君が望んだ終焉の果てに

屑籠

文字の大きさ
上 下
27 / 47
ラジエラ編

12

しおりを挟む
「ただいまー、って、あれ?リオンは?」

 フラムドが、部屋に入ってきて辺りを見回す。
 そんなフラムドに理由を説明すれば、馬鹿かお前、とあきれた声で言われた。

「リオンもどっかぶっ飛んでるところがあるけどな、基本的に、ギルドカードを人に預けたりなんてするなよ」

 身分証であるギルドカードは絶対に失くすなと言われていたことを思い出した。
 失くしたら、面倒なのだと。
 あぁ、と今の会話で思い出す。
 あまり、身分証とは縁がない世界で生きてきたために、今まで忘れていた。

「そう、なんだ……」

 まぁ、あいつは裏切ったりしないからいいけど、と溜息を吐くフラムド。だが、どうしてそんなに心配しているのか、オビトは理解していない。
 だって、フラムドはオビトにとっては他人だ。
 前世、かかわっていたかもしれないが、今は知り合ったばかり。
 そんなフラムドが自分を心配する理由がない、と思っている。それは、事実だろう。
 リオンが帰ってくると、いい値で売れました!とニコニコしている珍しい顔をしていた。
 ギルドタグと、ギルドの明細書を見せられて、情報料が高く少し驚く。

「まぁ、この情報を見せられて行きたいと思うのはきっと、すごく奇特な人間でしょうが」
「……蛞蝓と蛭は無いわ。俺も行きたくない」

 確かに、迷宮の主はとんでもないモノたちだったが、それなりに面白い迷宮だったのに、とオビトは少し残念そうだ。

「そういえば、鏡合わせの迷宮には行きましたけど、次の目的地は有るのですか?」
「も、目的、地?」

 行きたい所は有るのかって聞いてんだよとフラムドが俺の前でいうけれど、行きたいところ……?と少し考える。

「あ、あの……帝国?、に、行きたい、かな?」

 帝国?と二人は首をかしげている。

「国内回らなくていいのか?」
「い、いい……む、むしろ、出て、行きたい」

 父がいる国にいると、何が起こるかわからない。
 ならば、国を出てしまったほうが楽だろう。

「まぁ、俺たちはお前がいいならそれで良いけど」

 ん?オビトは首を傾げた。
 何で俺が良いなら、良いのだろう?
 どうして?
 そう思っていると、リオンから溜息を吐かれた。

「あなた、もしかして一人で旅をしようとしていませんか?」
「えっ?」

 やっぱり、と頭を抱えて首を振るリオン。
 やっぱり、とはどういう意味なのか。
 パーティを組んでいるわけでもないオビトは、自分一人で行動することに疑問を抱かない。
 疑問、というか問題があるわけではないが、彼らにとっては問題行動だった。

「俺たちも一緒だよ、馬鹿」
「ひ、人のこと、バカバカ、言い過ぎ、だろ……」
「馬鹿に馬鹿と言って何が悪いのでしょうか?そもそも、私たちはあなたに付いて行きますよ」
「な、何で?」
「貴方が、原初の魔王だからです。私たちには護衛する義務がある」

 いや、知らんし。とオビトの心の中は一瞬、虚無となった。
 
「ぎ、義務?な、何で?」
「原初の魔王には必要なかっただろうがな、お前はすぐに怪我したりするだろうが」

 何かあっても面倒だ、とそのまま言うフラムドに、なぜ?と首をかしげてしまう。
 かみ合わない会話に、先に音を上げたのはフラムド達だった。
 お互いに顔を見合わせた彼らは、いいから、俺たちも付いて行く、と強引に決めてしまう。
 いっそ、パーティ申請でもしてしまうか、とリオンとフラムドが話し合っているが、そんなことはどうでもいい。
 パーティなど入らないし、そもそも、冒険者としてあることが、ある意味不本意だ。

「……ねぇちゃん」

 どうしたらいいのだろう?気が付いたら、姉に助けを求めていた。
 ねぇちゃん、ねぇちゃん、俺はどうしたら良いのだろう?
 教えてくれよ……。この二人、なんだか怖いよ。
 次の日、二人に連れられてギルドに向かう。

「あ、あのっ」
「あ、そこのねぇちゃん、こいつを俺たちのパーティに入れる手続き、してくれないか?」
「い、いやっ、あのっ、俺、パーティに、入らない、から……」
「こいつの言い分は聞かないでいいから、ちゃっちゃとしてくれ」

 強引にギルドタグを取られて手続きを、というフラムド。
 リオンもフラムドを止めようとしない。

「ふ、フラムドっ!」
「うるせぇ。黙ってろ」
「お、俺はっ」
「私は、お二人と行動することはとても良いことだと思いますよ、オビトさん」

 にっこりと笑う受付の人に、裏切りを感じてしまう。
 ギルドは常に公平であるべきではないのだろうか?

「オビトさんは、ギルドタグにも書かれていましたが、どうにも世間知らずのきらいがあるみたいなので」
「いいこと言うねぇ!」

 さくっと、彼女は手続きをして、ギルドカードには、パーティ名とそのランクが記載された。

「A ランク?」
「あぁ、下がっちまったか。まぁ、妥当だな」

 パーティランクのほうが、自分のランクよりも高いのか、と思う。
 これ、どうしたら良いのだろう?と不安が心に巣くう。
 一人の時は、周りを気にしなくても済んだのに、どうしたら……どうしたらいいのか。

「お、俺は……」
「お前に合わせてやるから、無理にこっちに都合付けなくたっていい」
「そうですよ。今まで通り、好き勝手に生きればいいんです。フォローぐらい、しますよ」

 フォローも何も、ついて来られることに迷惑なんだが。
 そう、思わなくもない。
 集団生活に、自分がこれほどまでに不適合だとは思わなかった。

「……ひとりになりたい」

 ぽつり、と呟いた。
 諦めろ、とフラムドとリオンは言う。
 諦めが付くわけもなくて、どうしようとさらに悩んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

青少年病棟

BL
性に関する診察・治療を行う病院。 小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。 ※性的描写あり。 ※患者・医師ともに全員男性です。 ※主人公の患者は中学一年生設定。 ※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

処理中です...