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おまけのお話 りべんじ?
りべんじ?
しおりを挟む陵の隣に並ぶ人はどんな人がいいかなあ。
うーん、清楚でやさしい感じ??
見た目だけでもね!
服だけでもね!
と思って、検索して一番人気のお店で、トータルコーディネートしてもらった。
よくわからないけど、これでいいのかなあ?
「大変お似合いです!」
「お世辞でもうれしいです、ありがとう!」
さみしくなった財布と頭をさげた。
出勤したら、皆の見る目が変わった気がする。
私を鼻で嗤っていた人たちからは、殺人光線が発射されている気がするけど、後ちょっとだし、耐えられなくなったら逃げればいいやで気が楽だ。
「新しい人、求人かけたけど、来なくて」
「こんな時期だもんな」
「迷惑よね」
ねちねち言われるけど、スルー。
「日崎さんて、寿退社ってほんと?」
「急に変わったよね」
「こんなに可愛い人だったなんて、知らなかったなあ」
気持ち悪い視線も、スルー。
「え、ひとりでこんなに仕事してたの!?」
「うわ、めんどくさ!」
「これ、私が来月からやるとか最悪!」
「辞めないで、日崎さん!」
わあわあ叫ばれるけど、スルー。
何とかかんとか、苦痛な引き継ぎの1カ月を終えた。
長かった!!
自分の席の荷物を片付けたらお終いだ。
「今までありがとう」
お世話になった机や椅子、パソコンをそっと撫でる。
お別れしてさみしいのは、きみたちだけだよ!
ほんとにな!
最後に会釈して退社しようとしたら、引き留められた。
「日崎さんのお別れ会をしようって、皆が」
にこりと野中が笑う。
野中の後ろには、私を鼻で嗤っていた人たちが連なっていた。
「お断りします」
ふんと鼻を鳴らして会社を出ようとしたら、腕を掴まれた。
「……は?
俺と飲める機会なんて最後だよ?
まあ、日崎さんがどうしてもって言うなら考えなくもないけど……
今日の服も、凄く可愛いよね」
目を細めて笑う野中が、気持ちわるい。
……こ、これをかっこいーと思ってたのか、過去の私――!!
節穴だな!!
がっかりしながら、腕を振り払おうとした時だった。
「俺の結芽に触るな、クズ」
野中の腕を振り払ってくれた人に、目を瞠る。
「陵!」
憤激にだろう、パリリと白銀の光をまとう陵が、私を振り返って、漆黒の瞳を丸くした。
「……結芽?
めちゃくちゃ可愛かったのが、更に可愛くなってるんだけど――!」
「ほ、ほんと?
よかった!
陵の隣に、ちょっとでも並べるようになりたいなって思って。
来てくれたの、だいじょうぶなの?」
陵の頬に手をあてる。
私の掌に頬を寄せた陵は、こくりと頷いた。
「結芽と一緒なら平気だと思って。
しんどかったの、楽になった」
私の指に、指をからめた陵が、とろけて笑う。
「一緒にかえろー、結芽」
「うん!」
ぎゅうぎゅう陵の手を握って、笑う。
「はぁああア――――!?」
「何あのイケメン――!!」
「日崎さんの彼氏とか嘘でしょ――!?」
「え、ほんとに寿退社なの――!?」
「……異次元のかっこよさなんですけど……」
「……野中くんがクズに見える……!」
「ありえない――――!!」
叫ぶ人たちの声が、遠くで聞こえた。
「これから、ほんとうに働くんですよーだ!」
ふんと鼻を鳴らして、笑う。
「一緒に、がんばろーな」
私と手を繋いで、陵が笑ってくれるから。
一緒に、どこまでも行こうね。
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