君が望んだ終焉の果てに

屑籠

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ラジエラ編

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 それから買い物をするついでに、帝国についてリオンが話す。

「帝国について、どれぐらいご存じですか?」
「え、えっと、人種、が、いっぱい、で、その、隣には、獣人の、国、がある、こと」

 おや?とリオンが首を傾げた。何も知らずに、帝国に行くと言っているのかと思われていたみたいだ。

「その情報はどこで?」
「村、住んでた、時、村に、来てた、旅人?が、言って、たよ?」

 なるほど、とうなずくリオン。
 だが、口に出して思い出す。旅人さんは、とてもやさしい人だった事を。
 主に、帝国国内を旅していると言っていたから、帝国に行けば会えるかもしれない。
 少し、楽しみになった。

「帝国には確かに、様々な人種がいますね。この国は、人間国家ですが、帝国は多種族の国家形成をしています。まぁ、皇帝はその中でも特に危険視されがちな、竜人種と決まっていますが。その妃は、種族の縛りは有りません。まぁ、皇帝の子供であれば必ず皇帝になるはずなので関係ありませんけど」
「そう、なの……竜……、竜、かぁ……」

 初めての迷宮で出会った竜種も、思い出してみればかっこよかったと思う。
 ならば、帝国に行けばもっともっといろいろな竜が見られるかもしれない。それも、楽しみになった。

「ですが、帝国に行くにはまず、砦の街を越えなければいけませんね」
「砦の、街?」
「そうです。関所も兼ねてます。まぁ、簡単に言えば、こちらの犯罪者などが帝国に亡命することを避けるような仕組みですね。砦を超えれば、すぐに帝国、というわけにはいきませんが、超えた後は帝国の砦に入るだけです。あそこはあそこで面白いつくりをしているので、一度見ておいて損はないでしょう」

 どう面白いのかは、わからないけれど、楽しみにしておいてください、とリオンはいう。
 見れば、わかるのだろう。
 ワクワクしてきた。

「……あ、で、でも……お、俺、通れる、の?」
「冒険者ギルドのカードが身分証となるので、大丈夫ですよ。そのカードが作られた時点で、あなたの国籍は無くなり、冒険者ギルドの預かりとなります。という、説明がされているはずですが?」
「し、知らない……聞いてない」

 頭の中で、受付の人が『説明したはずだっ!!』と叫んでいる光景が目に浮かぶ。
 リオンも何を思ったのか、いや、正しく受け取ったのだろう。多分、聞いていなかったのだな、という呆れた顔をした。

「逆に、冒険者ギルドを脱退するときは、その脱退してギルドカードを処分した時点で、滞在している国に帰属となります。まぁ、手続きはギルドがするんですけどね」

 私たちは、ただ申請するだけだと、リオンはいうけれど、冒険者ギルドは結構大変な仕事なんだな、と少し感心した。
 純粋に、仕事量が多いように感じるけれど。

「砦の街付近には、迷宮は有りませんが、通過するだけでいいですか?迷宮があるのは、少し離れた都市になりますが」
「そう、だね。通る、だけ。でも……街は、大きい?」
「そうですね。迷宮のある近くの街は、どうしてもお金が動くので、大きな街になります。まぁ、ここは商業都市も兼ねているので、殊更大きいのですが。ですが、王都に比べればマシなほうですよ」

 王都にはこの倍は人がいるそうだ。正直行きたくない。
 別に、王都に行く明確な理由はないのだから、行かなくてもいいのだけれど。
 でも、少し気になる。王都という場所がどんな場所なのか。
 それを言えば、リオンは少々複雑な顔をした。どう言い表していいのか、本当に複雑な顔だ、珍しい。
 ちなみに、砦の街には防犯上、冒険者ギルドが無いらしい。なぜなのかは分からない。
 が、傭兵ギルドは存在しているという。戦争になれば、駆り出される人たちだという。
 普段は、商人などの護衛依頼を受けたりする仕事を生業としているらしいが。
 そういえば、会ったことがない、と思い出す。関わった人物は、冒険者ギルドの人たちばかりだ。
 そもそもが、傭兵ギルドが人を守ることを生業としているのに対し、魔物を狩ることを生業としている冒険者がかかわること自体が少ないのだという。
 大きな商隊なんかになれば、傭兵ギルドと冒険者ギルド両方に依頼を出したりすることもあるらしいが、専門分野が異なるがゆえに、諍いもない。

「貴方が王都に行くことを止めはしませんが、勧めもしません。あなたの場合、簡単に騙されそうで」
「そ、そんなこと、ない」

 と、思う。そんなにカモみたいに見えるのだろうか?
 そんなに簡単には騙されない、と思うのだが。
 世の中、何が起こるかわからない、ということなのだろう。

「そうですか?この間だって、簡単にギルドカードを差し出したでしょう?悪用されれば、あなただって捕まってしまうのですよ?」
「そ、そう、なんだ……でも、大丈夫、だった」
「……どれだけ信頼を頂いているのかわかりませんが、これからは人を、私たちでさえ疑ってくださいね」

 そうする、と一つうなずく。
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