君が望んだ終焉の果てに

屑籠

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ラジエラ編

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 次の日、早々に準備をして宿屋を後にする。

「こらこらこら、俺たちを置いていこうとするんじゃない」
「目を離せば、油断も隙もない」

 よしっ、と宿屋の前で意気込んでいると、後ろから肩を掴まれてびっくりして、肩が跳ねた。
 掴まれた肩を振り払うように振り返れば、フラムドとリオンが全く、と言った顔でそこにいて、ため息を吐いている。
 今回は誘っていなかったのだが……。

「え、えっと?」
「お前が霧の迷宮を一人で踏破出来るぐらいの強さは知ってるよ?でもな、普通、迷宮に一人で潜ったりしないからな?危ないだろ?」

 えっ、とオビトが驚きの声をあげる。オビトは、一番最初の迷宮も一人で踏破していた。
 迷宮に潜って、楽しいなどの感情はあったものの、危ないという感情を持ったことがない。
 迷宮が自分に襲いかかってくるとも思ったことがない。
 罠は全部見つけられるし、興味はあるけれど引っ掛かるような真似はしない。
 それに、出てくるモンスターたちは、オビトでも十分対処可能だったし。

「そ、そう、なの?」
「そうですよ。それに……また、倒れますよ?」

 うっ、と言葉に詰まる。
 自分の中のもう一人の自分が、何とかするんじゃないかな、と思っているのだが、これは甘えだろうか?
 それとも、彼に関して心配なのだろうか?
 いや、確かに自分の意識がない中、勝手に動き回られるのはちょっと怖いかもしれないけれど、でも、変なことをしてるわけではないので、オビトとしては別に構わない。

「まぁ、とりあえず行こうぜ」

 と、とりあえず歩く。何となく、補導されているような気がするのだが、気のせいだろうか?
 また、違う乗合馬車で、目的地に降り立つ。
 勇者の迷宮は、初心者にはやはり人気のようで、初々しい冒険者たちがゾロゾロと一緒に降りたった。
 一緒に降りたとしても、迷宮は一つ。5分ほど時間を明けてから次のパーティーが入っていくという仕組みをとっていた。
 フラムドとリオンがいる分、急ぎではないので、列の最後尾に並んでまつ。
 本当は、この迷宮の仕掛けにも色々気になるところだけれど、起動させたりして実験するのを、この二人は許してくれそうにもない。
 中に入り、奥まで行く途中、やはり魔王の迷宮と同じ形をしているから、ふむふむと見物していく。
 あ、そういえばと思い出す。奥の、魔法陣に行く手前に、罠があるのを。
 魔法陣の方にフラムドたちが行くのを見て、そっと罠に触れてみる。

「あっ、ばかっ!!」

 気が付いたのだろう、フラムドがさけぶ。
 リオンも何をっ!と驚いた顔をしていた。
 殺す気でかかってくる罠を見て、おぉーっ、と驚く。
 まぁ、こんな罠で引っかかる奴はいないだろうっていう罠なのだが、起動させてみればどこからともなく、火の玉が飛んでくる。
 魔法を使った罠だったのか、と感心した。
 ひらり、ひらりと躱すけれど、どこまで飛んでくるのか、ちょっと気になっが、リオンが俺の腕を掴み魔法陣へと引き込んだ。

「え、あ」
「馬鹿ですか貴方、馬鹿でしょう!?何で起動させるんですか!?」
「き、気になって?」

 ばかっ!!と二人から言われてしまった。
 そう言えば、前の迷宮の時も何で起動するのかってファニアにも言われてしまった記憶がある。
 皆んな、気にならないのだろうか?どんな罠が仕掛けてあるのか。
 オビト的には興味津々と言ったところなのだが……。
 最後まで見れなかったのは残念だが、まぁ、いいか、と気持ちを切り替える。
 はぁ、とため息を吐く二人は見ないふりだ。
 最下層まで行くと、熱血漢みたいな人がかっかっかっ、と笑っている。

「えっ、ギャップ……」

 西王は、王というだけあって優美さを感じたというのに。
 勇者、というのはあぁ言う感じの高貴な人を想像していたと言うのに。
 何という暑苦しさ。
 しかし、想像しうる勇者、と言うのには程遠い気もするのだが。
 彼は、誰の勇者だったのだろうか?

『お、何だ?スッゲェ、ちんまいのになったな』
「ま、まだ、成長期、だし……っ!!」
「炎王……」
『お前たちも久しぶりだなっ!稽古でもつけに来たのか?』

 暑苦しい、と言わんばかりのリオンの顔。
 フラムドは、なんかすごく微妙な顔をしている。
 聞きたいことが、あったのだと口を開こうとした矢先、炎王が言う。

『まぁ、何でもいいかっ!!それより、受け取れ魔王!』

 すっごく、あっけらかんと笑うその人は、細かい事などあまり気にしていないのだろう。
 いや、本当にこの人勇者なの?
 目の前に現れた、お決まりの魔石。だめだ、聞ける雰囲気じゃない、と諦めてそれに触れると、やはり弾けて中に入ってくる。
 いつもの如く、意識が薄れていく。
 全く、と言った声が聞こえてきた気がするのだけれど、それが本当かどうかなんてわかりはしないけれど。
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