詩・感染

桐原まどか

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詩・感染

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あの日、わたしは感染してしまった。
不治性のやまい

あなたの顔を見たい。
あなたの声を聴きたい。
あなたに…触れたい。
これが恋に堕ちる、というもの?
どこか、自分を客観視してるわたしがいた。

―これが恋なら、わたしはもう、以前には戻れない。


あの日、僕は感染してしまった。
不治性のやまい

君の顔を見たい。
君の声を聴きたい。
君に…触れたい。
これが恋に堕ちる、という事か。
どこか、自分を客観視してる僕がいた。

―これが恋なら、僕はもう、以前には戻れない。

二人で堕ちていく。

堕ちていく。

底へ。

薄暗く透き通った底へ。

感染者たちが堕ちる、甘美な痛みとともに。
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