イスティア

屑籠

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第一章

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 ギルドを出ると、少しだけ買い物をしてから宿をとることになった。
 一日だけだ。宿よりも馬車のほうが快適かもしれないが。

「……そう言えば、ゆっくり買い物なんてこっちに来てからしてなかったな」
「フルフラの街にいた時間が短いんだ、無理もない」

 それもそうか、とオーガは市井の店を覗き、ふむ、と新参者みたいにきょろきょろ街中を観察している。
 それが不審に思われないのは、マスクとマントで認識疎外をしているからだろうけれど……やはり、オーガの姿はルラギラの街でも変わっていた。

「あの店、何の店だ?」

 ふと、オーガが足を止めて少し薄暗い店を見つける。

「あぁ、魔道具の店さ」

 ちらり、と見ただけでアレンにはわかったのだろう、なんの事はない、というように言った。

「魔道具って、コンロとかそういった感じの?」
「こんろ?と言うのがどう言ったものかは分からないが、正確に言えばお前の馬車だって魔道具の一つだろ」
「……えっ?ただの馬車だろ」

 魔道馬車っていうオーガの中での定義は、駆動も魔力で補うものだ。
 そこまでの物を作るのであれば、あのくず鉄では足らないし、木材では強度が足りない。
 魔道具の定義ではなく、オーガの中で完全にあれは魔改造した普通の馬車だ。
 この世界の常識から考えてみると、普通の馬車は魔改造などされてはいないのだが。

「あの馬車がどうやったら普通の馬車だっていうんだよ?ふつう、馬車の中が異空間に繋がってるとか誰も考えねぇだろ」
「ん?いや、あれはただの後付けだし。魔道具と言うならえぇっと……これとか」

 オーガがストレージから取り出したのは、小さな立方体。
 そっと上下に捩じりながら引っ張れば、中が光った。

「なんだこれ」
「ランタン。洞窟でいちいち魔法使いながらだと魔力も消費するし、これがあれば便利だろう?」

 そっと、仕舞いながらオーガはそう告げる。
 はぁ、とため息をはかれた。オーガはいったい、何に呆れられているのかさっぱりとわからない。
 ONIではオーガの持つランタンなど普通に販売されていたし、オーガの店でも扱っていた。
 中の魔石の交換だってしていたのだ、滅多にそういう客は来なかったが。

「これが魔道具って奴だろう?でも、街中で売ってるとなると生活に直下したものかと俺は思ったんだが?」
「それ、どんな仕組みになってるの?」

 ずいっと現れたのは、フードを被ったオーガよりも不審者な……声だけ少女。
 うわっ、とオーガは思わず一歩下がる。
 その姿は街の人にも見えているようで、あぁ、あの子、と言ったひきつった顔で見られていた。

「ねぇ、さっきの見せてくれる?」
「は?嫌だけど」

 そんなこと言わずに、とずいずい来られて、思わずとっさにリカルドの後ろへと回り込む。
 あとよろしく、と言うようにオーガはこっそりと隠れる。
 人ごみに紛れてしまえば、オーガを追えないだろうが、衆目されているとそれも虚しく無理に等しい。
 リカルドとアレンは顔を見合わせて、はぁ、とため息を吐いた。

「先を急いでいるんだ、邪魔しないでくれないか?」

 アレンがオーガを追う不審者へとそう声をかける。
 少しでいいのよ、少しでとオーガに近づく不審者。その肩を、アレンが掴み、引き留めればあなたね!と今度はアレンの方へずいっと迫った。

「あの魔道具がどれほど精巧で、そして緻密に出来ているか!そもそも、あの大きさの魔道具を作り出すのにどれぐらいかかると思っているの!?」
「いや、そんな事を言われてもだな」

 困ったようにアレンが、どうどうと興奮した様子の不審者へ苦笑いをする。
 そっと、アレンへ目を向け、オーガはゆっくりとその場を離れた。
 あの声だけ少女の不審者の都合など知ったことではないのだ。
 そもそも、自分の技術をひけらかしたいとも思わない。
 技術とはすなわち金であるからだ。

