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魔王城編
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ねぇ、と手を引かれてベッドに押し倒される。
え?と油断している間にだ。
「生と死を願った魔王は、世界を作り直すことにした」
「オルフェ?」
「さーて、お話はここまで!熱、上がってきてるみたいだね、ほら、寝て寝て」
ぽんぽんと布団をかけられ、寝かしつけられる。
確かに、ぼんやりとしてきた感覚は有るが、でも、平気だったのに。
どこか、熱にかこつけて話をそらされてしまった気がする。
「そばに居るからね。これから、ずっと、ずぅっと」
旅人の執着が、なぜ自分に向いているのか分からない。
けれど、最初から旅人は自分に優しく、そして、俺に甘かった気がする。
出会った当初から、ずっと。
「……オルフェは、年をとらない?」
「いきなりどうしたのさ?」
「姿が変わらないから」
思い出してみれば、旅人として村にきていたころからずっと、オルフェの姿は変わらない。
老けてもいない。年月を重ねれば、人はしわなどが増えるはずだ。
「俺は、竜人だからね。ある程度成長してしまえば、肉体が老化するのが穏やかになるんだよ」
長寿で、老いも遅い。
一般的に言えば、オビトの方が先に老いてしまうだろう。
そう、普通の人間であったオビトなら。
「続きは、目が覚めてからね。器が完成する前に……」
器とは何なのか。聞いても答えてくれそうにはない。
器、それは魔王の器ではなかったのか。でも、俺は魔王ではない。
勇者でもない。それでも彼らのキーパーソンは、器になりそうな自分。
わけが、分からない。旅人が、ベッドの上で目を閉じてしまったから、はぁ、と溜息を吐いて目を閉じた。
城の中を動き回ったせいか、疲れていたのもあるのだろう。すぐに、記憶は遠く薄れていった。
side:オルフェレウス
「ねた、かな?」
はぁ、と先ほどオビトが吐いたような長い溜息を吐く。
だが、こちらは安堵の溜息だ。
ぎゅっと、その体を抱きしめれば、温かい。熱があるので余計に。
けれど、そのぬくもりに幸せも感じることができる。
「器になりえるとしても……君はまだ人間だから。大事にしてね」
オルフェが選んだ、器。その意味を、きっと、誰もが知らない。
オルフェが作った体に入ったもう一人のオルフェ以外は。
「オルフェレウス様」
「うるさい、分かってるよ。だけど、仕方がないだろ」
メイド型ゴーレムは、はぁ、と溜息を吐いた。
ゴーレムは大半、機械音で会話をする。ぴろりん、と鳴ったりぴろぴろぴろ、と鳴ったり彼らの会話はとてもきれいだ。
だが、このメイド型とあと数体だけは言葉を話すゴーレムとして特別製で作られている。
この魔王城での、魔王の話し相手として彼が作ったのだが。ゴーレムの中では上位であり、この城の統率を担っているのも、会話のできる彼らだ。
メイド型、と言うことで少し口うるさく作られているこのゴーレムは、身の回りの世話をするのに、余計に知能を持って作られていた。
「……器様が機能を果たさなければ、この世界は」
「静かに……オビトが起きたらどうするのさ。それに……この世界で一番器に近い存在はオビトかもしれないけど、その資格があるのは何もオビトだけじゃないよ」
器が完成すれば、と漏らすオルフェはそっとオビトの頭を撫でた。
「器となれば、望みは叶う。けれど、君はいなくなってしまう……」
「それが、定められた世界と言うものでしょう」
「だけど、俺は望んでしまう。オビトとずっと一緒にって。可愛いこの子を、守らなきゃって」
「それは……竜族としての本能でしょうか?」
「まぁ、そうなんだろうね。俺の、番なんだろうけど……」
純粋な竜人ではないオルフェには、番の心理が分からない。
そういう機能もない。その辺は前世を引きずっている。
願いの片方、死を望んだ願いを引きずっているオルフェだからだろう。
あちらの片割れよりも、魔王としての本能は強い。その本来の力も。
「かわいいよね、オビト」
「えぇ、確かに。旧魔王様よりも、オルフェレウス様よりも、今まであったどの人間様、魔族様よりも可愛らしい方だと思いますが」
「だよねぇ」
自分では気が付いていないだろう、オビトは可愛い。茶色い髪は太陽に透けると、きらきらと輝くし。
瞳は、赤ではない。黒く澄んでいる。まだまだ成長期だろう体は小さいが、成長すればかっこよくなるだろう。
オビト自身がどう思っているかは知らないけれど、強いし、今は可愛いし。身内のひいき目は有るけれど、もう、向かうところ敵なしと言う感じだろう。
「こんなにかわいい子を、器にしようとするなんて、世界は残酷だね」
「器様に、容姿は関係ないと思いますが……」
「可愛いは正義だよ。うん、世の宝だ……さて、俺も寝ようかな」
「かしこまりました」
