君が望んだ終焉の果てに

屑籠

文字の大きさ
上 下
16 / 47
ラジエラ編

ラジエラ編 1

しおりを挟む
 旅の支度は、ファニアに手伝ってもらったこともあり、ラジエラの街まで間に合った。
 道は、綺麗とは言い難いがちゃんと舗装されており、辿っていけば楽に、とは言い難いがたどり着けるはずだったのだが、オビトだ。
 森の中を通り、今まで通りに過ごしながら旅をしていた。
 一人旅であり、森での暮らしは、街に疲れていただろうオビトを慰める。
 あまり、森から離れたくなくて、随分と時間が経ってしまったようにも思う。
 とうとう、野菜などの備蓄が切れて、街まで向かう決意が出来たのだが。

「……大きい……グレハスより大きい?」

 ぼんやりと街を囲む塀を見上げる。
 えっと、と冒険者用の入り口が無いか探してみる。
 きょろきょろと辺りを見回せば、冒険者らしき風貌の人たちが、街の北側に向っていくのが分かる。
 それを追っていけば、冒険者が並ぶ冒険者用の門が見えてきた。
 ほっとして、行列に並ぶ。
 受付までに少し時間はかかったが、それでも正面だと思われる南側の門よりはマシだ。
 ギルドカードを見せれば、少し驚いた顔をされたけれど、いったいどう言う意味なのか。オビトにはちょっとどころかわからない。
 ギルドカードには、オビトの討伐記録などがあり、門にある魔道具では、ざっくりと見れるのだが、そこに書いてある一番最初にオジカとくれば、誰だって驚くというものだ。それも、オビトの様子からは考えられないぐらい、意外な魔獣であるから。
 それに、最近討伐した魔獣なども、本当にオビトが?と疑うような魔物ばかりだ。
 ただ、違法性に関して魔道具が反応しなかったことから、それが事実と言えることは間違いない。
 通ってよし、と言われホッとしながら中に入る。
 あ、と思ったときには次の入場者を相手にしていて、聞くことが出来なかった。

「ぎ、ギルド、どこ……?」

 受付の人に、着いたらギルドに行けって言われていたし、この街の宿も知らない。
 人も多すぎて、オビトは戸惑ってきていた。
 きょろきょろと辺りを見回し、どこに行けばいいのか迷っていると、きゃあきゃあと言った声が聞こえてくる。
 その声の方向へ向かう人が増えたようにも思う。じゃまよっ!とか女の人の声が多い。血の気が多いというべきか。ちょっと怖い。
 道の端によって、人を観察しながら建物を見る。冒険者ギルド、とうのは大きな建物だろうか?きっとそうだろうと、辺りを付け、上の方に目を向けた。
 先ほどは、人に酔っていてわからなかったが、上を見れば先の街で見た冒険者ギルドの旗が見えた。
 そこに行けば、ギルドに辿り着けるだろう。よしっ、と気合を入れて歩き出す。
 しかし、向かうべき方向に、人が集まっている。というか、道が塞がっていた。
 さて、どうしようか?
 周り道をしなければならないだろう。まさか、ギルドの前まで道が塞がっていることはないだろう。
 そもそも、騒ぎの中心にいるのは誰なのだろうか?ちょっと気になるけれど、これだけの人だ。見ることさえ叶わないだろう。
 人の少なくなった道を歩き、ギルドの旗を見に時々顔をあげて旗を確認する。
 人混みを避けていたら、なぜかギルドに全く近づいていない気がした。
 どうやら、この人混みを突き抜けていくしかなさそうだ。
 最悪だ、とオビトは息を吐き、意を決して人混みへと足を向けた。
 人にぶつからないように、と思っていてもぶつかってしまう。
 だが、ぶつかってしまった人は、気にしてないみたいでただただ前に前に進もうとしていた。
 どうでもいいのだが、通してほしい。
 なるべく接触を避けるように前に前に進むと、ようやく冒険者ギルドらしき建物が見えてくる。
 何となくだが、ギルドに人があふれているように見えるのは気のせいだろうか?
 はぁ、とため息を吐いたオビトはそれでも何とかギルドの中に入り、カウンターまで向かった。
 割とカウンター側は空いていて、人が併設されている酒場の方へ集中していることが分かる。

「あ、あのっ」
「へ?あ、あぁ、はいっ!こちら、冒険者ギルド、ラジエラ支部の受付です。本日のご用件は?」
「え、えっと……こ、これっ、えっと、グル、ガス?が、もっていけ、って」
「グルガスさん?グレハスの、グルガスさんですか?」

