気の迷い

桐原まどか

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気の迷い

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―彼女とのことは…気の迷いだったんだ!許してくれ!

と和樹は土下座せんばかりの勢いで、くるみに言った。

くるみは冷ややかな瞳で和樹を見つめている。
―ふーん? 気の迷いでマッチングアプリして、気の迷いでデートして、気の迷いですること、しちゃったんだ?

うぐぅ、となる和樹。
―別れましょ、わたしたち。
ひんやりした、くるみの声音。
―まっ、待ってくれ、俺が本気で好きなのは…くるみなんだ。許してくれないか…?

くるみは、はぁ、と溜め息をついた。
―その台詞も「気の迷いだったんだ」ってほざくつもりでしょ?
さよなら、二度と連絡してこないで。最低男。

くるみが部屋を出て行く。

遠ざかっていく足音を確かめてから、和樹はポケットからスマホを取り出した。メッセージを送る。
<早希、君の言う通りにしたら、本当に別れられたよ!
これで正式に付き合えるね!>
ピロンと音が鳴って、メッセージの着信を伝えた。いそいそと開く。
果たしてそこには
<キミとのことはあたしの気の迷いでした。二度と連絡しないでください。>
とあった。
愕然となる和樹。何度メッセージを送っても無反応。電話も通じない。
―そ、そんな…。
和樹はがっくりとうなだれた。

とあるカフェで二人の女がくすくす笑いあっている。
「彼女いるくせに、マッチングアプリなんかするからだよ、バーカ」と罵っているのは早希。
それを聞いて、くっくっく、と肩を震わせているのはくるみだ。
そう、二人の女性は敵対ではなく、結託を選んだのだ。
この後、くるみは和樹と共通の友人たちに、それとなく、和樹の浮気の話を流した。
女性陣は「最低」と怒り、男性陣も「…それは…」となった。

一時の気の迷いが、一瞬にして<信用>を失わせた…。
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