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フォーグレスト編
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砦の街から、それなりの時間をかけてフォーグレストという砦の街から一番近い街についた。
この街にも、鏡合わせの迷宮があるらしい。迷宮は、それだけらしいけれど、砦の街から一番近い街とあって、商業街として栄えている。
王国のラジエラのような街らしい。ただ、迷宮が周りにたくさんあるあの街と比べ、冒険者なりの活気と言えば少ないけれど。
「こ、こが、フォーグレスト……竜がいる、街だ」
最初に会った竜を思い出した。あそこに、鏡合わせの迷宮しかない理由は、その主が西王竜だからだ。
そして、ここにもまた、竜がいる。迷宮の地下で、待っている。
俺を?いいや、俺の中にいるもう一人の俺だ。
「そうだな、竜がいる街だ。ほら、あそこ見てみろ」
そうしてフラムドが指さした場所には、馬車の停留所があった。
馬車と、それから、
「竜、だ……」
目を見開いて、驚く。
こんなにも早く目にすることができるなんて思ってもみなかった。
あれは、竜車というらしい。引いているのは、地竜と呼ばれている黄土色の竜だ。
翼はなく、その代わりに固い土も岩も壊すような鋭く強力な爪をもっている。硬さは、竜族の中で随一と言われるほど。
竜族は、竜人以外には決して扱うことができない。普通の人間では、竜族と関われば死の危険性があるからだ。
もちろん、竜人種だとて変わらないが、彼らは竜族と意思疎通ができる分、被害にあう確率が少ない。
「あぁ、可愛いな……」
あのふてぶてしい竜とは違い、生きてる年数の違いだろうか?すごくかわいく思う。
一番最初の迷宮で出会ったあの竜……思い出すだけで腹が立つ。
思い出せば、あれがきっかけと言えばきっかけだったのか。
いいや、その前から始まっていたのかもしれない。
「あれが、可愛い……?」
すごく微妙な顔をして俺を見るけれど、どうしてだろうか?
竜、可愛くないだろうか?可愛いと、俺は思うんだが。
「貴方は昔から、不思議な感性をしていますよね。あぁいうのは、かっこいい、か、怖い、というのが大半ですよ」
昔から、というのは俺のことではないのだろう。
リオンは懐かしそうな顔をする。
まずは、ギルドに向かうことに。
帝国から来ていたリオンたちにとって、この街は勝手知ったるものだ。
ギルドは、街の中心に商業ギルドと向かい合う形で建っていた。街のシンボルのような感じもする。
「え、っと、査定?して」
「はい、素材の査定買取がご希望ですね?ではギルドカードをご提示ください」
事務的に接客してくる人で、そこに何の感情も感じられない。
そのことに、ほっとする。あまり、関わってくる人は得意ではないから。
カウンターの上に出し切れないほどあった素材に、彼の眉が少しだけ動く。
「こちらはパーティの査定ということでよろしいですか?」
「ぱ、パーティでの?」
え?と首をかしげると、ふむ?と受付のお兄さんも首を傾げた。
「オビト様個人で狩られた物か、パーティで狩られたものか、で、支払先が変わるのですが」
「え、と」
「そちら、すべて彼個人の口座へ、入金お願いします。彼が狩った獲物ですので」
「かしこまりました。では、そのように。量が量ですので、明日、明細を準備しておきます。明日、カウンターにおいで下さい」
はい、と返事をしてからそこを離れる。
このギルドは、単純な金銭のやり取りに関しては別のカウンターが設けられていた。そこで、中に入っていたお金をおろし、リオンたちに借りていたものを返す。
と同時に、手持ちで足りなかった分を補完する。
きょろきょろとあたりを見回しながら、リオンたちがいつもフォーグレストに来たら泊まるという宿に向かう。
何だろうか?ざわざわとする感じがある。
「この宿です」
今までより、少しランクが低い宿みたいだが、それでも宿として十分だろう。
一人一部屋を取る形となり、一人ということにほっとする。
「部屋に行く前に、話があります」
「う、ん?」
「そろそろ、冬になりますが、この街で冬を越すか、もう少し先の街に向かうか。どちらになさいますか?」
冬、とそれを思い出す。
冬になれば、いつも姉が家にいて、秋の間に集めた薪で暖炉を温めたり、姉が作ったスープを飲んで一緒に眠って……そんな、寒さと温かさが入り混じった思い出。
そうか、冬になれば旅が出来ないのか、と。
そういえば、いつも旅人が来ていたのは冬の間近だったと思い出した。
彼は、今年も村に来る予定だったのだろうか?
あの村を見て、彼は何を思うのだろうか?