「……ひどい目にあったな」

 こんな、初歩的な道具でさえ興奮材料となるのか、とオーガはため息を吐く。
 この世界の魔道具技術、というか、錬金術はどれだけONIの世界から考えて遅れているのかと。
 ふらふらと歩いていると、オーガは小さな、たぶん教会なんじゃないかなぁ?という建物に突き当たる。
 たぶん、という言葉がつくには理由があった。
 目の前の建物、どう見ても教会と言うにはぼろ過ぎるし、孤児だろうやせ細った子供がちらほら見える。

「……教会?いや、廃墟だろ」

 ぼそり、とつぶやきながら木で出来た扉を開く。
 中は、広々としており、ステンドグラスだけがその存在を強く主張していた。
 その光景はどこか、異様にも思える。

「神の彫刻もない、経典もない……やっぱり廃墟か」

 そういえば、とオーガは思い出す。
 フルフラの街では教会に行ったことがなかったと。アレンは確か、協会にいたのだ。
 この間の話でレスティア聖王国は、国教があるらしいが。この国ではどうなのだろう?
 そっと、ステンドグラスを見上げてそっと目を閉じる。
 すると、ぴかっ、とオーガの瞼の裏が光り輝く。

『…い………きて』
「……は?」

 目を開ければ、先ほどの光も声もなくなっていた。
 ふっと、辺りを見回すものの、孤児ぐらいしか見当たらない。
 というか、この教会の管理者は一体どこにいるのか。
 ため息を吐き、そっと使っていなかった銅貨三枚と回復のBランクポーションを取り出すと、教会を出てすぐの子供へと頭から振りかけた。
 孤児の憔悴した顔はみるみる色を取り戻す。
 ふと、見上げてきた子供へ、先ほどの三枚を手渡した。
 食べ物のほうがいいかとも思ったが、生憎、この世界の食べ物についてはリカルドたちに任せていたため、持ち合わせがない。

「えっ……?」

 声は、あまりに使っていなかったせいかかすれている。
 よく、死んでいなかったものだとオーガは感心した。

「中を見せてもらった。お布施代わりだ。この教会の管理人に渡すも、お前が使うも好きにするといい」
「ぁ……っ」

 そっと握らせると、オーガはほとぼりの冷めただろう、リカルドとアレンへ合流するために、彼らの居場所をマップに表示させながら歩きだした。
 その子供が、天使や神を見るかのようにオーガを見ていたことなど、オーガは知らない。振り返ることはしないから。
 大きな通りに出て、少し歩く。リカルドとアレンがいるだろうな、と言った場所には宿屋があった。
 看板を見る限りは銀等級だ。
 そっと扉を開き、中へ入る。

「いらっしゃいませ」

 にこり、と女性が出迎えてくれた。

「リカルドとアレン……えっと、アレクライン?の二人はいないか?」
「えっと、どちら様でしょう?」

 苦笑いする女性にそれもそうか、と息を吐く。
 オーガはそっとギルドカードを提示しながら名乗った。

「旅の仲間だ。オーガと言えばわかる」
「オーガ様ですね、少々お待ちください」

 女性が受付を離れると、そっと部屋のほうへ上がっていく。
 ここに居ることはまぁ、地図を見てわかっていた通り、間違いないようだ。
 女性が駆け足で戻ってきて、確認が取れました、とギルドカードの確認を行った。
 部屋のカギだとギルドカードとともに手渡され、部屋に向かう。
 カギを開けば、リカルドとアレンが、ほっとした表情で迎えてくれた。
 部屋は見る限り四人部屋、パーティー客が利用しそうな部屋だった。

「……意外と時間を食ったみたいだな?」
「あぁ、また変なのに絡まれてないか心配したぞ?」

 ホッとした息を吐く二人へ、悪かったな、とオーガが謝る。

「明日にはこの街を出る……が、この国の教会ってどこもすたびれているものなのか?」
「は?いや、そんなことはないと思うが……」
「さっき見てきたが、協会は廃墟みたいだったぞ」
「……おかしいな。教会の維持費は国からも支給されているはずだ。お布施もあるはずだし……あと、孤児も引き取っているはずだから、それなりに……」

