君が望んだ終焉の果てに

屑籠

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ラジエラ編

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side オビト

 目が覚めれば、宿屋のベッドの上にいた。最近、こう言うことが多い気がする。
 また、三日が過ぎたのだろうか?なぜ、あの魔石に触れると意識を三日無くすのか。それは分からない。
 確認するために、起きて身支度を整えると一階に降りた。
 一階には、あのコンシェルジュがいて、意を決して話しかける。

「あ、あのっ」
「おや、おはようございます、オビト様。三日振りでございますね」

 あぁ、やはり三日が過ぎていた。
 おはよ、と言いながらえっと、と話す。

「お、俺、どうやって、ここに?」
「……ご自分の足で、こちらまでいらっしゃっておりました」

 どこか、言いにくそうにするコンシェルジュに首をかしげる。
 もう一人の自分とは、一体何者なのだろうか?と常に考えていた。
 しかし、コンシェルジュが困るほど、自分は違った存在だったのだろうか?

「そ、そっか。あり、がと……」
「いいえ、ご無事で何よりでございます」

 へへっ、と笑うと珍しいものを見たように少しだけコンシェルジュは驚いていた。
 そんな彼と別れ、部屋に戻る。まだ、宿泊は五日あるはずだから、一日ぐらい休んだところで大丈夫だろう。
 それよりも、記憶の整理がしたかった。
 ベッドの上に転がると、ふぅ~、息を吐く。

「原初の魔王……確かに特別な人なんだな……」

 今回の記憶は、記憶ではなくて知識だった。
 魔王、という生き物について。勇者について。
 あの迷宮にいる、魔王と勇者について。

「全ての魔物、魔族の源……勇者は、魔王の望みを叶える存在……」

 魔王が勇者を探しているのは、自分の望みを叶えたいから?
 魔王の望みは……。

「魔王は、自分の子供が欲しくて……でも、魔王は、子供が出来ない体で……」

 どこか、頭が痛む。
 受け入れた記憶にも知識にも、欠落している部分がある。
 そう、はっきりとわかる。大切なことなのに、分からない。
 自分の中のもう一人の自分が、悲しそうに顔を歪めるのがわかる。
 それに、知識の中には、原初の魔王とは別の魔王、魔王候補についても触れていた。
 だが、それについては朧げにしか思い出せない。
 ただ、その魔王候補たちにも勇者がいるということだけはわかる。原初の魔王とは、違うけれど……。

「勇者……勇者に会えば、わかるかな?」

 出会えば、出会ってしまえば、わかるだろう。
 自分の勇者という存在に。
 そもそも、原初の魔王の勇者は、一番最後の勇者だ。
 迷宮の主にはなってないはず。だって、原初の魔王の前世をもつ自分がここにいるのだから。
 ならば、勇者も転生しているのではないか?という推測は正しいのだろう。
 ……本当に?

「勇者の迷宮に、行ってみないと……」

 少しでも、勇者の情報が欲しかった。
 自分の望みを叶える存在に、会って……それで……。
 そもそも、もう一人の自分が望んだのは何なのだろう?
 迷宮の主人は、ある意味柱だ。人柱、ならぬ魔柱。世界を支えている。
 だが、もう一人の自分のいた世界には、迷宮などなかった。
 ならば、この世界は何なのだろう?
 考えれば考えるほど、ドツボにハマる気がした。
 よし、と起き上がったオビトは、バッグを確認して、買い物にいく事にする。
 携帯食など、買わなければいけない。
 どうやら、自分が寝込んでいた間、もう一人の自分が行動していたみたいだ。
 おかげで、体が痛くなかったり、お腹がすごく減るっていうこともないから、ありがたいのだろう。
 自分ではちょっと分からないし、彼が出ていた時の記憶は全くないから、何をしているのか不安でしかないけれど。

「あっ」

 食料品を買ってから、ふとあの日の雑貨屋に目がいく。
 今のところ、欲しいものはなかったけれど、店先に置いてあった古い地図が少し気になって中に入る。
 中に入り、一つの地図を手に取った。穴が多いその地図は、霧の迷宮の地図だろう。
 冒険者ギルドに置いてあるものよりは劣化している分、最新の地図ではないのだろう。だから、雑貨屋で販売ができる。
 最新の地図はギルドが、冒険者から情報を買い、独占している状態だ。その分、ギルドの地図は高くなっているのだが。
 暇つぶしにはちょうどいいかもしれない、とその地図を購入する。
 あまり人気がないのだろう。こんな地図どうするんだ?と雑貨屋のオジサンは少し怪訝そうな顔をしていたけれど。
 中途半端に時間が余ったので、前回この雑貨屋に来たときと同じルートを通り、教会に向かった。
 教会の中で、目立たないような位置に座り、またお祈りを捧げる。姉が、村の人たちが、どうか光ある道を逝けるように。
 この祈りになんの意味があるのかは分からないけれど、だけど、少しでも姉のためになればいいと思った。
 それから、宿屋に戻り、明日は勇者の迷宮に行くことを決める。
 宿を延長するか少し悩んだが、しないで行くことに決めた。
 残り、4日あれば目が覚めても間に合うだろう。
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