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それから数日後のことだ。秘書として仕事を覚え始めてきて初めての、公の場。アルファオメガの交流の場だ。
コミュニティが持ち回りで開催するパーティーがある。
それは、大なり小なりこの国で行われているものはあるが、年に一度のコミュニティ持ち回りのパーティーと言うのは、世界各国のコミュニティから招いた客人たちが来る大掛かりなものだ。
小規模なら、結構頻繁とは言わないが行われている。何故、大掛かりな方のパーティーから始めようと思ったんだ紺野は。おかしいだろう、どう考えても。
「……気持ち悪い」
人がうようよと、そして、参加者が全員一般人でないことがわかる。
一般人の中で育ってきた俺は、慣れない。慣れないと言うより、価値観の違いが多すぎて、気分が悪い。
それに、俺のフェロモンが暴走しないように飲んだアルファの抑制剤の効果もあって余計に、今はひどい顔をしているだろう。
「また、君は……今日は我慢しておくれ」
紺野が仕方がないな、と言うように笑う。紺野のそばには、奇麗なお姉さん……秘書の鈴木さんがいる。
そんな俺の腕に、ゆきが飛びついてくる。
今日はゆきと春の付き添いだったりする。こういう場も慣れておくように、ということで。
「そうそう!一年に一度なんだから楽しまなきゃ損々!」
「そうだね、楽しむべき」
反対側の腕に春が張り付いてきて、俺は強制的に二人によって歩かされる。
頑張ってね、という顔をしていたが、これが幸いか、ゆきと春の良い人除けになった。
もちろん、俺のもだけど。
あ、とゆきが目を輝かせて立ち止まる。春もそれに習って立ち止まり、ゆきの見ているほうを見た。
遅れて俺もそちらへと目を向ければ、金髪の如何にもセレブですっていう感じのダンディな人と黒髪で妙に色気のある人が。
周りの視線を集めていたが、本人たちは至って普通にパーティーを楽しんでいるようだ。
ふと、金髪の彼と目線が会った。彼の目がふと細められる。俺は不躾に見すぎていたか、と視線を外した。
が、コツ、コツ、と人の多いホールだというのに彼が近づいてくるのが分かる。
オーラが、物語っていた。
が、金髪さんは日本語が出来ないのか、フランス語ですべて話していて分からない。
俺が困惑していると、隣の黒髪さんが苦笑しながら通訳してくれた。
「君は、面白いアルファだねってディー……デュークスが言ってるよ」
「デュークス?」
「デュークス・クラーク、フランスの資産家だよ」
困惑して首を傾げた俺に、ゆきがこそっと教えてくれる。
その補足として、春も教えてくれた。
「今、通訳してくれたのはトーヤ・H・クラーク、正式なクラーク氏の奥方様だよ」
「その奥方様って止めて貰っていいかな?ディーと結婚したのは本当だけど……」
困ったように黒髪美人なトーヤさんが笑う。
クラーク氏は日本語が話せないだけで、意味は理解しているらしく先ほどの会話からフランス語でトーヤさんに何かを言いながらキスしていた。
うわぁ、オープンだなと思っていたらトーヤさんは顔を真っ赤にしてクラーク氏を叩いていた。いや、実に仲のいいご夫婦だ。
「で、そのクラーク氏が何で俺なんかを、面白いアルファだって?」
「……あぁ、君が日本に少ないはずの上位アルファであるかららしいね。それも、ディーと並ぶくらいの……それって凄いんじゃないか?」
「あの……俺、クラーク氏がどれだけ凄いアルファかなんてわからないんですが……」
「りっくんは、ベータの家系で育ってきたので特別なんですよ!」
俺をフォローするようにゆきが言えば、クラーク氏は驚いたように俺を見た。
「へぇ……ベータの家系で……それって、遺伝子が何かしら変化を起こしたって事だよな?」
確認するようにトーヤさんの顔がクラーク氏を向く。
その視線に答えるようにクラーク氏は、にっこりと彼に蕩ける様に微笑んだ。
「遺伝子の突然変異は、アルファオメガの始祖に見られた現象で、そう言った力が強いんだそうだ」
「なるほど、りっくんのフェロモンはだから特別なんだね」
ふむふむ、とゆきが納得するように頷いた。
そうか、そう言うものなのか?