 ぶつぶつとアレンがつぶやき始める。
 どうやら、面倒くさい闇があるようだ。

「取り合えず、ほかの教会は無事なんだな?」
「あぁ。フルフラの街の教会は、きれいにしてあって誰にでも解放されていたぞ?」

 そういえば、アレンは石化にかかっていた時、教会でお世話になっていたんだった、と思い出した。
 人というものは、興味のない事をすぐに忘れてしまうものだ。
 そうか、フルフラの街ではきれいな教会なのか。
 この街、ギルドのゴンザはいい奴だが、街がなんとも言えずきな臭い。
 そもそも、ゴンザが苦言を呈していたこの街の貴族、とやらがろくでもないのだろう。
 オーガには関係のないことだが。

「そうなのか。この街が特殊なだけか」
「そう、だろうな」

 少しリカルドもアレンも複雑そうな顔をしている。
 やはり、異世界の物語でもあるように、教会とは少し特殊な立ち位置にあるみたいだ。

「……まぁ、俺たちがどうのと言ったところで現状が変わるわけでもなし。俺はとっとと飯食って寝る」
「それも、そうだな……」

 暗い雰囲気から一転して、そうと決まれば、と一階へ降りていく。
 一階では、夕飯には早い時間だが、もうすでに客がチラホラ入っていた。

「そう言えば、この街では鐘が鳴らないんだな」
「ん?あぁ、フルフラの街だけさあの鐘が鳴るのは」
「そう、なのか?なぜ?」
「あれは、あの街の領主の善意で鳴らされている鐘だからだ」

 へぇ?とオーガはギルマスはろくでもないのに、領主はまともなんだ、と少し感心する。
 というより、このルラギラの街とは真逆だと思う。
 この街、ゴンザの話だけを聞けば、領主がとんでもない奴だ。

「あの鐘は、街の外まで聞こえるだろう?時間がわかれば、冒険者や街の外にいる人が閉門の時間を忘れずに済む。そうした、領主の気配りの結果だな。それを支えようと、鐘は教会の職員が毎回鳴らすことになっている」
「へぇ?改めて、領主はすごい奴だったんだな」

 会ったことないけど、とオーガはフルフラの街、オーガにしてみればこの世界に落とされて最初の街を思い出す。
 確かに、街には活気があり、きれいにされていた。
 ルラギラの街は、ふとわき道を見れば、もうすでにゴミがたまり汚い、という印象も受ける。
 冒険者ギルドを出るときにちらっとだけ見てきた依頼には、依頼は冒険者ギルドからというスタンスで街の清掃活動なども盛り込まれていた。
 ゴンザの苦肉の策なのだろう。
 そんなゴンザを慕う冒険者が、この街には多そうだ。

「ここで、領主の悪口はやめておいた方が良い」
「えっ?」

 オーガたちのテーブルに寄って来たのは、酔っ払いだった。
 酒樽を持ち、ひっく、としゃくりを上げてる。

「ゴンザはまだ領主に意見を言える立場だが、奴の私兵に見つかれば投獄されて即処刑されるぞ」
「とんだ領主も居たもんだ」

 気を付けろ、と言っておっさんは元の席へと戻っていく。
 別に悪口を言っていたわけではないのだがな。事実の確認だ。
 まぁ、悪口に聞こえたと言うのであれば、それは街の管理体制がやばい証拠ではないのか。

「……俺たちには関係ないけどな」

 何となく、オーガには予感があった。
 多分、この街にもラジュールはやってくると。
 近いうちに、領主は変わるんじゃないかと思う。
 スラムがこの先、すぐに良くなるかと言えば、そうでもないだろうが。