「こ、こ、以外、の、候補、は?」
「ここ以外の候補としては、あまり多くは有りません。帝都に近い、ダグマ、ここから公国に近くなる、ラマグラーズが大きな街で、この二つがそれなりに安全に過ごせる場所になります。それ以外ですと、小さな村になります。ギルドもないので、あまりお勧めはしません」
そっか、と考える。
帝国に関しては、どこに行けばいいのかまだ分からない。王国でさえ、村の中に引きこもっていた自分には、どこに行けばいいのかもわからなかったから。
そうだ、と考える。
王国にいて、指針となったのは地図だ。地図を、入手すると、今よりも正確に決めることができるのではないかと考える。
今の状態では、情報が少なすぎる。
「ま、だ、決められ、ない」
「まぁ仕方ないけどな。だが、早めに決めないと雪が降るぞ」
「雪……そう、だね」
雪は厄介だ。降る前に決めなければいけない。
この街にも、鏡合わせの迷宮があるらしい。迷宮は、それだけらしいけれど、砦の街から一番近い街とあって、商業街として栄えている。
王国のラジエラのような街らしい。ただ、迷宮が周りにたくさんあるあの街と比べ、冒険者なりの活気と言えば少ないけれど。
「こ、こが、フォーグレスト……竜がいる、街だ」
最初に会った竜を思い出した。あそこに、鏡合わせの迷宮しかない理由は、その主が西王竜だからだ。
そして、ここにもまた、竜がいる。迷宮の地下で、待っている。
俺を?いいや、俺の中にいるもう一人の俺だ。
「そうだな、竜がいる街だ。ほら、あそこ見てみろ」
そうしてフラムドが指さした場所には、馬車の停留所があった。
馬車と、それから、
「竜、だ……」
目を見開いて、驚く。
こんなにも早く目にすることができるなんて思ってもみなかった。
あれは、竜車というらしい。引いているのは、地竜と呼ばれている黄土色の竜だ。
翼はなく、その代わりに固い土も岩も壊すような鋭く強力な爪をもっている。硬さは、竜族の中で随一と言われるほど。
竜族は、竜人以外には決して扱うことができない。普通の人間では、竜族と関われば死の危険性があるからだ。
もちろん、竜人種だとて変わらないが、彼らは竜族と意思疎通ができる分、被害にあう確率が少ない。
「あぁ、可愛いな……」
あのふてぶてしい竜とは違い、生きてる年数の違いだろうか?すごくかわいく思う。
一番最初の迷宮で出会ったあの竜……思い出すだけで腹が立つ。
思い出せば、あれがきっかけと言えばきっかけだったのか。
いいや、その前から始まっていたのかもしれない。
「あれが、可愛い……?」
すごく微妙な顔をして俺を見るけれど、どうしてだろうか?
竜、可愛くないだろうか?可愛いと、俺は思うんだが。
「貴方は昔から、不思議な感性をしていますよね。あぁいうのは、かっこいい、か、怖い、というのが大半ですよ」
昔から、というのは俺のことではないのだろう。
リオンは懐かしそうな顔をする。
まずは、ギルドに向かうことに。
帝国から来ていたリオンたちにとって、この街は勝手知ったるものだ。
ギルドは、街の中心に商業ギルドと向かい合う形で建っていた。街のシンボルのような感じもする。
「え、っと、査定?して」
「はい、素材の査定買取がご希望ですね?ではギルドカードをご提示ください」
事務的に接客してくる人で、そこに何の感情も感じられない。
そのことに、ほっとする。あまり、関わってくる人は得意ではないから。
カウンターの上に出し切れないほどあった素材に、彼の眉が少しだけ動く。
「こちらはパーティの査定ということでよろしいですか?」
「ぱ、パーティでの?」
え?と首をかしげると、ふむ?と受付のお兄さんも首を傾げた。
「オビト様個人で狩られた物か、パーティで狩られたものか、で、支払先が変わるのですが」
「え、と」
「そちら、すべて彼個人の口座へ、入金お願いします。彼が狩った獲物ですので」
「かしこまりました。では、そのように。量が量ですので、明日、明細を準備しておきます。明日、カウンターにおいで下さい」
はい、と返事をしてからそこを離れる。
このギルドは、単純な金銭のやり取りに関しては別のカウンターが設けられていた。そこで、中に入っていたお金をおろし、リオンたちに借りていたものを返す。
と同時に、手持ちで足りなかった分を補完する。
きょろきょろとあたりを見回しながら、リオンたちがいつもフォーグレストに来たら泊まるという宿に向かう。
何だろうか?ざわざわとする感じがある。
「この宿です」
今までより、少しランクが低い宿みたいだが、それでも宿として十分だろう。
一人一部屋を取る形となり、一人ということにほっとする。
「部屋に行く前に、話があります」
「う、ん?」
「そろそろ、冬になりますが、この街で冬を越すか、もう少し先の街に向かうか。どちらになさいますか?」
冬、とそれを思い出す。
冬になれば、いつも姉が家にいて、秋の間に集めた薪で暖炉を温めたり、姉が作ったスープを飲んで一緒に眠って……そんな、寒さと温かさが入り混じった思い出。
そうか、冬になれば旅が出来ないのか、と。
そういえば、いつも旅人が来ていたのは冬の間近だったと思い出した。
彼は、今年も村に来る予定だったのだろうか?
あの村を見て、彼は何を思うのだろうか?
「こ、こ、以外、の、候補、は?」
「ここ以外の候補としては、あまり多くは有りません。帝都に近い、ダグマ、ここから公国に近くなる、ラマグラーズが大きな街で、この二つがそれなりに安全に過ごせる場所になります。それ以外ですと、小さな村になります。ギルドもないので、あまりお勧めはしません」
そっか、と考える。
帝国に関しては、どこに行けばいいのかまだ分からない。王国でさえ、村の中に引きこもっていた自分には、どこに行けばいいのかもわからなかったから。
そうだ、と考える。
王国にいて、指針となったのは地図だ。地図を、入手すると、今よりも正確に決めることができるのではないかと考える。
今の状態では、情報が少なすぎる。
「ま、だ、決められ、ない」
「まぁ仕方ないけどな。だが、早めに決めないと雪が降るぞ」
「雪……そう、だね」
雪は厄介だ。降る前に決めなければいけない。
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