【完結】非モテアラサーですが、あやかしには溺愛されるようです

おまけのお話

えぇえ？

　………………うひゃあ。
　何で来るかな。

　あ、綺麗な顔面が大すきなんだから、そりゃ来るか。
　違う、私と一緒でこの人もひとりぽっちで哀しいってこと？

　私のことを皆で散々嘲笑っておいて？
　あの人たちは、あなたの友達じゃないの？

　しかも、本物の凄まじいイケメンがこんなに揃っているのに、なぜ私を指名するかな――！

　ほんのちょっと前まで、あなた、私を最低の女として嗤ってたよ？
　ちょっと髪変えて、アイライン引いて執事服着て、声低くしただけだよ？

　わかった、きみの目は節穴だな！
　知ってた！！


　引き攣る私を庇うように、陵が前に出てくれる。

「結芽も裏方でご指名を承りかねます、申し訳ございません」

　出て来てくれた陵の素晴らしいかっこよさに、ちょっと前まで同僚だった牛尾がぽーっとしてる。

　ほんの一瞬逢っただけだったから、陵のことは気づいていないみたいだ。

　私のことも気づかないんだから当たり前かもしれない。
　節穴さんだ！


　かっこよすぎる陵にうろたえたみたいな牛尾は、拗ねるみたいに唇を尖らせた。

「だ、だって、ホームページ見たんですけど、陵さんは指名できないって書いてあるけど、ゆめさんが指名できないって、書いてません！！」

　おぉう。
　突っ込み厳しい。

　絢がたすけに来ようとしてくれているのを目で制して、にこりと笑った。


「ホームページに記載していなかった此方に落ち度がございます。
　わたくしでよろしければ、おひめさまにお仕えさせて戴きます」

　にこりと微笑んだら

「きゃあ！　やった！　うれしい！」

　歓声があがった。

　……あなたの歓声、初めて聞いたよ。
　中身を知ったら悲鳴に変わるね、うひひひひ。

　ちがう、これじゃ私が悪役だ！





『あなただけの専属の執事をお選びくださいプラン』は、執事がおひめさまの我が儘をできる限り叶える、というプランだ。

　雪だるまをつくったり、村をご案内したり、一緒にご飯を食べたり、ハンドマッサージしたりというサービスがくっついてくる。
　傍にいてね、と言われたら傍にいるし、おやすみなさいも言う。

　初執事のお仕事が、私を嘲笑ってきた元同僚というのは激しく不服だけど、こんな節穴じゃないと私が指名されることなんてないので、楽しい男役体験かもしれない！　と思うとちょっぴし浮上した。


「お荷物お持ちいたします、おひめさま」

「きゃあ！」

「お部屋までご案内いたします、おひめさま」

「きゃあ！」

　私がにこりと笑って何か言うたびに歓声があがる。
　節穴具合が素晴らしいよ！

　私のことを見下して蔑んで嗤ってた人なのに、こんなに喜んでくれると、なんだかこっちが癒された。