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 side:リカルド


 あのギルドマスターに解雇を言い渡され、俺はオーガに着いて街を出た。
   しばらくすると、寝ていたはずのオーガが臭い!と騒ぎ出す。
 オーガが匂いの元を確かめに行くと言うのでついていった。
 馬車を置いていくのは危なくないか?と思ったが、心配はないらしい。
 オーガの魔法で、オーガが認識させた人物以外が馬車を使用することも出来ない、と。
 何つうものを作ってるんだ!と言いたくなったが、案外けろりとしているから、オーガについては得体が知れない。
 それでも、心配になるのは、その雰囲気だろうか?
 外見は怪しいのに、口を開けば憎たらしいことも沢山いうし生意気だし。
 それでも、オーガは消えてしまいそうな、ふとした瞬間、光に溶けてしまうんじゃないか、という錯覚を覚えることが多々ある。
 本人にその自覚は全くないが。
 本人は不細工だという顔だが、そこまで隠したいものだろうか?と少し思う。
 素顔で話がしてみたい、と思うくらいには気に入っているし、多分これは好きという感情よりも、親心に近いものだが。
 オーガの契約獣だという、レティは綺麗な顔をしていて、とてもオーガに懐いていた。
 どうやら、オーガが育ての親らしい。どうしてそういう正確に育ったのか、オーガ自身にも謎らしいが。
 そんなレティといると、身内だからオーガの気も緩むのだろう。
 新たな一面が見れた気がする。それが、嬉しくて、同時に少し悔しかった。
 だが、オーガにこうして魔物でも軽口を叩ける相手がいて良かったとも素直に思ったのは確か。
 オーガは知らず知らず、ため込んでしまいそうな性格をしているし、そもそも一人で何でもしようとする。
 せっかく俺たちと旅をしているんだから、頼ってほしいのも事実。
 オーガとレティが臭い、と言っていた匂いの元へたどり着くと、そこには大きな死骸が一つ放置されていた。そこまで来ると、死臭が漂っているのが嫌でもわかる。アレンも顔をしかめてそれを見ていた。
 周りには、古くなっているものの、血の跡があちらこちらに有る。
 激戦、だったのだろう。
 そっと、オーガはその惨状を見てから、臭い臭いと言っていたのにマスクを外すと大きく息を吸い込んだ。

『 主よ、我が祈りを聞き届け給え
 我が名、我が命をとして殲滅せしめんとす
     主よ、大いなる御名において、我に力を与え給え

 主よ、愚かな私をお救いください
 私の声に耳を傾け、民の嘆きをお救いください
 あぁ、何と美しい世界だろう
 この世界に祝福を、世界の嘆きに救いを
 主よ、その内なる御心に我が祈りを留め置き下さい

 主は、愚かな私の全てを許された
 その後、世界に祝福が訪れ、民は喜びに満ちるだろう
 あぁ、美しき世界に生けるものたち
 主に祈りを捧げ、我らは許しを乞うだろう
 主よ、その身の内の嘆きを私にお教えください』

 それは、何処までも響く、祈りの歌。歌っている言葉は、俺には分からない。けれど、祈り、そうとしか取れない。
 そっと、囁くように歌っているのに、その声は不思議とはっきり少し離れた場所に居た俺にも届いた。
 思わず、見惚れてしまう程、その姿は清廉だった。

「讃美歌?」

 そう、アレンが隣でぼそり、と呟く。
 アレンには、オーガが歌っている言葉の意味が分かったのだろう。
 竜人は、この世界のどの種族よりも特殊な立ち位置に居るせいか、その能力は高い。
 アレンが讃美歌だと言うなら、オーガの歌ったそれは讃美歌なのだろう。
 古代語、もしくは神の言の葉なのかもしれない。ただ人には聞き取れない、理解できない言葉たち。
 オーガが歌い終わると同時にベヒモスの体は発光する。
 ハッとして、手を伸ばそうとするけれども、その光のせいでオーガに近づけもしない。
 オーガはその光の中で誰かと話しているらしい。
 危険はなさそうだが、不安は残る。
 オーガはこの世界の人間ではなく、この世界の常識もあまりないのだから。
 光が収まるころには、ベヒモスの死骸は消えていて、残っていたのは光り輝く輝石一つ。
 それも、かなりの大きさだ。

「……ダンジョンコア?」
「……だな」

 オーガの手の中にあるそれを覗き、鑑定してもやっぱりダンジョンコアだった。
 ダンジョンに潜った照明にならないか、とオーガは言うが、これを持っていけばどこのダンジョンを攻略したのかとギルドに問い詰められることになるだろう。
 アレンと顔を合わせ、ゆっくりとオーガに分かるように、否定する。

