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おまけのお話
告白
しおりを挟むお茶を淹れてあげたり、お菓子を運んだり、冷たくなってしまった手にハンドバスしてあげる。
隣にいるだけで、牛尾は喜んでくれるみたいだった。
離れの雪景色の庭を前にしたお膳行列には、ぽかんと口を開けて、めちゃくちゃ感動して喜んでくれた。
「……あ、あのあの……あーん、してください……」
真っ赤な頬で、めちゃくちゃ恥ずかしそうに言われたけど、その羞恥はほんとに無意味だよ!
可哀想になりながら、はいはいと頷いて、にこりと微笑んだ。
「あーん」
耳まで真っ赤な牛尾が口を開ける。
「美味しい?」
もぐもぐした牛尾は、俯いた。
「……味、わかんない」
そのどきどきも無意味なんだよ、可哀想に!
段々憐れになってきて『うぷぷぷぷ』の気持ちが消えてゆく。
「…………手、繋いでください」
赤く染まる牛尾のお願いに、やさしく手を握る。
「恋人繋ぎがいい?」
囁いたら、ぽわぽわ耳まで紅くなった牛尾が、こくりと頷いた。
指を絡めて、きゅ、と握る。
真っ赤な牛尾が、ぎゅ、と握り返す。
離れから部屋までの道を、ふたりで歩く。
つながる指が、相手のぬくもりを伝えてくれる。
ひらひら舞い降りる雪が、夜の闇を静かに照らした。
「……私、ともだち、ひとりもいないんです」
ちいさな声だった。
私は目を瞬く。
いつも誰かと一緒だったよね?
言えないから、牛尾の手を握る。
震える指で、牛尾は手を握り返した。
「……職場とか、SNSとか、話す人はいるけど、友達っていうのじゃないと思う。
皆、自分のことを褒めて認めてくれる人だけがすきでしょう。
ほんとうの私のことを思ってくれる人なんて、誰もいない。
誰かに思われたくて、お洒落して、可愛くして……でも、私はいつも、選ばれない」
牛尾の瞳から、涙が零れた。
「……職場で、身なりに全然構わない人がいたんです。
何の努力もしてないし、不愛想なのに『日崎さんに頼めば仕事が早く終わってたすかるよ』とか『めんどくさいことしてくれるの、ありがたいよね』とか言われてて、私はこんなに努力してるのに、どうしてって悔しくて……ださい服や髪形を嗤ったりしました。
皆、むかついてたみたいで、皆で見下すみたいになって。
あの人は私より下だって思ったら、私が上になったみたいで、気分がよくて。
……酷いことしてるって、解ってたけど、止められなかった」
牛尾の声は、震えてた。
「……その人、めちゃくちゃかっこいー彼氏が迎えに来て、退職しちゃいました。
寿退社って皆言ってた。
残された私は、皆からいじめられるようになりました。
男受けばっかり狙ってみっともない、化粧品と服に給料注ぎ込んでる、男漁りしてるって。
…………自分がしたことは、自分に返ってくるんですね」
あふれる牛尾の涙を見つめた私は、そっと冷たくなった頬を包んだ。
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