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ラジエラ編
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「ただいまー、って、あれ?リオンは?」
フラムドが、部屋に入ってきて辺りを見回す。
そんなフラムドに理由を説明すれば、馬鹿かお前、とあきれた声で言われた。
「リオンもどっかぶっ飛んでるところがあるけどな、基本的に、ギルドカードを人に預けたりなんてするなよ」
身分証であるギルドカードは絶対に失くすなと言われていたことを思い出した。
失くしたら、面倒なのだと。
あぁ、と今の会話で思い出す。
あまり、身分証とは縁がない世界で生きてきたために、今まで忘れていた。
「そう、なんだ……」
まぁ、あいつは裏切ったりしないからいいけど、と溜息を吐くフラムド。だが、どうしてそんなに心配しているのか、オビトは理解していない。
だって、フラムドはオビトにとっては他人だ。
前世、かかわっていたかもしれないが、今は知り合ったばかり。
そんなフラムドが自分を心配する理由がない、と思っている。それは、事実だろう。
リオンが帰ってくると、いい値で売れました!とニコニコしている珍しい顔をしていた。
ギルドタグと、ギルドの明細書を見せられて、情報料が高く少し驚く。
「まぁ、この情報を見せられて行きたいと思うのはきっと、すごく奇特な人間でしょうが」
「……蛞蝓と蛭は無いわ。俺も行きたくない」
確かに、迷宮の主はとんでもないモノたちだったが、それなりに面白い迷宮だったのに、とオビトは少し残念そうだ。
「そういえば、鏡合わせの迷宮には行きましたけど、次の目的地は有るのですか?」
「も、目的、地?」
行きたい所は有るのかって聞いてんだよとフラムドが俺の前でいうけれど、行きたいところ……?と少し考える。
「あ、あの……帝国?、に、行きたい、かな?」
帝国?と二人は首をかしげている。
「国内回らなくていいのか?」
「い、いい……む、むしろ、出て、行きたい」
父がいる国にいると、何が起こるかわからない。
ならば、国を出てしまったほうが楽だろう。
「まぁ、俺たちはお前がいいならそれで良いけど」
ん?オビトは首を傾げた。
何で俺が良いなら、良いのだろう?
どうして?
そう思っていると、リオンから溜息を吐かれた。
「あなた、もしかして一人で旅をしようとしていませんか?」
「えっ?」
やっぱり、と頭を抱えて首を振るリオン。
やっぱり、とはどういう意味なのか。
パーティを組んでいるわけでもないオビトは、自分一人で行動することに疑問を抱かない。
疑問、というか問題があるわけではないが、彼らにとっては問題行動だった。
「俺たちも一緒だよ、馬鹿」
「ひ、人のこと、バカバカ、言い過ぎ、だろ……」
「馬鹿に馬鹿と言って何が悪いのでしょうか?そもそも、私たちはあなたに付いて行きますよ」
「な、何で?」
「貴方が、原初の魔王だからです。私たちには護衛する義務がある」
いや、知らんし。とオビトの心の中は一瞬、虚無となった。
「ぎ、義務?な、何で?」
「原初の魔王には必要なかっただろうがな、お前はすぐに怪我したりするだろうが」
何かあっても面倒だ、とそのまま言うフラムドに、なぜ?と首をかしげてしまう。
かみ合わない会話に、先に音を上げたのはフラムド達だった。
お互いに顔を見合わせた彼らは、いいから、俺たちも付いて行く、と強引に決めてしまう。
いっそ、パーティ申請でもしてしまうか、とリオンとフラムドが話し合っているが、そんなことはどうでもいい。
パーティなど入らないし、そもそも、冒険者としてあることが、ある意味不本意だ。
「……ねぇちゃん」
どうしたらいいのだろう?気が付いたら、姉に助けを求めていた。
ねぇちゃん、ねぇちゃん、俺はどうしたら良いのだろう?
教えてくれよ……。この二人、なんだか怖いよ。
次の日、二人に連れられてギルドに向かう。
「あ、あのっ」
「あ、そこのねぇちゃん、こいつを俺たちのパーティに入れる手続き、してくれないか?」
「い、いやっ、あのっ、俺、パーティに、入らない、から……」
「こいつの言い分は聞かないでいいから、ちゃっちゃとしてくれ」
強引にギルドタグを取られて手続きを、というフラムド。
リオンもフラムドを止めようとしない。
「ふ、フラムドっ!」
「うるせぇ。黙ってろ」
「お、俺はっ」
「私は、お二人と行動することはとても良いことだと思いますよ、オビトさん」
にっこりと笑う受付の人に、裏切りを感じてしまう。
ギルドは常に公平であるべきではないのだろうか?