「オビトが起きたら起こしてくれる?」
それに言葉ではなく、頭を下げることで返事をし、言葉を発しないゴーレムに部屋を頼むと、静かに出ていった。
え?と油断している間にだ。
「生と死を願った魔王は、世界を作り直すことにした」
「オルフェ?」
「さーて、お話はここまで!熱、上がってきてるみたいだね、ほら、寝て寝て」
ぽんぽんと布団をかけられ、寝かしつけられる。
確かに、ぼんやりとしてきた感覚は有るが、でも、平気だったのに。
どこか、熱にかこつけて話をそらされてしまった気がする。
「そばに居るからね。これから、ずっと、ずぅっと」
旅人の執着が、なぜ自分に向いているのか分からない。
けれど、最初から旅人は自分に優しく、そして、俺に甘かった気がする。
出会った当初から、ずっと。
「……オルフェは、年をとらない?」
「いきなりどうしたのさ?」
「姿が変わらないから」
思い出してみれば、旅人として村にきていたころからずっと、オルフェの姿は変わらない。
老けてもいない。年月を重ねれば、人はしわなどが増えるはずだ。
「俺は、竜人だからね。ある程度成長してしまえば、肉体が老化するのが穏やかになるんだよ」
長寿で、老いも遅い。
一般的に言えば、オビトの方が先に老いてしまうだろう。
そう、普通の人間であったオビトなら。
「続きは、目が覚めてからね。器が完成する前に……」
器とは何なのか。聞いても答えてくれそうにはない。
器、それは魔王の器ではなかったのか。でも、俺は魔王ではない。
勇者でもない。それでも彼らのキーパーソンは、器になりそうな自分。
わけが、分からない。旅人が、ベッドの上で目を閉じてしまったから、はぁ、と溜息を吐いて目を閉じた。
城の中を動き回ったせいか、疲れていたのもあるのだろう。すぐに、記憶は遠く薄れていった。
side:オルフェレウス
「ねた、かな?」
はぁ、と先ほどオビトが吐いたような長い溜息を吐く。
だが、こちらは安堵の溜息だ。
ぎゅっと、その体を抱きしめれば、温かい。熱があるので余計に。
けれど、そのぬくもりに幸せも感じることができる。
「器になりえるとしても……君はまだ人間だから。大事にしてね」
オルフェが選んだ、器。その意味を、きっと、誰もが知らない。
オルフェが作った体に入ったもう一人のオルフェ以外は。
「オルフェレウス様」
「うるさい、分かってるよ。だけど、仕方がないだろ」
メイド型ゴーレムは、はぁ、と溜息を吐いた。
ゴーレムは大半、機械音で会話をする。ぴろりん、と鳴ったりぴろぴろぴろ、と鳴ったり彼らの会話はとてもきれいだ。
だが、このメイド型とあと数体だけは言葉を話すゴーレムとして特別製で作られている。
この魔王城での、魔王の話し相手として彼が作ったのだが。ゴーレムの中では上位であり、この城の統率を担っているのも、会話のできる彼らだ。
メイド型、と言うことで少し口うるさく作られているこのゴーレムは、身の回りの世話をするのに、余計に知能を持って作られていた。
「……器様が機能を果たさなければ、この世界は」
「静かに……オビトが起きたらどうするのさ。それに……この世界で一番器に近い存在はオビトかもしれないけど、その資格があるのは何もオビトだけじゃないよ」
器が完成すれば、と漏らすオルフェはそっとオビトの頭を撫でた。
「器となれば、望みは叶う。けれど、君はいなくなってしまう……」
「それが、定められた世界と言うものでしょう」
「だけど、俺は望んでしまう。オビトとずっと一緒にって。可愛いこの子を、守らなきゃって」
「それは……竜族としての本能でしょうか?」
「まぁ、そうなんだろうね。俺の、番なんだろうけど……」
純粋な竜人ではないオルフェには、番の心理が分からない。
そういう機能もない。その辺は前世を引きずっている。
願いの片方、死を望んだ願いを引きずっているオルフェだからだろう。
あちらの片割れよりも、魔王としての本能は強い。その本来の力も。
「かわいいよね、オビト」
「えぇ、確かに。旧魔王様よりも、オルフェレウス様よりも、今まであったどの人間様、魔族様よりも可愛らしい方だと思いますが」
「だよねぇ」
自分では気が付いていないだろう、オビトは可愛い。茶色い髪は太陽に透けると、きらきらと輝くし。
瞳は、赤ではない。黒く澄んでいる。まだまだ成長期だろう体は小さいが、成長すればかっこよくなるだろう。
オビト自身がどう思っているかは知らないけれど、強いし、今は可愛いし。身内のひいき目は有るけれど、もう、向かうところ敵なしと言う感じだろう。
「こんなにかわいい子を、器にしようとするなんて、世界は残酷だね」
「器様に、容姿は関係ないと思いますが……」
「可愛いは正義だよ。うん、世の宝だ……さて、俺も寝ようかな」
「かしこまりました」
「オビトが起きたら起こしてくれる?」
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