「……使えねぇって事じゃねぇか!!」

 とオーガは怒るが……それなりの大きさのダンジョンコアは、使い道がたくさんあるし、オークションに出せばかなりの値がつくんだがな。
 オーガは常々金が欲しい、と言っているが面倒くさいことも、目立つことも嫌いだ。
 困った男だ、と肩を竦める。
 そんな男に、何故か惹かれた俺も俺だが。

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 side:ゴンザ

 フルフラの街の女狐から連絡がきた。
 リカルドという職員が、ギルドの規範を犯し、逃走中だと。
 その割に、あの女にしてはあっさりとその男を街から出したものだと裏を勘繰る。
 リカルドという男は今、Sランクのアレクラインと一緒のパーティーに所属しているらしい。
 この街に来たら、早々に事情聴取でもしてやるか。
 そう思っていたんだがな。

「なに?フィンリルに馬車を引かせている変わり者?」

 そう、ギルドへと情報が舞い込んだ。
 フィンリルに、と言う事は使役者か。それも、馬車を引かせることのできるそうとうな手練れ。
 アレクラインのパーティメンバーだと考えた方が良いだろう。
 俺が行ってくると街の入り口に向かえば、案の定人だかりができていて、その中心にいた人物はとてつもなく憤慨していた。

「フィンリルがいると聞いたんだがな」
「あの男がフィンリルでさぁ!この目で変化する所をちゃんと見ました!!」

 近くに居た男がそう教えてくれる。
 馬車の近くに居た憤慨している人物が、フィンリルだという。
 ……どう見ても、美形の男だが口調は女。それがまた似合っているから皮肉だろうか?

「……何でこんな事になっているんだ?」

 人型をしていても、神獣フィンリルには変わりがなく、誰もかれも一定以上近づかなかったが、そのフィンリルへ近づいていくフードの男がいた。
 その男へ、遅いわよ!!と憤慨しているあたり、彼がフィンリルの使役者なのだろう。
 と言う事は、アレクラインの仲間。

「知らないわよ。私がこの姿になった時からずっとよ?いい加減にして欲しいわね」

 フィンリルが周りを見回すように睨むが、フィンリルが使役者の元に居るからと今度は馬車へと興味が移ったみたいだ。
 馬車も見たことのない構造をしている。
 ため息を吐いた男は、馬車とその魔獣をそれぞれ仕舞う。
 それに驚いて俺はその男へと近づいた。

「兄さん、異空間収納持ちかい?それにしても、あれだけの大きさを仕舞えるなんてすごいねぇ!」

 ぐいぐい迫れば、そっと近くに居た金髪の男が彼をかばうように一歩俺へと近づいてきた。
 その目を見れば分かる。彼は竜人種、と言う事はアレクラインだろう。

「それぐらいにしてくれないか?こいつは、あまり目立つのが好きじゃないんだ」

 困ったように笑うアレクラインに、俺ははっはっは、と笑う。
 フィンリルもあの馬車も口実でしかないが、まぁ、出会えただけましだ。
 話を聞くために、ギルドへと同行してもらい、そこであの女の話を聞いた。
 やっぱりろくでもない事を考える女だと思う。
 あの女の思考がわかってしまうあたり、俺も同類ってことだが。
 それでも、あの女は対応を間違えたのだろう。
 このオーガって男は、一筋縄ではいかない。権力やギルドに盾突くことを厭わない。
 そういう自分があるのだと知れば、ますます気に入る。
 流されるだけの冒険者は、冒険者ともいえないだろう。
 冒険者、となるからは自由でなければ。
 心も、体もな。
 ただ、この街で雑貨屋などを開いてほしかったが、それも拒否された。
 まぁ、当たり前だ。今のこの街の現状を知っているのかもしれない。知っているのだとすれば、拒否されるのは当然だろう。
 街の中は酷いありさまだし、治安も悪くなる一方だ。
 彼らが去ったあと、はぁ、と俺はため息を吐いた。

「どうにもこうにも、だな……」





★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

BLコンテストに応募してみました。皆さま、よろしくお願いします。
その為、ちょこっとだけ、更新を増やします。出来る範囲で無理せず。
基本、壱話が長いのであまり更新は出来ませんが……。

すみません、リカルドサイドが最初の所切れていたので追記しました。
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