「オビトさんは、ギルドタグにも書かれていましたが、どうにも世間知らずのきらいがあるみたいなので」
「いいこと言うねぇ!」
さくっと、彼女は手続きをして、ギルドカードには、パーティ名とそのランクが記載された。
「A ランク?」
「あぁ、下がっちまったか。まぁ、妥当だな」
パーティランクのほうが、自分のランクよりも高いのか、と思う。
これ、どうしたら良いのだろう?と不安が心に巣くう。
一人の時は、周りを気にしなくても済んだのに、どうしたら……どうしたらいいのか。
「お、俺は……」
「お前に合わせてやるから、無理にこっちに都合付けなくたっていい」
「そうですよ。今まで通り、好き勝手に生きればいいんです。フォローぐらい、しますよ」
フォローも何も、ついて来られることに迷惑なんだが。
そう、思わなくもない。
集団生活に、自分がこれほどまでに不適合だとは思わなかった。
「……ひとりになりたい」
ぽつり、と呟いた。
諦めろ、とフラムドとリオンは言う。
諦めが付くわけもなくて、どうしようとさらに悩んだ。
フラムドが、部屋に入ってきて辺りを見回す。
そんなフラムドに理由を説明すれば、馬鹿かお前、とあきれた声で言われた。
「リオンもどっかぶっ飛んでるところがあるけどな、基本的に、ギルドカードを人に預けたりなんてするなよ」
身分証であるギルドカードは絶対に失くすなと言われていたことを思い出した。
失くしたら、面倒なのだと。
あぁ、と今の会話で思い出す。
あまり、身分証とは縁がない世界で生きてきたために、今まで忘れていた。
「そう、なんだ……」
まぁ、あいつは裏切ったりしないからいいけど、と溜息を吐くフラムド。だが、どうしてそんなに心配しているのか、オビトは理解していない。
だって、フラムドはオビトにとっては他人だ。
前世、かかわっていたかもしれないが、今は知り合ったばかり。
そんなフラムドが自分を心配する理由がない、と思っている。それは、事実だろう。
リオンが帰ってくると、いい値で売れました!とニコニコしている珍しい顔をしていた。
ギルドタグと、ギルドの明細書を見せられて、情報料が高く少し驚く。
「まぁ、この情報を見せられて行きたいと思うのはきっと、すごく奇特な人間でしょうが」
「……蛞蝓と蛭は無いわ。俺も行きたくない」
確かに、迷宮の主はとんでもないモノたちだったが、それなりに面白い迷宮だったのに、とオビトは少し残念そうだ。
「そういえば、鏡合わせの迷宮には行きましたけど、次の目的地は有るのですか?」
「も、目的、地?」
行きたい所は有るのかって聞いてんだよとフラムドが俺の前でいうけれど、行きたいところ……?と少し考える。
「あ、あの……帝国?、に、行きたい、かな?」
帝国?と二人は首をかしげている。
「国内回らなくていいのか?」
「い、いい……む、むしろ、出て、行きたい」
父がいる国にいると、何が起こるかわからない。
ならば、国を出てしまったほうが楽だろう。
「まぁ、俺たちはお前がいいならそれで良いけど」
ん?オビトは首を傾げた。
何で俺が良いなら、良いのだろう?
どうして?
そう思っていると、リオンから溜息を吐かれた。
「あなた、もしかして一人で旅をしようとしていませんか?」
「えっ?」
やっぱり、と頭を抱えて首を振るリオン。
やっぱり、とはどういう意味なのか。
パーティを組んでいるわけでもないオビトは、自分一人で行動することに疑問を抱かない。
疑問、というか問題があるわけではないが、彼らにとっては問題行動だった。
「俺たちも一緒だよ、馬鹿」
「ひ、人のこと、バカバカ、言い過ぎ、だろ……」
「馬鹿に馬鹿と言って何が悪いのでしょうか?そもそも、私たちはあなたに付いて行きますよ」
「な、何で?」
「貴方が、原初の魔王だからです。私たちには護衛する義務がある」
いや、知らんし。とオビトの心の中は一瞬、虚無となった。
「ぎ、義務?な、何で?」
「原初の魔王には必要なかっただろうがな、お前はすぐに怪我したりするだろうが」
何かあっても面倒だ、とそのまま言うフラムドに、なぜ?と首をかしげてしまう。
かみ合わない会話に、先に音を上げたのはフラムド達だった。
お互いに顔を見合わせた彼らは、いいから、俺たちも付いて行く、と強引に決めてしまう。
いっそ、パーティ申請でもしてしまうか、とリオンとフラムドが話し合っているが、そんなことはどうでもいい。
パーティなど入らないし、そもそも、冒険者としてあることが、ある意味不本意だ。
「……ねぇちゃん」
どうしたらいいのだろう?気が付いたら、姉に助けを求めていた。
ねぇちゃん、ねぇちゃん、俺はどうしたら良いのだろう?
教えてくれよ……。この二人、なんだか怖いよ。
次の日、二人に連れられてギルドに向かう。
「あ、あのっ」
「あ、そこのねぇちゃん、こいつを俺たちのパーティに入れる手続き、してくれないか?」
「い、いやっ、あのっ、俺、パーティに、入らない、から……」
「こいつの言い分は聞かないでいいから、ちゃっちゃとしてくれ」
強引にギルドタグを取られて手続きを、というフラムド。
リオンもフラムドを止めようとしない。
「ふ、フラムドっ!」
「うるせぇ。黙ってろ」
「お、俺はっ」
「私は、お二人と行動することはとても良いことだと思いますよ、オビトさん」
にっこりと笑う受付の人に、裏切りを感じてしまう。
ギルドは常に公平であるべきではないのだろうか?
「オビトさんは、ギルドタグにも書かれていましたが、どうにも世間知らずのきらいがあるみたいなので」
「いいこと言うねぇ!」
さくっと、彼女は手続きをして、ギルドカードには、パーティ名とそのランクが記載された。
「A ランク?」
「あぁ、下がっちまったか。まぁ、妥当だな」
パーティランクのほうが、自分のランクよりも高いのか、と思う。
これ、どうしたら良いのだろう?と不安が心に巣くう。
一人の時は、周りを気にしなくても済んだのに、どうしたら……どうしたらいいのか。
「お、俺は……」
「お前に合わせてやるから、無理にこっちに都合付けなくたっていい」
「そうですよ。今まで通り、好き勝手に生きればいいんです。フォローぐらい、しますよ」
フォローも何も、ついて来られることに迷惑なんだが。
そう、思わなくもない。
集団生活に、自分がこれほどまでに不適合だとは思わなかった。
「……ひとりになりたい」
ぽつり、と呟いた。
諦めろ、とフラムドとリオンは言う。
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