「それと、アルファの数が一時的に少なくなってきた、という現象でもあるらしい。まぁ、王も生まれたことだし、数はやはり均衡を保っていくとは思うけど……ってディーが」
「クラーク氏は、やはり上位で上流階級のアルファだけあって博識ですね」
「でも、今はまだ蛹の状態らしい。完全な羽化をすれば、この場にいるアルファもオメガも、下手をすれば逆らうことなど出来なくなるぐらいの……は?」
途中で、クラーク氏の言葉を翻訳していたトーヤさんはクラーク氏を見つめ、そして真っ赤になりながらクラーク氏へフランス語で何かをしゃべっている。重要なところで話は途切れてしまった。
その姿を唖然としてみていると、となりで春がくすくす笑った。
「本当に、噂通り、仲がいい」
「なっ!」
トーヤさんは顔を更に赤くして、クラーク氏と春を見比べ、フランス語で何かクラーク氏へ叫んだ後に、ため息を吐いて落ち着いたようだ。
そんなトーヤさんの腰を抱えてにこにこと笑うクラーク氏がこちらにフランス語でいう。
きっと、”僕の奥さんかわいいでしょ?”なんて言っているのだろう。いや、間違いない。
コミュニティが持ち回りで開催するパーティーがある。
それは、大なり小なりこの国で行われているものはあるが、年に一度のコミュニティ持ち回りのパーティーと言うのは、世界各国のコミュニティから招いた客人たちが来る大掛かりなものだ。
小規模なら、結構頻繁とは言わないが行われている。何故、大掛かりな方のパーティーから始めようと思ったんだ紺野は。おかしいだろう、どう考えても。
「……気持ち悪い」
人がうようよと、そして、参加者が全員一般人でないことがわかる。
一般人の中で育ってきた俺は、慣れない。慣れないと言うより、価値観の違いが多すぎて、気分が悪い。
それに、俺のフェロモンが暴走しないように飲んだアルファの抑制剤の効果もあって余計に、今はひどい顔をしているだろう。
「また、君は……今日は我慢しておくれ」
紺野が仕方がないな、と言うように笑う。紺野のそばには、奇麗なお姉さん……秘書の鈴木さんがいる。
そんな俺の腕に、ゆきが飛びついてくる。
今日はゆきと春の付き添いだったりする。こういう場も慣れておくように、ということで。
「そうそう!一年に一度なんだから楽しまなきゃ損々!」
「そうだね、楽しむべき」
反対側の腕に春が張り付いてきて、俺は強制的に二人によって歩かされる。
頑張ってね、という顔をしていたが、これが幸いか、ゆきと春の良い人除けになった。
もちろん、俺のもだけど。
あ、とゆきが目を輝かせて立ち止まる。春もそれに習って立ち止まり、ゆきの見ているほうを見た。
遅れて俺もそちらへと目を向ければ、金髪の如何にもセレブですっていう感じのダンディな人と黒髪で妙に色気のある人が。
周りの視線を集めていたが、本人たちは至って普通にパーティーを楽しんでいるようだ。
ふと、金髪の彼と目線が会った。彼の目がふと細められる。俺は不躾に見すぎていたか、と視線を外した。
が、コツ、コツ、と人の多いホールだというのに彼が近づいてくるのが分かる。
オーラが、物語っていた。
が、金髪さんは日本語が出来ないのか、フランス語ですべて話していて分からない。
俺が困惑していると、隣の黒髪さんが苦笑しながら通訳してくれた。
「君は、面白いアルファだねってディー……デュークスが言ってるよ」
「デュークス?」
「デュークス・クラーク、フランスの資産家だよ」
困惑して首を傾げた俺に、ゆきがこそっと教えてくれる。
その補足として、春も教えてくれた。
「今、通訳してくれたのはトーヤ・H・クラーク、正式なクラーク氏の奥方様だよ」
「その奥方様って止めて貰っていいかな?ディーと結婚したのは本当だけど……」
困ったように黒髪美人なトーヤさんが笑う。
クラーク氏は日本語が話せないだけで、意味は理解しているらしく先ほどの会話からフランス語でトーヤさんに何かを言いながらキスしていた。
うわぁ、オープンだなと思っていたらトーヤさんは顔を真っ赤にしてクラーク氏を叩いていた。いや、実に仲のいいご夫婦だ。
「で、そのクラーク氏が何で俺なんかを、面白いアルファだって?」
「……あぁ、君が日本に少ないはずの上位アルファであるかららしいね。それも、ディーと並ぶくらいの……それって凄いんじゃないか?」
「あの……俺、クラーク氏がどれだけ凄いアルファかなんてわからないんですが……」
「りっくんは、ベータの家系で育ってきたので特別なんですよ!」
俺をフォローするようにゆきが言えば、クラーク氏は驚いたように俺を見た。
「へぇ……ベータの家系で……それって、遺伝子が何かしら変化を起こしたって事だよな?」
確認するようにトーヤさんの顔がクラーク氏を向く。
その視線に答えるようにクラーク氏は、にっこりと彼に蕩ける様に微笑んだ。
「遺伝子の突然変異は、アルファオメガの始祖に見られた現象で、そう言った力が強いんだそうだ」
「なるほど、りっくんのフェロモンはだから特別なんだね」
ふむふむ、とゆきが納得するように頷いた。
そうか、そう言うものなのか?
「それと、アルファの数が一時的に少なくなってきた、という現象でもあるらしい。まぁ、王も生まれたことだし、数はやはり均衡を保っていくとは思うけど……ってディーが」
「クラーク氏は、やはり上位で上流階級のアルファだけあって博識ですね」
「でも、今はまだ蛹の状態らしい。完全な羽化をすれば、この場にいるアルファもオメガも、下手をすれば逆らうことなど出来なくなるぐらいの……は?」
途中で、クラーク氏の言葉を翻訳していたトーヤさんはクラーク氏を見つめ、そして真っ赤になりながらクラーク氏へフランス語で何かをしゃべっている。重要なところで話は途切れてしまった。
その姿を唖然としてみていると、となりで春がくすくす笑った。
「本当に、噂通り、仲がいい」
「なっ!」
トーヤさんは顔を更に赤くして、クラーク氏と春を見比べ、フランス語で何かクラーク氏へ叫んだ後に、ため息を吐いて落ち着いたようだ。
そんなトーヤさんの腰を抱えてにこにこと笑うクラーク氏がこちらにフランス語でいう。
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