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ラジエラ編
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side ???
「スパンが短すぎるとは思わないか?」
オビトが倒れてから、パチッと目を覚ました彼はぼんやりとした目でそう言った。
フラムドが呆れたように言いながら、手を差し出す。
「そりゃ、前の迷宮から四日しかたってねぇからな」
はぁ、とため息を吐き、フラムドの手を握りながら起き上がると、よぅ、と炎王に向かって手をあげて挨拶をする。
すると、炎王はむ?と少し驚いたような顔をして、おぉっ!と言った声を出した。
『おぉっ!久しぶりではないか!!元気であったか!?』
オビト?がオビトでは無いことに気が付いたのだろう。
懐かしそうな相手にする声色になる。
そもそも、気が付いていたようで全く気が付いていなかったのだろう。
「ウルセェ……元気だよ。お前には負けるけどなっ!」
はっはっはっ、と快活に笑う炎王に、辟易とした顔をするオビト?は、はぁ、と再びため息を吐く。
炎王、というだけあって元気がいい。
燃えるように赤い髪、赤い刀身の大剣。全てが、彼を炎王足らしめている。
「何で思念体の癖に、こんなに元気なんだ……」
西王もそうだったが、なぜ勇者というのは思念体になってまで濃ゆい連中ばかりなんだ、と内心で思う。
『思念体だからこそ、だなっ!!疲れを知らんっ!!』
「人選ミスったかもしれないな……」
人柱に、人選などあるのだろうか?と少し疑問に思うが。
はっはっはっ!!と笑っていた彼は、さて、と珍しく真剣な声を出す。
それには、リオンもフラムドも驚いていた。だが、オビトだけは彼がこんな人物だと知っている。
元々は、王と言われるだけあって、真面目な人物だ。
『他の魔王候補達が動いておるのは、知っておるか?』
「……大体な。俺の血が齎す範囲だけだが」
自分の、原初の血が齎す情報は、全て彼の中に入って来ている。
うむ、と言った感じに炎王は両腕を組んだままうなずく。
魔王候補、というのは正確にはまだ魔王ではない。けれど、その魂が前世魔王だったり、原初の魔王の血が濃すぎるが故に魔王となりうるものの総称だ。
『そうか……魔王達の中には、他の候補を排除しようとしている動きを見せているもの達がいる。気をつけよ』
「知ってる……こいつの村を襲ったのも、魔王候補の手下達だ」
オビトを狙ったのか、それとも姉を狙ったのか。それははっきりと分からないけれど。
それを、知っているがオビトに知らせるつもりはない。
そもそも、やったと知っていても、その魔王候補が誰かもわからない。
オビトが復習を望んでいるのかさえ、彼にはわからない。
村に関してのオビトの心情は、複雑なものだった。
オビト?が感じ取れないほど。
『ならばよし。だが……魔王候補たちに好き勝手させておいて良いものか』
「いい。そもそも、こいつは魔王候補なんかじゃねぇよ……俺、そのものだ」
オビト?の言葉に、炎王は少し驚いていた。
ふはっ、とそんな炎王の顔に、珍しいものを見たと笑う。
「アンタそのものって……どう言うことだ?」
「ん?あぁ、そうだな……俺の望んだ姿、といえば良いのか?俺の魂が入ってるって話はしただろう?」
リオンとフラムドがうなずく。
話をした、と言っても一方的に話して脅していた、と言ったほうが正しいのかもしれないが。
だが、オビトを排除するように要請しようとしたフィンリルを怒ったのは記憶に新しい。
「俺が望んで、転生した姿がオビトだ。だが……この迷宮に潜り、俺が現れた事からもわかるだろう?」
「……彼が、消えるかもしれない、と?いずれ、貴方が彼を乗っ取る可能性がある、と」
「そうだ……俺はそんなこと、望んじゃいないのに、な……だが、オビト惹かれてしまう。無意識に、俺の魔力に。自分の願いを叶える、勇者に。それは誰にも止められはしない」
「そうして、求める末に、彼は貴方に飲み込まれる……」
そうだ、とオビト?は悲しそうに笑う。
オビトを本当に大切に思っているからこそ、だろうとは思うけれど。
『彼の望みがそうならば、仕方あるまい』
「仕方ない、で終わらせたくはないんだけどな……そろそろ、行くわ」
話は終いだとオビト?は炎王に背を向けて歩き出す。
その姿を見送る炎王は、困ったものだと笑った。
フラムドたちは、炎王にペコリと頭を下げてからオビトを追いかける。
そんな姿を、眩しそうに炎王は見つめていた。
『主の望みは高みが過ぎよう……』
全く仕方のない人だと、まるで姿からは想像もできない年寄りのように笑う。
そうして、炎王はそっと息を吐く。
『……魔王の望みはいつだって変わらぬ。いつだって、な。望みすぎるのは、人のみよ』