 受付の人の言葉に、一つ頷くと、かしこまりました、とにっこりと笑われた。
 確認するのに時間がかかるらしく、少しギルドの中で待っていて欲しいとの事を言われ、オビトはギルド内の現状を見て顔をしかめる。
 そんなオビトを、受付の人はあはは、と苦笑いした。

「もう少しすれば、収まると思いますので……」

 たぶん、と付け足す受付の人にもわからないのだろう。
 何が起こってるのか。とりあえず、カウンター前から移動して掲示板を見上げる。
 相変わらずわからないけれど、受けないし、支障はないだろう。

「ちっ、いい気になりやがって……」
「イケメン滅びろ……」

 強面の冒険者が、くそっ、とその中心をにらむように見ている。
 それは、僻みに違いないのだが、イケメン?と首を傾げた。
 人気の人なのだろう。これだけ人が押し寄せるのだから。
 そう言えば、冒険者ギルドの中は、あまり一般の人がいないように感じる。
 さすがに用もなくギルドの中に足を踏み入れられないのだろう。
 あまり、危ない雰囲気はしないけれど、気に食わないは気に食わないのだろう。
 オビトはそんな強面冒険者から距離を取るように、端っこの掲示板のところに来た。
 そう言えば、どんな依頼があるのかは知らないと思って一つを眺めてみる。

「……霞の迷宮?」

 この近くにも複数の迷宮があるらしい。
 その一つが、霞の迷宮と呼ばれている場所。
 その迷宮の宝箱から出てきた品物が欲しい、という研究者の依頼だ。
 霞の迷宮……?とオビトは首を傾げ、あ、と一つ声を上げた。
 霞の迷宮に近いところになら行っていた気がする。
 それは、グレハスから来る道中にあり、それなりの冒険者が中に入っていた、と思い出す。
 ただ、ギルドも街も管理していないような迷宮だったから、本当に迷宮なのか少しだけ不安にはなったけれど。
 中は、常に白く視界が奪われていた。ただ、進む方向に迷ったりはしなかった。
 あの迷宮は、近づかないと物が分からないから、宝箱を見つけるのも一苦労だろう。
 ただ、あの迷宮に一人で入ったあと、出てきたけれど、グレハスの迷宮のような主はいなかった。
 オビトの中の彼も、迷宮に入り一度だけ、つまんねぇ迷宮、と言った気がするから、完全に求めていた迷宮ではなかったのだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

平民男子と騎士団長の行く末

きわ
BL
 平民のエリオットは貴族で騎士団長でもあるジェラルドと体だけの関係を持っていた。  ある日ジェラルドの見合い話を聞き、彼のためにも離れたほうがいいと決意する。  好きだという気持ちを隠したまま。  過去の出来事から貴族などの権力者が実は嫌いなエリオットと、エリオットのことが好きすぎて表からでは分からないように手を回す隠れ執着ジェラルドのお話です。  第十一回BL大賞参加作品です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

騎士が花嫁

Kyrie
BL
めでたい結婚式。 花婿は俺。 花嫁は敵国の騎士様。 どうなる、俺? * 他サイトにも掲載。

異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~

兎森りんこ
BL
主人公のアユムは料理や家事が好きな、地味な平凡男子だ。 そんな彼が突然、半年前に異世界に転移した。 そこで出逢った美青年エイシオに助けられ、同居生活をしている。 あまりにモテすぎ、トラブルばかりで、人間不信になっていたエイシオ。 自分に自信が全く無くて、自己肯定感の低いアユム。 エイシオは優しいアユムの料理や家事に癒やされ、アユムもエイシオの包容力で癒やされる。 お互いがかけがえのない存在になっていくが……ある日、エイシオが怪我をして!? 無自覚両片思いのほっこりBL。 前半~当て馬女の出現 後半~もふもふ神を連れたおもしろ珍道中とエイシオの実家話 予想できないクスッと笑える、ほっこりBLです。 サンドイッチ、じゃがいも、トマト、コーヒーなんでもでてきますので許せる方のみお読みください。 アユム視点、エイシオ視点と、交互に視点が変わります。 完結保証! このお話は、小説家になろう様、エブリスタ様でも掲載中です。 ※表紙絵はミドリ/緑虫様(@cklEIJx82utuuqd)からのいただきものです。

【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間 ファンタジーしてます。 攻めが出てくるのは中盤から。 結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。 表紙絵 ⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101) 挿絵『0 琥』 ⇨からさね 様 X (@karasane03) 挿絵『34 森』 ⇨くすなし 様 X(@cuth_masi) ◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

処理中です...