぇ、貴方。私は仕事で家にはほとんど帰らない。それでも、あんなクズみたいな親戚よりマシと思わない?」

「…?」

「だから、私が引き取ってやるって言ってんの!」

「!」

「ってことで、この子も納得したみたいだし私が引き取る。さっさと手続きするからおいで」

「うん」

    私は叔母にお世話になることにした。
    叔母は、言っていた通り仕事で家に帰ることはなかった。広い家に私1人。両親を亡くして間もない私にはそれがとても寂しかった。でも、その時にテレビで流れたとあるゲームのCMで私は出会ったの…推しに!

   そのゲームは、RPG要素の携帯恋愛ゲームだった。
   魔物や魔獣が闊歩する世界に突如召喚された少女が、その世界の仲間たちと協力しながら特定の相手と恋仲になり国を平和に導くストーリーだ。ついでにヒロインである少女の職業は選択可能で、1周目は賢者、2周目は神官で私はプレイした。
   優しく愛を囁くイケメン、思い合う仲間愛。そんなゲームにのめりこんだ。けれど私の推しは攻略対象ではなく、主人公たちを支える副騎士団長のライモン様。ライモン様は、御歳34歳の茶髪に新緑の瞳を持つ隻眼の大人な男性で妻持ち。正直、ライモン様の奥さんであるアンシーちゃんのことは最初許せなかった。けれど、10歳差であることを忘れさせるようにひたむきにライモン様を想うアンシーちゃんは天使だった。いつの間にか私はアンシーちゃんに絆されていたのだ。

 
   つまり…

   私にとっての推しは神様

   私にとっての推しは救い

   私にとっての推しは恋人

   私にとっての推しは尊い存在

   以上のことから推しとは私を構成する上で必要不可欠な存在なのである。

   宮下梨音(みやしたりね)花の女子高生。今日も推しのライモン様のために貢ぎます!
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