愚かよの、と笑う声が響きながら、迷宮の最下層は暗闇に閉じられた。
「スパンが短すぎるとは思わないか?」
オビトが倒れてから、パチッと目を覚ました彼はぼんやりとした目でそう言った。
フラムドが呆れたように言いながら、手を差し出す。
「そりゃ、前の迷宮から四日しかたってねぇからな」
はぁ、とため息を吐き、フラムドの手を握りながら起き上がると、よぅ、と炎王に向かって手をあげて挨拶をする。
すると、炎王はむ?と少し驚いたような顔をして、おぉっ!と言った声を出した。
『おぉっ!久しぶりではないか!!元気であったか!?』
オビト?がオビトでは無いことに気が付いたのだろう。
懐かしそうな相手にする声色になる。
そもそも、気が付いていたようで全く気が付いていなかったのだろう。
「ウルセェ……元気だよ。お前には負けるけどなっ!」
はっはっはっ、と快活に笑う炎王に、辟易とした顔をするオビト?は、はぁ、と再びため息を吐く。
炎王、というだけあって元気がいい。
燃えるように赤い髪、赤い刀身の大剣。全てが、彼を炎王足らしめている。
「何で思念体の癖に、こんなに元気なんだ……」
西王もそうだったが、なぜ勇者というのは思念体になってまで濃ゆい連中ばかりなんだ、と内心で思う。
『思念体だからこそ、だなっ!!疲れを知らんっ!!』
「人選ミスったかもしれないな……」
人柱に、人選などあるのだろうか?と少し疑問に思うが。
はっはっはっ!!と笑っていた彼は、さて、と珍しく真剣な声を出す。
それには、リオンもフラムドも驚いていた。だが、オビトだけは彼がこんな人物だと知っている。
元々は、王と言われるだけあって、真面目な人物だ。
『他の魔王候補達が動いておるのは、知っておるか?』
「……大体な。俺の血が齎す範囲だけだが」
自分の、原初の血が齎す情報は、全て彼の中に入って来ている。
うむ、と言った感じに炎王は両腕を組んだままうなずく。
魔王候補、というのは正確にはまだ魔王ではない。けれど、その魂が前世魔王だったり、原初の魔王の血が濃すぎるが故に魔王となりうるものの総称だ。
『そうか……魔王達の中には、他の候補を排除しようとしている動きを見せているもの達がいる。気をつけよ』
「知ってる……こいつの村を襲ったのも、魔王候補の手下達だ」
オビトを狙ったのか、それとも姉を狙ったのか。それははっきりと分からないけれど。
それを、知っているがオビトに知らせるつもりはない。
そもそも、やったと知っていても、その魔王候補が誰かもわからない。
オビトが復習を望んでいるのかさえ、彼にはわからない。
村に関してのオビトの心情は、複雑なものだった。
オビト?が感じ取れないほど。
『ならばよし。だが……魔王候補たちに好き勝手させておいて良いものか』
「いい。そもそも、こいつは魔王候補なんかじゃねぇよ……俺、そのものだ」
オビト?の言葉に、炎王は少し驚いていた。
ふはっ、とそんな炎王の顔に、珍しいものを見たと笑う。
「アンタそのものって……どう言うことだ?」
「ん?あぁ、そうだな……俺の望んだ姿、といえば良いのか?俺の魂が入ってるって話はしただろう?」
リオンとフラムドがうなずく。
話をした、と言っても一方的に話して脅していた、と言ったほうが正しいのかもしれないが。
だが、オビトを排除するように要請しようとしたフィンリルを怒ったのは記憶に新しい。
「俺が望んで、転生した姿がオビトだ。だが……この迷宮に潜り、俺が現れた事からもわかるだろう?」
「……彼が、消えるかもしれない、と?いずれ、貴方が彼を乗っ取る可能性がある、と」
「そうだ……俺はそんなこと、望んじゃいないのに、な……だが、オビト惹かれてしまう。無意識に、俺の魔力に。自分の願いを叶える、勇者に。それは誰にも止められはしない」
「そうして、求める末に、彼は貴方に飲み込まれる……」
そうだ、とオビト?は悲しそうに笑う。
オビトを本当に大切に思っているからこそ、だろうとは思うけれど。
『彼の望みがそうならば、仕方あるまい』
「仕方ない、で終わらせたくはないんだけどな……そろそろ、行くわ」
話は終いだとオビト?は炎王に背を向けて歩き出す。
その姿を見送る炎王は、困ったものだと笑った。
フラムドたちは、炎王にペコリと頭を下げてからオビトを追いかける。
そんな姿を、眩しそうに炎王は見つめていた。
『主の望みは高みが過ぎよう……』
全く仕方のない人だと、まるで姿からは想像もできない年寄りのように笑う。
そうして、炎王はそっと息を吐く。
『……魔王の望みはいつだって変わらぬ。いつだって、な。望みすぎるのは、人のみよ』
愚かよの、と笑う声が響きながら、迷宮の最下層は暗闇に閉じられた。
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